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「短編」
短編(いろいろ)

サヨナラのあとで ⑤

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「俺のこと……好きだった?」

そんなこと聞くなよ。

「今でも愛してる?」

聞かれたって答えられない。

「愛してるよね?」

愛してなんかない……。

「愛してるくせに。」

違うっ!

危うく叫びそうになった時、櫻井の後ろを車が通り過ぎる。

「愛してなんか……ない。」

「うそ。」

「嘘じゃない。」

「うそ。」

「嘘じゃない。また体なら……相手してやろうか?」

櫻井は何も言わない。

言わずに、ただ俺の顔を見つめてる。

「じゃ、どうしてそんな顔してるの?」

そんな……?

俺はどんな顔してる……?

「俺のこと、好きなんだよね?」

俺は黙って首を振る。

「俺と……一緒にいたいんだよね?」

「俺が好きなのは……櫻井の体だけだ。」

「なら、こっち見てよ。」

気付けば俺は項垂れて、足元のコンクリートを見つめてて……。

「離せっ。」

俺は無理やり櫻井から離れようとする。

でも、櫻井は俺を離してくれない。

逆に抱きすくめられ、身動き取れないまま、顔を上げることもできない。

「俺は一緒にいたい!大野と……ずっと……。」

「櫻井……。」

嬉しくて……胸が壊れそうになる。

でも、櫻井の人生を背負うのは、俺には荷が重すぎる。

櫻井の未来は……輝いてる。

俺のせいでその輝きを、曇らせることはできない。

俺は首を振り続ける。

「こっち見て!」

櫻井に顎を掬われ、無理やり顔を向けさせられる。

櫻井の顔が歪んでいく。

小刻みに首を振り、俺の頬を櫻井の手が包む。

「そんな顔するくらいなら……言えよ。今でも好きって。」

「好きじゃ……。」

「言えよ。大野の人生くらい、俺が面倒みてやるから。」

「な、何言って……。」

びっくりした。

俺が背負おうと思ってたのに、俺が背負われる?

「この3年、苦しかったよ。苦しくて苦しくて耐えられないと思った。

 大野がいないことがこんなに苦しいなんて……思いもしなかった。

 でも、今、大野は目の前にいる。俺の前に、今!こうして!」

櫻井が俺を抱き締める。

「絶対離さない。何があっても。例え……大野が俺を好きだと言わなくても……。」

「櫻井……。」

嬉しくて、でもこんな櫻井を離さなくちゃいけないことが苦しくて……。

「離…せ……。」

「嫌だ。」

「離せ……。」

「嫌だ!」

「俺は……ただの遊び……。」

言わなければ……苦しかった3年が無駄になる。

「遊び……?」

「……そうだ。遊びだ……。」

顔を見ぬままつぶやくように言う。

「だったら!」

櫻井が体を離し、俺の両肩を掴む。

「だったらさっきのキスは何!?」

櫻井が両手で俺の体を揺する。

「あんなキスされて……離せるわけないでしょ!」

「…………。」

「あなたが俺を好きだって……気づかないわけないでしょ!!」

堪えていた想いが込み上げて来る。

決して櫻井に知られちゃいけない、知らせちゃいけない想いが……。

込み上げて……溢れ出る。

「好きだから!」

俺は櫻井の両肘を叩く。

「好きだから……別れようと思ったんだよ……。」

「大野……。」

「好きだから……俺が側にいちゃいけないって……。」

溢れた想いが止まらない……。

もう、止めようがない。

「好きだから……大好きだから!お前の隣は俺じゃないって……。」

「なんで……。」

戸惑う櫻井の腕を両手で押す。

「わかんないのかよっ!」

「わかんねぇよ!」

「わかれよっ!」

櫻井の腕をバンバン叩く。

どうしてわかんないんだよ。

わかってくれよ……。

これ以上、俺に何も言わすな……。

「わかるのは……大野が俺を好きだってことだけだよ。」

「櫻井……。」

「それじゃ、ダメなの?それだけじゃ……ダメ?」

少しずつ顔を上げる。

櫻井の声が優しくて。

徐々に見えて来る櫻井の顔が……優しくて。

「俺はそれだけで十分だよ。大野が俺のこと好きって……それだけで十分。

 それがわかるから……わかったから……もう離さない。」

櫻井がぎゅっと俺を抱き締める。

苦しいくらいぎゅっと。

でもそれは、この3年の苦しみとは違って……。

「櫻井……。」

「……もう離れないで。」

体中で俺を抱き締める櫻井が、切ない声で囁く。

「もう……どこにも行かないで。」

「さく…ら……。」

込み上げてくるもので、息ができなくなる。

「それだけで……十分だから……。」

「さく、さくら…ぃ……。」

歪んで見えてた櫻井が、一瞬クリアに見える。

俺の頬と重なった櫻井の頬が濡れてる。

ああ……俺、泣いてたんだ……。

また視界が霞む。

霞んだ目に見える街の明かりはキラキラしてて……。

「ほんとに……いいのか?」

俺が聞くと、櫻井がうなずく。

「いい。大野がいればそれで……。」

俺は顔を櫻井の胸に擦りつける。

「また……転勤、あるかもしれないぞ。」

櫻井がクスっと笑った声が聞こえる。

「そしたら俺も異動願いだすよ。」

「遠距離じゃなく……ついてくんのかよ。」

顔を上げると、昔の櫻井が優しく俺を見てて。

「ついていくよ、当たり前。離れないって言ったでしょ?」

「櫻井……。」

櫻井の唇が、俺の唇に重なる。

昔のように優しく甘いキス……。

目の端に映る夜景は煌びやかで。

また……俺の世界が動き出した。

色を持って鮮やかに。










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