ナイスな心意気(5人)

ナイスな心意気 ②

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秋の陽射しが暖かい。

窓辺でうつらうつらしていると、サトシが俺の腕の中に入ってくる。

ここは、サトシのお気に入り。

小さな背中を丸くして、俺の腕の間に頭をねじ込む。

俺が腕をちょっと浮かしてあげると、クルッと回って、

俺の腕を枕のようにして丸くなる。

俺はつぶさないように気をつけながら、サトシの頭に頭を近づける。

ペロッと一舐めして、サトシの背中に鼻先を当てて、目を閉じる。

午後の穏やかなひと時。

「ショウ!暴れちゃダメだろ!」

突然、マサキの声がする。

ビックリして、首を伸ばし、マサキの姿を探す。

でも、マサキの姿どころか、匂いもしない。

部屋をグルッと見回すと、俺らを見て、笑ってるヤツと目が合った。

「ショウ!ショウ!ダメじゃないか!サトシを食べちゃダメだよ~!」

本棚の前の辺りで、天井から吊るされた大きなアーチ型の籠の中で、

おもしろそうにしゃべり続けるオウム。

頭と羽は青く、体は黄色と、自然界の恐ろしさを感じる配色で、

首をクイックイッと動かして、笑いながらしゃべっている。

「うるさいよ!おしゃべりカズナリ!」

「うるさいよ!うるさいよ!」

今度は俺の声色でしゃべり始める。

あ、でも、人間には「ワン、ワン」と

オウムが犬の鳴き声を真似てるようにしか聞こえないらしい。

「サトシが寝てるんだから、静かにしてやれよ。」

「クックック。サトシにいっつも邪険にされてるくせに。」

カズナリは笑いながら羽をバタバタさせる。

「本当にお前はうるさいねぇ。」

俺が低く唸る。

「あ~、怖い怖い!」

籠の中でバサバサと羽を広げて飛び上がる。

「だから!サトシが起きるから!」

サトシがヒョイっと頭を上げる。

「あ…。」

俺がサトシの頭に鼻先を押し当てて、寝るように促す。

サトシは半分目を開けたものの、また俺の腕に頭をもたげて眠りにつく。

可愛い~。

「眉毛、下がってるよ~!デレてる!デレてる!」

またカズナリが笑いだす。

「可愛いんだから、仕方ないだろ?」

俺はサトシの匂いを嗅いで、ホワンとする。

この匂いがたまらない。

俺をフワフワにさせる匂い。

「私は?私は可愛い?」

カズナリがウィンクしてみせる。

「お前は全然可愛くないよ。」

「ひどいよ~!ショウちゃんひどい!」

またケラケラと笑いだす。

「ほんと、いっつも楽しそうだよね。悩みとかないの?」

カズナリが小首を傾げる。

「ショウちゃんがおもしろいから~。そうね、毎日楽しませてくれてるね?

 ありがたや、ありがたや!」

首を奇妙な動きで上下に動かす。

どうやったらあんな動きができるんだ?

若干、気持ち悪い。

「私にだって、悩みくらいありますから!」

俺はびっくりして顔をあげる。

カズナリに悩みだって?

あの小さな頭の脳みそで、いったい何を悩むんだ?

「悩みって、何?」

「この籠からどうやったら出られるかとか……。」

それは人生に対する悩みだね。

うん。難しい。

でも、マサキはよくカズナリを籠から逃がしてる。

マサキ、素直だからすぐカズナリに騙されちゃう。

カズナリはいつだって悪賢い。

「それと……。恋の悩み……。」

「はぁ?恋?」

今は繁殖期じゃなかったよな?

それともオウムは今が繁殖期?

「そう、私はショウちゃんに恋してる。」

俺は驚きのあまり、動きが止まる。

それと同時にサトシの頭がムクッと起き上がる。

「私はショウちゃんが好き~♪」

サトシが俺の腕の間から飛び出すと、ソファーの背もたれを台にして、

カズナリ目掛けて飛び掛った。

ガシャ~ン。

鳥かごが揺れ、中でカズナリがバタバタと飛び回っている。

「うるさくて眠れやしない。」

「怒んなよ。ちょっとふざけただけじゃん。」

カズナリはそれでもケラケラ笑ってる。

サトシはまた、俺の腕の間にもぞもぞと入ってくると、

今度は胸の毛の中に、体を埋める。

「サトシのヤキモチ焼き!ヤキモチ焼き!」

サトシがその鋭い視線をカズナリに向ける。

俺はサトシの小さな耳を甘噛みして、鼻先でサトシの顔を自分の方に向ける。

「ヤキモチ焼いたの?」

優しく問いかけると、サトシは視線を外して、ツンと鼻を上に向ける。

知らず知らずの内に、尻尾が千切れそうなほどに振れる。

俺はサトシの顔をペロッと舐める。

サトシは小さくくしゃみをして、前足で顔を洗うと、

小さな舌で俺の鼻先を舐めた。

「カズナリも、籠から出られなくてかわいそうなんだよ。

 だから、あんな心にも無いこと言っちゃうんだ。

 サトシがヤキモチ…焼くことないよ。」

「ヤキモチなんて焼いてないし!」

サトシが喉を鳴らして威嚇する。

バタバタと羽の音が響いたかと思うと、俺の背中にチクリと痛みが走る。

痛みの方へ顔を向けると、カズナリが俺の背中に止まっていた。

「お前……。」

また、カズナリがケラケラと笑いだす。

「籠なんて、どうとでもなりますよ。」

カズナリは俺の背中の上で、片方の羽を広げると、くちばしで羽を整え始める。

サトシは俺の腕をすり抜けて、背中に飛び乗る。

「カズ、どけよ。ここはおいらの場所だぞ!」

「誰が決めたんですか?」

「おいらの匂いがついてるだろ?どけよ!」

サトシが背中を丸めて、尻尾を立てる。

「私もショウちゃんが大好きなんです~!」

カズナリがケラケラ笑うと、サトシが飛び掛った。

2匹は体の大きさも同じくらいで、いい勝負。

俺の背中の上から落ちると、リビング中を飛び回り、駆け回る。

サトシが羽をひっかくと、カズナリの羽が飛び散り、

カズナリがサトシの頭をつつくと、サトシは後ろに飛びのいた。

リビングを所狭しと動き回る。

俺はどうしたもんかと、2匹を見守る。

あ、正しくは1匹と1羽だね。

なかなか決着が付かず、2匹がはぁはぁと息をついた時、

玄関からガチャガチャと音がする。

マサキだと思って立ち上がり、玄関にお迎えに行く。

マサキはニコニコしながら靴を脱いでいる。

「いい子にしてたか?」

俺の頭を撫でながらリビングに入っていくと、マサキはじっと俺を見た。

「ショウ!暴れちゃダメだろ!」

見ると、散々な惨状の中、カズナリは籠の中で、寝た振りをし、

サトシもソファーの上で寝た振りをしている。

「違うよ、俺じゃないってば!」

俺が抗議の声を上げても、マサキは全く聞いてくれない。

「何度言ったらわかるんだよ。」

マサキは怒りながら、部屋を片付け始める。

俺じゃないのに~。

でも、俺はわかってる。

どんなに抗議しても、マサキには通じないって。

でも、言わせてくれ!

全部、こいつらのせいだからな~!

俺が吼えると、カズナリが目を開け、

「ショウ!暴れちゃダメ!暴れちゃダメ!」

と喚いた。

「ほら、カズナリが覚えちゃったじゃない。」

俺は肩を落として、片付けを手伝った。

最初っから撫で肩なわけじゃない。

こいつらのせいだからね!








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