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イチオクノホシ(やま)

イチオクノホシ ~ Swan Lake ~ ⑮

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「熱が入ってたのはおいらの方。

 マサユキにそんな気はなかったのかも。

 でも、可愛かったんだろうな。

 自分の後ろをピヨピヨくっついてくる男の子が。」

智は丁寧に茂みまで拭うと、クシャッと丸めてまたゴミ箱に投げる。

ずっと撫でられてたのに、マサユキのせいでへにゃった俺の。

いつもだったらこれだけでもちょっとは復活するのに。

「マサユキのダンスの……全部が知りたいと思った。

 その為なら……黒鳥になることなんて、わけなかった。」

黒鳥になる……つまりはそう言うこと?

智が誘って……マサユキが騙された?

「でも、大人だったから……マサユキ。

 咥えさせてはくれたけど、入れてはくれなかったし、入れさせてもくれなかった。」

「え……?」

智がクスッと笑う。

「この先、おいらが……男でも、女でも……好きになれるよう……、

 男の味を教えてはくれなかったんだよ。

 男にのめり込むにはまだ早いってことだね?

だから大丈夫。おいら、翔と出会うまでバージン。」

え…っと、あれ?

そうなの?入れられなかったらバージン?

咥えて……も?

あ、俺も後輩に咥えられたけど……。

智が俺のへにゃったのを、愛おしそうに撫でる。

「こいつが初めての侵入者。」

「智……。」

中学生の智を想像する。

可愛かっただろうな。

負けず嫌いで挑戦的で。

真っ直ぐにダンスにのめり込む姿……。

智だったら中学生でも色気はあっただろうし、

甘えられたら……よく我慢できたな、マサユキ。

智が、真っ直ぐ伸びた足先で、俺の頬をコチョコチョくすぐる。

「でもまさか、侑李ともなんて……。

 おいらが若い味を教えちゃったか?」

クスクス笑いながら、コチョコチョくすぐり続ける智の指を掴んで、

くるぶしに唇を合わせる。

「マサユキ王子はわかってて黒鳥を受け入れた。

 翔王子はわかって跳ね除けた。

 どの王子も黒鳥をすぐに見破るんだね。

 ジークフリートは……見破れなかったけど。」

ジークフリートだってわかってたのかも。

でも、一心に自分を虜にしようと踊る姿を見て……可哀想になったんじゃないかな。

魔王に支配され、自由がないのは白鳥も黒鳥も一緒。

それが不幸を呼ぶなんて、王子自身、思ってもなかったよね。きっと。

「優しすぎたんだよ。」

智の足首を甘噛みして、抱きしめるように抱え込む。

「あ……。」

ビクッと体を揺らし、寝そべると、同じように俺の片足に頬を押し付ける。

「まだ……チェックアウトには時間あるよね?」

智に言われ、枕元の時計を見る。

7時半を回ったとこ。

「翔の今日の予定は……?」

そう言いながら、俺の予定なんて聞く気がない智が、俺のふくらはぎに舌を這わせる。

「う…っ……。」

俺の予定は……午後一で打ち合わせだけど……。

俺も智の踵に唇を這わす。

「ぁ…んっ……。」

智の吐息が、俺のへにゃに活力を与える。

智の器用な足先が俺の額をさわっと撫でたから、俺も指先に力を入れてみたけど……。

智の額には届かなかった。



「すごいね。何見てもべた褒め。」

俺はテーブルで新聞を広げる。

智の舞台は無事幕を開け、盛大な賛辞が送られた。

「演出が画期的だって。」

智がキッチンからマグカップを持ってやって来る。

「白鳥が上手かったから。」

嬉しそうに笑って、俺の隣に座る。

俺も初日に見に行った。

智の王子は光り輝いていた。

俺の思ってた情けない王子じゃなくて、自分で未来を掴もうともがく王子。

そこで出会う運命の相手。

魔王による黒鳥の出現。

智の王子は、黒鳥を疑い、不審な顔をチラつかせる。

それでも魔王に操られ、懸命に踊る黒鳥を、無碍にはできず……。

傷ついた白鳥の元へ走る王子。

運命の相手を寸前で助け、二人の愛の力で魔王を倒し、黒鳥も救い出す。

「あれさ、最後、黒鳥も出るじゃん?白鳥と黒鳥、同じ人だったんでしょ?」

「そうだよ。でも、操られてた黒鳥は白鳥にそっくりにされてて、

 本当の黒鳥とは違うから。

 だから最後の黒鳥は別人。」

「今までにはない役じゃない?」

「うん、でも黒鳥だって幸せになっていいじゃん?

 今までの白鳥は、魔王と黒鳥が同じくらい悪者だけど、

 今回は黒鳥も被害者って解釈だから……。」

「それで悩んでたの?」

「こんな王子、踊ったことも見たこともないもん。」

そりゃ……悩むか。

「どうして黒鳥を受け入れたんだろう。ただ騙されただけなんだろうか……。

 違うんだよね。自分と重ねたんだよ、ジークフリートは。

 懸命にもがく自分と、魔王の支配から逃れられない黒鳥を。

 優しすぎたから。」

智が新聞をグシャッと潰し、俺の手から奪い取る。

「翔だって間違えなかったじゃん?

 ジークフルートだってわかんないわけないんだよ。

 白鳥が運命の相手なら。」

智は体を乗り出し、俺の前でテーブルに肘をつく。

「翔が間違えなかったのは、おいらが運命の相手だから!

 違う?」

ニコッと笑う智の頬に手を添え、俺もニコッと笑う。

「……違わない。」

まだまだ全然格差カップルだけど。

歳の差で格差で、差ばっかりだけど、それでも……智を愛してることだけは揺るぎない。

たぶん、この先もずっと……。

例え智に飽きられても、俺は……。

唇を合わせ、合わせただけで顔を離す。

智が体を戻し、マグカップを手にする。

「今度さ。」

「……ん?」

クシャクシャになった新聞を、テーブルで丁寧に広げる。

「時間作ってよ。」

「時間?」

「うん……。」

コーヒーを一口飲み、マグカップを見ながら智が言う。

「紹介したい人がいるんだ。」

……紹介?

まさか……新しい恋人……?

俺、もうすでに飽きられてる???

「紹介……。」

どんより曇った俺を見て、智が笑う。

「母ちゃんに会って欲しいんだ。」

「え……母ちゃん?」

「うん。受け入れてくれるかわかんないけど……たぶん大丈夫だから。」

智がふふっと笑って、俺の頬を撫でる。

「母ちゃん、面食いだし。きっと翔なら気に入ると思う。」

いやいやいや、気に入るとか、そういう問題じゃないでしょ!

息子が彼氏連れて来るって、そんな……。

「さっき、勘違いしたでしょ?別れ話だと思った?」

智が楽しそうに笑いながら、俺に顔を近づける。

「翔はすぐ顔に出る!」

10センチのところに智の笑顔。

「大丈夫、安心して。別れてなんてやらないから。

 おいらを見つけたのは翔だけど、おいらだって翔を見つけたんだから!」

智の笑顔がどんどん近づいて……唇が重なる。

「おいらを躍らせてくれるのは……いつだって翔だから……。」

また唇が重なって……。

智がマグカップを置く音がした。

俺だって!

智が別れたいって言ったって……別れられない。

きっと大人の対応なんてできやしない。

自信もなくて、差ばっかりで情けない俺だけど……。

「ずっと踊り続けて……智。」

「ん。」

甘噛みの音が心地いい。

同じリズム、同じメロディ。

愛に溢れた俺達のイチオクノホシ。

一億の中で出会った俺たち。

出会いは奇跡。

でも奇跡は軌跡になって。

いつまでも奏で続けよう。

智の為に。

俺の為に。

アモローソ!










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