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「Sunshine(やま)」
Sunshine(やま)【61~80】

Sunshine (62)

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「どうだった~?」

「ん~、いい人そうだよね。なぎささん。」

「それはわかってんの!」

マー君は当たり前って感じで言い切るから、おいらはコーヒーを飲んでクスクス笑う。

目の前では、虎次郎が煮干しの頭に齧りつき、洗濯物が風に揺れる。

「懐かしい感じ、しなかった?」

おいらはスマホを右手に持ち替える。

「した!でも……思い出せないんだよね。」

「そうなんだよ~、俺も思い出そうとしたんだけど……。」

「名前……苗字は?」

「確か……辰野……辰野なぎささんじゃなかったかな。」

「聞き覚えある?」

「……ない。」

「おいらもない……。」

しばし沈黙が流れて……。

「で、でもいい人なんだから!それだけで十分じゃない?」

「うん……。」

マー君の返事はあいまいで、やっぱりなんか腑に落ちないみたいで。

「じゃ、今度、ジュン君のお店に連れてってみれば?」

「ジュン君の店?」

「うん、ジュン君が覚えてるかもしれないよ?」

「そうだね!カズとかも記憶力いいし!」

「そうそう!」

「でも、カズ、忙しそうだもんなぁ。ジュン君ならお店に行けば会える?」

「うん、まだお店に出てるんじゃないかな。忙しそうだったから。」

「じゃ、今度、お店に誘ってみる!」

「うん!」

煮干しを齧り終えた虎次郎が体を丸くして、最後に尻尾をクルッと前に出す。

目を閉じた虎次郎は、ブサイクなのに可愛くって。

「なぎささん……。」

「ん?」

「気になるって言うのは……女性としてって言う意味もある?」

マー君はちょっとためらうみたいに間を空けて。

「どうなんだろ、よくわかんないんだ。

 でも、一緒にいて居心地いいんだよね。

 サトシやカズといるのとは違うけど。」

「ふぅん。」

「動物好きだし、優しいし、なんか知ってる雰囲気だし。」

マー君が笑う。

「一人の時と同じ空気でいられるって感じ?」

「一人の時?」

「うん、しゃべんなくても、一緒にいられそうな気がする。」

「……素敵だね。」

「うん……、なぎささんの人柄かな?」

「んふふ、そうだね。しっかりしてそうだし。」

おいらはサッとマー君の前を拭いたなぎささんを思い出す。

「そうなの、そうなの!綺麗好きだし、きっちりしてそうだし。」

「せっかちなマー君には合ってるかも?」

「くふふふふ、そうなんだよね、俺、結構せっかちだから!」

「細かいことは気にしないのにね。」

「うん。」

なんでも一生懸命で、一度できなくても、できるまで頑張るマー君。

そんなマー君を支えてくれる人が、いい人だったらおいらも嬉しい。

でも、好きになるって、そういうことじゃないんだよね。

好きになっちゃったら、何をどうしたって好き以外の何ものでもなくなっちゃうんだから。

「カズは……いないのかな?」

「ん~?」

「カズにいい人。」

「……いるんじゃないかな?」

「いる?」

「いると思うなぁ、おいらは。」

「いるか~、いてもおくびにも出さなそうだもんね、カズ。」

「んふふ、うん。」

「ある日突然、『ああ、俺、子供いるよ?』とか言い出しそう?」

「え……それはさすがに……でも、ありそうで怖い。」

「だよね?」

二人で笑って電話を切った。

風が吹いて、ブルッと体が震える。

虎次郎の毛がわずかに風で揺れる。

だいぶ寒くなってきた。

おいらは立ち上がって、窓を閉める。

虎次郎……寒くないかな?

虎次郎は気づくといなくなってることが多いから、

寒くなったらあったかいとこへ行くんだろうと思うけど。

どんなに窓を開けっぱなしにしてても、家の中へは入ってこない。

おいらと虎次郎の距離は、窓と庭の真ん中まで。

手から煮干しを食べても、すぐ行っちゃう。

でもきっと、この距離感がおいらと虎次郎には心地いい。

マー君となぎささんの距離感はどうなんだろ?

ぴったり寄り添う距離感に……なれるかな?

ジュン君とスミレさんみたいに。

カズも……いつか紹介してくれるかなぁ。

…………。

さ、おいらも仕事しないと!

まずは、もう一杯コーヒー淹れよ~。

最後のコーヒーを飲み干して、キッチンに向かう。

今日は……ショウ君早く帰ってくるかな?

せっかくの美味しいケーキ、昨日食べられなかったから……。

昨日のことを思い出して、ポッと頬が熱くなる。

キッチンでのショウ君は熱くって……さらに強引で力強くて……。

ショウ君みたいなイケメンが、そんな風になったら、逆らえるわけないじゃん?

おいらはインスタントのコーヒーを淹れて、一口飲む。

熱くて……ちょっと口をつけただけになる。

熱い熱いショウ君が、耳元で囁いたのを思い出す。

「サトシに近づくやつがいたら……俺のコレを思い出して。

 俺ほどサトシを気持ちよくさせるやつはいないから。」

そう呪文のように言われながら、熱く固いソレを打ち込まれた昨日……。

カァーッと体が熱くなる。

今日は……食べられるよね?

食べられる……よね?

え……食べられるのはまたおいら?

知らない!ショウ君のばかっ!

近づくやつなんかいなくても思い出しちゃうんだから!

またコーヒーを飲んでアトリエに入って行く。

さっさと仕事しないと……仕事できなくなっちゃうじゃん。

頭を振ってショウ君を消そうとしたけど、なかなか消えてくれなくて。

ショウ君の魔法は強い!










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