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白が舞う

白が舞う 二十話

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電車を乗り換え、五つ先の駅で降りる。

「ここでいいの?」

「たぶん……。」

名前しか聞いたことない都心の駅。

高級住宅街だってことしか知らない。

「ここに、その元締めの……家がある?」

櫻井君は軽く首を振る。

「違うよ。今日は現場へ直行。」

現場って……つまり、妖怪とか……そういうのがいるところ……?

「なんでも地方で大きな捕物があるらしくって、二宮さんはそっちに出向いてるんだって。

 後で助っ人送るって言ってたけど……。」

地方……祓い屋は地方出張もあり?

じゃ、その二宮さんには会えないのか……。

え?まてよ?

ってことは……俺と櫻井君で祓うの!?

俺、デビューしたてなんですけど?

しかも、偶然!

どうやったのかもよくわからない!

てか、祓ったの、狐だし!

「あ、大野君、僕たちで祓うとか思った?」

思った思った!

うんうんと大きくうなずく。

でも、できればやりたくないと目で訴えてみる。

「大丈夫だよ。今日は手慣らし。結界を張って見張るだけでいいって。」

「結界?」

「そう、妖が逃げないよう、他の妖や人間が入り込まないように目に見えない幕を張る。」

櫻井君が駅前のバス通りを歩きながら説明してくれる。

そんなことできるんだ~。

目に見えないんじゃ、張ってあるかどうかわかんなくない?

すり抜けられそうな気がするのは素人だから?

「今まではね、一人で祓うのが主流だったんだけど、

 二宮家が今の当主になってから、チームで祓うことが多くなってるんだ。

 祓い屋は危険が伴う。なのに、妖相手だから、

 どんなに危険でも警察や自衛隊が出動してくれることはないじゃない?」

そりゃそうだ。

いるかどうかわからないような相手……信じてくれるわけない!

「出動してくれても、役に立つかわかんないけど。」

櫻井君が、おかしそうに笑う。

「だからね、僕たちが結界を張ってる間に、ベテランの祓い屋が祓う。

 今回は僕たちともう一組。」

一組?

じゃ、そっちも二人組?

「ああ、組みって言っても人と式のことだよ。

 祓い屋同士で組んでる人は……いないんじゃないかな?

 だから、二宮さんみたいな人が司令塔になって、その時々でチームを組んでる。」

櫻井君は、スッと空を見上げる。

「ああ、ちょっと気を感じるね……。」

気……?

俺には全然……と思ったら、ちょっと不思議な匂いがしてきた。

なんて言うんだろ、据えた匂いって言うか、焦げた匂いって言うか。

すっごい微かだけど。

昔……こんな匂いを嗅いだことがあったような……?

いつだったっけ……。

俺が思い出そうとおでこを叩いていると、櫻井君がスマホを開いて場所を確認する。

「あそこだね。……どうしたの?」

俺を見て不思議そうな櫻井君。

「いや、なんでもない。」

慌てておでこから手を離す。

櫻井君が首を傾げながら、視線を道の先へと戻す。

櫻井君の目の先には、古い大きな日本家屋。

と言っても、この辺は大きな家ばっかりで……。

さすがセレブの街!

その家の角まで小走りで行き、奥行きを確認する櫻井君。

走る姿もさわやか。

イケメンは何しても絵になる!

運送神経も良さそうだよな。

イケメンはなんでもできるのか!?

ちょっとムカつく!

神様の意地悪!

俺にももうちょっと何かくれよっ!

「これくらいなら、中に入らなくてもいいかな。」

ニコッと笑う櫻井君に、俺も駆け寄る。

「連絡しなくていいの?」

「今、マサキを行かせた。行かなくても気付いてると思うけど。」

いつの間に!

さすが、頭の良い人は仕事も早い!

「相手がどれくらいの妖かわからないから、一応用心しておいて。

 出てくることはないと思うけど……。」

櫻井君が、角に立ったまま、家の中に体を向ける。

櫻井君の身長より高い生垣と、塀に囲まれた家。

視線が塀を通り抜けそうなほど鋭い!

まさか、透視までできるのか!?

「櫻井君……中、見えたりするの?」

櫻井君がクスッと笑う。

「まさか。気を集中させて、妖や中で妖と対峙してる人の気の大きさを感じてるだけだよ。

 どんな敵なのか……知っておいた方がいいでしょ?」

そうだけど……本当にここに妖なんて……いるの?

生垣の隙間から見える和風な庭には、灯篭や、池……?

みたいのが見える。

手入れされてそうな樹々。

掃除も……大変そう!

俺も櫻井君を真似て中に集中してみる。

集中しても……もちろん何も見えるわけない!

でも、さっきより据えた匂いは強くなってる……。

これ、何か関係ある?

櫻井君に聞こうと思ったら、ボンッと、俺と櫻井君の間にマサキが現れた。

びっくりするから、突然現れるのは止めてよ!

「始まってる?」

櫻井君は全く驚かず、家の中に視線を向けながらマサキに聞く。

「もうちょっと。引き出してるとこだった。」

マサキは楽しそうに目を輝かせて話す。

「強そう?」

「そうでもないよ。オレの半分くらいかな?」

マサキが偉そうに顎を上げる。

「何だった?」

「蛇帯(じゃたい)っぽいかな、まだわかんないけど。」

「へぇ、珍しいね。」

「じゃたい……?」

聞いたことないぞ?

それも妖……?

櫻井君が、俺に気を使って、説明してくれる。

「蛇帯は帯が人の念で蛇になった妖。

 念が強ければ強いほど大きな力を持つんだけど、今回はそんなに大きくはなさそう。」

大きくないと聞いてホッとする。

でも……どんどん匂いが強くなってないか?

「じゃ、そろそろ結界を張らなきゃね。」

櫻井君が、両手で不思議な形を作って、何かブツブツ呟きだした。

これで、結界が張れるの?

なんか……映画みたい!










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