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Your Eyes(やま)

Eyes with delight ⑫

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商談ルームに入ると、小瀧君が立ち上がって頭を下げる。

「すみませんでした!先日は大変失礼なことを致しまして!」

綺麗に直角に体を折る小瀧君に溜め息をつく。

「大丈夫。気にしてないから。」

小瀧君の肩を起こし、正面に見据えると……。

首に巻かれた白いプラスチック!

「小瀧君……。」

まさか、本当にむち打ち!?

「あ、いえ、これは俺が悪いんで……気にしないでください。」

そう言われたって気にするよ。

「すまない。手加減できなくて。」

「貞操の危機だったんですから、仕方ありません。」

貞操って、おおげさな!

……おいらもそう思ったか。

「本当に失礼しました。

 ……飲んでる大野さん、綺麗で可愛くて、カッコ良くて……。

 ふにゃっと笑った顔とか、グラスを持つ手の色っぽさとか。

 つい、ついムラムラ~っと……。」

小瀧君がへら~っと笑う。

「小瀧君!」

「はっ!すみませんでした!」

また90度に頭を下げる。

首が固定されてるから、しっかり上半身が平!

「いいから頭を上げて。もうああいうことをしてはいけないよ。」

「肝に銘じております。……櫻井にも怒られました。」

「櫻井君?」

「はい……まだ口きいてもらえてません。」

ははは。櫻井君。

でも、朝はちょっとよくなってたんじゃないか?

あれだけおいらの気持ちを刷り込んだんだ。

櫻井君の機嫌だって……。

「今日は大丈夫だろ。俺が許したって伝えればしゃべってもらえるよ。」

「そうだといいんですが……。」

櫻井君相当怒ったんだな。

小瀧君の顔がまだ切なそうだ。

まぁ、自分でしでかしたことだ。

後は自分でなんとかするんだな。

「櫻井君より、問題は伊野尾だ。

 伊野尾にまで話すのはどうなのかな?」

チクリと釘を刺す。

これから何かある度、伊野尾に報告されたのではかなわん。

「それは……。あの後、タクシーの中でハッと気づいて、

 すぐに大野さんに謝りたかったんですが、連絡先知らなくて……。

 伊野尾先輩なら知ってるかと思ったんです。」

伊野尾に連絡先教えたら、どうなることか。

毎日何十通とメールが来そうだ。

「で、櫻井君に?」

「はい。でも怒られた挙句、連絡先も教えてもらえなくて……。」

そりゃそうだろう。

「プライベートの連絡先を、そう簡単に教えるわけにいかないだろう。」

仕事のトラブルならいざ知らず、プライベートの失態だもんなぁ。

「日曜日は一日中、そのこと考えてました。」

そうだよな。

取引先の課長だ

仕事に直結する。

「本当に申し訳ありませんでした!」

また小瀧君が頭を下げる。

そんなに頭下げて大丈夫なのか?首は!

「いいから、もう頭を下げるのは止めて。

 本当に気にしてないから。」

小瀧君の肩を起こすと、小瀧君じっとおいらを見る。

「本当ですか……?」

「本当だ。全然気にしてないよ。むしろ謝られる方が気にする。」

小瀧君の顔が、やっと少し和らぐ。

「今日はそれだけなんだろ?さっさと帰って仕事に戻った方がいい。

 ウチから出してる依頼、割と短納期だろ?」

「はい。できるだけ迅速に頑張ります!」

小瀧君が鞄を持って、一礼する。

「さっそく取り掛からせて頂きます!」

「そうしてくれ。その方が嬉しい。」

また一礼して小瀧君が駆けるように去って行く。

ふぅ。

若さゆえとは言え、もう酒に酔うなよ。

酒は飲んでも飲まれるな。

……おいらは櫻井君に惚れて、惚れまくってるけどな。

エレベーターホールでエレベーターを待っていると、肩を叩かれ振り返る。

「よ。」

「坂本部長。」

ちょうど来たエレベーターに一緒に乗り込む。

「大変だったんだって?」

まさか、もう知ってる!?

「もてる男はつらいなぁ。」

坂本部長が楽しそうにおいらの肩を叩く。

長野部長経由?

小瀧君、どこまでしゃべってるんだ!

「あんな可愛い恋人を持って、どうしてそういうことになるのかねぇ。」

「俺のせいじゃないんですよ。」

「いいや、お前のせいだ!お前に隙があるのが悪い!」

「隙って……。」

「どうだった?小瀧君の味は?少しは味わったんだろ?」

味わうって!

「味わってません。少しも。」

「少しも?」

坂本部長がおおげさに驚いてみせる。

「はい。キスされる寸前で張り手しました。」

「張り手!」

坂本部長が声を上げて笑う。

「ははは、それは小瀧君も応えただろ?」

応えすぎて、むち打ちの首、何度も下げてました!

「未遂だからっていいわけじゃない。」

「わかってます。」

「ま、イケメンばかり揃えるJ社も悪いんだが……。」

ピンと目的地に辿り着いた音がして、坂本部長が降りる。

「今度飲みに行こう。お前の武勇伝まだ聞いてない。」

「武勇伝なんかないですよ。」

「あるだろ、すごい武勇伝が。櫻井君をどう攻略したのか!」

坂本部長が笑いながら去って行く。

エレベーターのドアが閉まる。

武勇伝なんかない。

気付いたら好きになってて、止められなくて。

あの目だよな。

あの瞳に見つめられ、取り込まれて……。

目が離せなくなって、櫻井君なしではいられなくなって。

どちらかと言うと櫻井君の武勇伝じゃないか?

笑ってデスクに戻ると、伊野尾が待ってましたとばかりに寄って来た。

「大野さ~んっ!」

「仕事に戻れっ!」

「え~~っ!」










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