智君BD

スパイラル ③

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おいらのドキドキなんて翔君は全然気づかないように、おいらの手を握り続ける。

ニノに見られたらどうするんだよ。

おいらは気が気じゃない。

でも、自分から離すことができない。

翔君の手はあったかくて、おいらをすっぽり包み込む。

手が気になって、どこを見ればいいのかわからなくなる。

そんな挙動不審なおいらに松潤が気づく。

おいらをじっと見てる。

テーブルの下の手……気づかれた?

「リーダー。……トイレ?」

大きな目で、行って来いよと松潤が笑う。

「え?リーダー我慢してんの?」

相葉ちゃんがうひゃひゃと笑う。

「ち、違うから。」

おいらは慌てて、翔君の手の中から自分の手を引き抜く。

あ…!と思って翔君を見ると、翔君は表情を変えることなく笑ってる。

翔君の肩越しに、ニノの顔も見える。

「大野さん、行ってくればいいのに。」

ニノもクスクス笑ってる。

「そんなことで怒ったりしないから!」

ニノがおもしろそうに唇の端を引き上げる。

ニノの笑顔になんだかゾクッとして、おいらはモジモジと下を向く。

「だ、大丈夫だよ。」

「なに?智君、一人で行けないの?一緒に行ってあげようか?」

翔君も隣で笑ってる。

「……一人で行けるわ!」

おいらがそう言うと、みんなが笑った。

「本当に行ってくれば?」

潤君がなんだか心配そうにおいらを見つめる。

「大丈夫。……携帯が気になっただけだから。」

おいらはポケットから携帯を出してごまかした。



家に帰ってくると、ソファーの上にバタンと倒れる。

うつ伏せのまま、じっと動けない。

なんでだろ?

告ってすっきりするはずが、告って余計に翔君のこと考えてる。

失恋したのに。

諦めなきゃいけないのに。

今頃二人は……。

考えると気が滅入る。

もう、このまま寝るか……。

あ、明日、何時だっけ……。

おいらは携帯を探して鞄を覗く……?

ない?

鞄をひっくり返して中身を床にばら撒く。

財布…手帳………。

ない。携帯がない。

忘れてきたんだ。

あ~、いつ出したっけ……。

楽屋に入った時……はニノがゲームしてて、おいらもゲームしようと思って……

みんなが来たんだよな。

出す時間がなかった……。

収録中は鞄の中……。

ピンポーン。

おいらはビクッとして振り返る。

インターフォンが光って誰かが写ってる。

こんな時間に?

マネージャーが携帯持ってきてくれた?

おいらは急いでインターフォンを覗き込む。

でもそこに映っていたのは、マネージャーじゃなくて翔君だった。

え?ニノのとこに行ったんじゃなかったの?

おいらは恐る恐るボタンを押す。

「……しょ……くん?」

「あ、ごめん……寝てた?携帯忘れて行ったでしょ?

 困るかなと思って……。」

おいらはゴクリと唾を飲む。

おいらの家の前に翔君がいる……。

「うん……ありがと……。今、探してたとこ……。」

おいらの声が小さくなる。

動揺してるのを、翔君に気づかれたくなかった。

優しい翔君は、きっと、自分のせいだと思って苦しむ。

おいらが勝手に好きになっただけなのに。

「……待ってて。すぐ行くから。」

おいらはそう言って、エントランスに向った。



エントランスに行くと、翔君は壁に背中を預け、肩をすぼめて立っていた。

おいらが近づいていくと、オートロックのドアが開く。

翔君はすばやく中に入ってくる。

ドアの中の方が少しは暖かいかな?

秋も深まり、今日はやけに寒かった。

夜になって、寒さはいっそう深まっている。

「ごめん。開けてあげればよかったね。」

開けたら、家にあげてしまいそうで怖かったんだ。

ごめんね。

「いや、大丈夫。……これ。」

翔君がポケットから携帯を取り出した。

おいらの携帯だった。

「ありがと。……わざわざ、ごめんね。今日、用事があったんじゃない?

 マネージャーに預けてくれてもよかったのに。」

「うん……でも、すぐに必要かなと思って……。こんな時間に悪かったね。」

あ、おいら言い方が悪かった?

そうじゃない。翔君が悪いんじゃないのに。

「ち、違うから。そういう意味じゃなくて……。翔君、忙しそうだから……。」

ニノと一緒の時間、おいらのせいでつぶしちゃったんでしょ?

「はは。大丈夫だよ。もう家に帰るだけだから。」

翔君があの笑顔で笑う。

おいらの大好きなあの笑顔。

優しい翔君はおいらに気を使って、ニノのことを隠してる。

「クッシュン!」

翔君が両手で顔を覆う。

「大丈夫?風邪?」

「いや、大丈夫、大丈夫。」

翔君は鼻をすすりながら、おいらのことを手の平で制す。

その手を下ろす時、おいらの手に微かに触れる。

とっても冷たい手……。

おいらの手で暖めてあげたいけど、それはできない……。

「……コーヒー、飲んでく?インスタントだけど。」

「え……いいの?」

翔君は困ったような、喜んでるような、複雑な顔でおいらを見つめる。

おいらのことを心配してる?

あの後、まともに話してないから……。

でも、振られちゃったおいらの家になんて、来づらいよね……。

「いや、もう遅いから、やっぱり帰った方がいい。」

おいらが翔君に背を向けると、

「一杯だけ、飲ませてもらってもいいかな?少し、暖まりたい……ダメ?」

振り返ると、翔君が、子犬がおやつを強請るような目でおいらを見てた。

思わず笑みが漏れる。

優しい翔君はどこまでもおいらに気を使ってくれる。










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