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「五里霧中」
五里霧中(5人)

五里霧中 ショウ - 美奈子と - 上

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「ね、何考えてるの?」

「何って……。」

突然、足を止めた俺を、不審そうに美奈子が見つめる。

何を考えてるかって?

俺が考えてたのは……。

俺は空を見上げる。

風が頬を撫で、前髪が額をくすぐる。

やっぱり俺は……。



美奈子は取引先の受付嬢。一つ下。

いつも下してる髪を上げた時、見えたうなじがサトシに似てた。

それだけで付き合ってる俺も俺だけど……。

「デートの時くらい、私のこと、考えてくれてもいいんじゃない?」

美奈子がわざとふくれっ面を作って見せる。

「ごめん、仕事のこと考えてた。」

付き合い始めはその程度だった俺だけど、

付き合う内に、結婚するならこんな子かなって思い始めていた。

俺が付き合ってきた女達とはちょっと違う。

恥じらい方がサトシと似てた。

見た目はオシャレなイマドキの子なのに。

初めてセックスした時も、なかなか脱がない美奈子に痺れを切らせて俺が脱がせた。

胸のボタンを外す手を見て、赤くなるその顔が可愛く見えて、

ちょっとサトシと重なった。

もちろん、美奈子にも言ったよ。

「俺は誰も好きにならない。それでもいいなら付き合ってもいいよ。」

って。

「それで、櫻井さん寂しくないの?」

「寂しくなんかないよ。」

俺が笑って答えると、美奈子は不思議そうに首を傾げ、ニコッと笑う。

「告白したのは私だもの。櫻井さんがいいって言うなら、よろしくお願いします。」

頭を下げる美奈子に面食らった。

今までの女は、自尊心丸出しの顔で笑うやつが多かった。

頭の中で計算してるのがよくわかる。

好きじゃないと言われて、ムッとしてはみても、それじゃと断ったら、

自分がフラれたことになる。

それはプライドが許さない。

好きにならないと言ったって、今は、の話。

付き合ってれば自分のことを好きになるに違いない。

主導権を男に渡したことのない女たちは、皆そう考える。

ああ、メンタルの部分ね。

行動は男にお任せ。

デートのプラン、費用、その他もろもろ。

好きと言われたことはあっても、断られたことのない女たち。

でも、美奈子は違っていた。

デートの費用は交互。

俺がランチを出せば、次は美奈子が出すと言う。

自慢じゃないが、女に金を出させたことはない。

そう、しょっちゅうデートするわけじゃないし。

まして年下!

最初は出すよと言っていた女たちも、その内、俺が出すのが当たり前になってくる。

食事代もホテル代も。

でも美奈子は本当に財布を出すから焦る。

どんなに断っても頑として譲らない。

仕方なく、ソフトクリームを食べたりする。

次は次だから。

おかげで流行ってるカフェも覚えた。

柄にもないよね。

でも、サトシを何度か誘うきっかけにもなった。

サトシは甘い物が好きだから。

そんな風だったから、美奈子はすぐにサトシの存在に気付いた。

「櫻井さん、好きな人がいるんでしょ?」

「好きな人?」

ドキッとした。

俺に女の影はないはず。

なのに、どうしてそう思う?

「うん。だって、時々すっごく優しい顔する。」

美奈子が、ふふっと笑う。

「誰かを……思い出してるのかなって。」

そう言ったのは付き合い始めて一ヶ月くらい経った頃。

目の前の美奈子は、ナタデココの入ったデザートをスプーンに掬う。

口に入れると、淡いピンクの唇が、キュッとつぼむ。

ああ、思い出してるよ。

今だって。

サトシはナタデココ好きかな、とか、食べたらどんな顔するかな、とか。

ナタデココを食べてるサトシを想像する。

んふふっと笑いながら、嬉しそうに頬張るサトシ。

「ショウ君、食感がすごいよ!プニッとしてる!

 ショウ君も食べて食べて。」

俺に勧めるサトシが、自分のスプーンにナタデココを乗せて、俺に差し出す。

俺もそれをパクッと食べて笑い合う。

仄かな甘みと食感が、サトシの笑顔と一緒に飲み込まれる関節キス。

「ほら、また優しい顔してる。」

美奈子は嫌がる風でもなく、クスッと笑う。

「え、そうだった?」

「うん、優しい顔。そんな顔見たら、好きな人いるんだろうなって、すぐわかっちゃうよ。」

美奈子はクスクス笑う。

「その人に告白しないの?」

俺はこの話題を避けたくて、横を向き、通りを眺める。

人通りは少ない。

楽しそうな若いカップルがのろのろ歩くのを、スーツ姿の男が追い抜く。

その後ろを歩くおじさんは、疲れてるのか、歩くのも億劫そう。

歩幅もスピードも違う人々。

俺とサトシのスピードはあまり変わらない。

サトシが合わせてくれてるのか、俺が無意識に合わせてるのか。

「告白すればいいのに。そんな顔するくらい好きなら。」

美奈子はまたナタデココを口に運ぶ。

ふと気になって視線を美奈子に戻す。

美奈子はいいのか?

付き合ってる相手が、他の誰かを好きなやつでも。

「……いいの?」

聞いてみたいと思った。

その心理状況。

「何が?」

「俺が他の誰かに告白しても。」

美奈子は笑って、スプーンでナタデココを掻きまわす。

「人の気持ちは押さえつけられないじゃない?

 どんなに私を好きになってって言ったって、

 言われたからって好きになりはしないでしょ?

 私もそう。櫻井さんを嫌いになってって言われても嫌いになんかなれないもん。」

美奈子がナタデココを掬う。










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