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白が舞う

白が舞う 十九話

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放課後。

俺は今、櫻井君と一緒に電車に乗っている。

「どこ行くの?」

「ん……次で乗り換えかな?」

スマホで路線図を確認する櫻井君。

そのスマホを覗き込みながら、櫻井君の表情を窺う。

どこに、何しに行くのか、まだ聞いてない。

窓の外はどんどん高い建物が増えていく。

緑が減り、灰色の壁と色鮮やかな看板……。

都心に向かってるのは間違いないんだけど……。

「どこに行くのか、教えてくれないんだ?」

「そういうわけじゃないよ。僕がこの辺、不案内だからよくわかんないんだよ。」

櫻井君が困った顔で笑う。

まだ、昨日のことを誤ってない。

タイミングが……難しいんだよ!

なんて言えばいいかわかんないし、人がいる所で言うのもなんだし……。

しかも、でっかいお邪魔虫もついて来てるし!

「すっげ!あんな高いの見たことない!ね、翔、あれ、何?」

窓に引っ付いて、櫻井君のブレザーを引っ張る子鬼のマサキ。

「静かにできないなら、家に帰すよ?」

櫻井君が小声でマサキに囁く。

「ちょっとぐらいいいじゃん!オレ、こっち来てから、外出たの初めてだし!」

じゃ、昨日は家にいた?

全部……見られてた?

カッと耳が熱くなる。

キスシーン見られただけだって恥ずかしいのに、まして相手は男!

それも、目いっぱいその気になってた俺!

子供とは言え……あんなとこ見られてたと思うと……。

「そう思って連れて来てあげたんだから、静かにできないなら強制送還。」

「違うじゃん。オレが昨日のことしゃべんないよう口止めじゃん!」

あ、ばかっと櫻井君が慌ててマサキの口を塞ぐ。

やっぱり見られてたんだ……。

熱いのが、耳だけじゃなく、顔中になる。

「帰るか姿消すか、どっちかにしろ。」

櫻井君がドスの利いた声で凄む。

俺と櫻井君の顔を見比べたマサキが、仕方なさそうに姿を消す。

「え……突然消えて、大丈夫!?」

キョロキョロと車内を見まわしてみるけど……気付いてる人はいなさそう?

「大丈夫。見えてるの僕たちしかいないから。」

櫻井君が涼し気に笑う。

「姿消して……どこにいるかわからなくなったりしない?」

「大丈夫。いつでも僕の声は聞こえるから……。」

「声……?」

「式は、遠くにいても僕の言葉を聞いてる。」

櫻井君が自分の肩の辺りに目をやると、親指大になったマサキが、ぼぉっと一瞬姿を現す。

すぐに消えて見えなくなったけど、親指大のマサキはえらく可愛い。

「マサキはまだ子供だから、あまり遠くには行かないしね。」

黄緑の浴衣を着た、妖精みたい。

昔絵本で読んだような。

櫻井君が視線を俺に戻す。

「ごめんね、今日は諸々の事情があって、マサキも一緒に連れて行かなきゃいけなくて。」

諸々の事情の一つが昨日の……口止めってことだよな。

「き、昨日は……ごめん。」

思い切って言ってみる。

お邪魔虫のいなくなった今しかない!

これからどこに行くかもわかんないし!

照れたような困ったような櫻井君が、顔の目で手を振る。

「え、あ、大丈夫だよ。昨日は……その、僕もちょっとおかしかったって言うか……。」

俺のが相当おかしかったって!

「突然、我に返った?」

聞かれて、ゆっくり首を振る。

「狐が……。」

「狐?」

訝しそうに眉をしかめる櫻井君。

「俺の中の狐が……変なこと言うから……。」

「変なこと?」

その気になってるとこに図星刺されたなんて……言えるわけない!

本人目の前にして!

「いや、ま……その……、は、恥ずかしくなった?……単純に。」

「恥ずかしい……確かに。」

櫻井君が、ちょっとふざけた調子で笑う。

「そりゃ恥ずかしいよね?僕も後で思い出して恥ずかしくなった。」

思い出したら……恥ずかしくないわけない!

「だろ!」

俺と同じだと思うとホッとする。

んふふ、と俺から笑い声が漏れると、櫻井君が安心したように笑う。

「よかった。せっかく友達になれたのに、嫌われちゃったかと思って、心配だった。」

その心配は俺の方!

「そんな心配いらないから!」

「朝もどんな顔して会えばいいか悩んだし。」

え?櫻井君も……?

「やり過ぎだったよな、会ってまだ間がないし。

 謝った方がいいかな、でも謝るのはちょっと違うし……などなど。」

櫻井君が、ふふふっと笑う。

「そんなこと考えながら顔作るの大変だった!」

とてもそんな風には見えなかったぞ?

いつもと変わらぬ櫻井君で、

昨日のことなんて、櫻井君にとって大したことないのかと思った!

「だから、今日一緒に行ってくれるって聞いて、ホッとした。」

「俺も!誘われてホッとした!」

二人で顔を見合わせて笑い合う。

よかった。

なんとか仲直りできた!

「で、今日は何しに行くの?」

「今日はね……あ、ここで降りるよ。」

電車が止まり、ドアが開くと櫻井君が俺の肘を引っ張る。

「乗り換え。ちょっと急ごう。」

引っ張られた腕がくすぐったくて、もぞもぞする。

朝の満員電車ほどじゃないけど、そこそこ込んだホーム。

人を避けながら、櫻井君と一緒に階段を上る。

「今日行くのはね、ちょっと頼まれ事してて。」

「頼まれ事?」

急いで階段を上るサラリーマンに肩を押され、櫻井君にぶつかる。

俺を両手で支えながら、櫻井君がニコッと笑う。

「祓い屋協会の元締めって言うか、僕をこっちに呼んだ人に呼び出されてね。」

「呼び出された……?」

祓い屋協会って言ったら……もちろんそっち系の話?

「昨日、大野君も祓い屋の仲間入りしたから……後学の為にね。」

櫻井君のさわやかな笑顔が、意味深に見えたのは……気のせい?










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