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イチオクノホシ(やま)

イチオクノホシ ~ Swan Lake ~ ⑦

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「大野さんもこのスタジオ使ってたんですね。嬉しいな!」

侑李と呼ばれた青年が、嬉しそうに智に寄って来る。

「侑李も自主練?団に行けば踊れるだろ?」

「そうなんですけど、一人で練習する方が進むんです。」

チラッと俺を見て、侑李がニコッと笑い、智の腕を取る。

「もし時間があるなら……少し見てくれませんか?」

智よりさらに背の低い後輩が、可愛い顔で智を見上げる。

イケメンと言うよりは、可愛い感じの後輩。

誰でも可愛がってしまいそうな、素朴で真面目そうな可愛さ。

智はどうしよう?と言った顔で俺を見る。

「いいよ。智がいいなら。」

俺が言うと、侑李が嬉しそうに笑って、智の腕を引く。

「お願いします!どうしても上手くいかないとこがあって。」

部屋のドアを開け、智を中に連れて行こうとする。

「……しょうがないな……。」

智はぶっきらぼうにそう言って、引かれるまま部屋に入って行く。

俺も後に続いて、部屋のドアを閉める。

それを見計らって、侑李が音を掛けに行く。

中はさっき踊っていたのと同じ造り。

片面が鏡張りでリノの敷いてある部屋。



智達は男だからトゥシューズは履かないけど。




懐かしい部屋だ。

準備を終えた侑李が部屋の中央で音を待つ。

最初の音と同時に、軽く飛んで踊り始める侑李。

道化の動きは滑稽で、小気味いい可笑しさがある。

きっと若い頃の智なら、誰もがクスッと笑う、そんなダンスを踊っただろう。

侑李が飛び、空中で楽しいポーズを取る。

背を反り、メリハリの利いたおかしみのあるポーズ。

智が道化を踊ったところを見たことはないが、確かに智に似ている気がする。

高いジャンプも、メリハリの利いた動きも。

曲が進む。

侑李の踊りが熱を帯びて来る。

どんどん智に似てくる。

見れば見るほど智に見えてくる。

ジャンプする時のちょっと足首を曲げる小さなクセも、そっくり。

小さな智が踊ってるみたいだ。

でも……。

一通り踊り切り、中央でポーズを取って止まった侑李は肩で息をしている。

鏡越しの視線は智を捉え、智の言葉を待っている。

智はじっと侑李の背を見つめ、バーに寄りかかっていた体を起こす。

「……いいんじゃない。」

「本当ですか!?」

侑李が嬉しそうに笑って、智に近づいてくる。

「飛んだ時の足の角度が気になって……何度もやってみてるんですけど……。」

俺には全く問題なく見えたけど。

「綺麗だったよ。」

ほら、智もそう思ってる。

「でも、もっと角度付けて、止まってるみたいに飛びたいんです!」

ああ、この子はもっと智のように踊りたいんだ。

この子に取って、智の踊りが一番で、目標は智で、智以外は何もなくて……。

「みんなもいいって言ってくれてるんだろ?だったら大丈夫だよ。」

抑揚のない智の声。

「そうなんですけど……。」

侑李はもっと何か智に言って欲しそうにチラッと智を見上げる。

「翔、行こ。」

智が俺の腕を引く。

「え、あぁ……。」

智と並んで部屋を出ようとすると、侑李が追いかけて来る。

「その人……。」

侑李の声に、二人同時に振り返る。

「大野さんの……。」

智は何も言わず、俺の腕を引いて部屋を出て行く。

俺は智に引っ張られながら、振り返る。

寂しそうな、切なそうな侑李の顔。

ちょっと冷たい智の態度を悪いと思い、ニコッと笑って大丈夫と唇を動かす。

侑李はそれでも表情を変えず、バーに掛けてあったタオルを、ぎゅっと握り締めた。



智は足早に受付に向かう。

サッサと受付を済ませると、俺の腕をグイグイ引いてスタジオを出る。

「そっくりだったでしょ。」

「……うん。」

確かにそっくりだった。

智の踊りに。

「踊れば踊るほどどんどん似てくる。」

俺の腕をぎゅっと握り、体を寄せる。

「どんどん、どんどん。」

「……怖いの?」

思わず声に出る。

智がキッと俺を睨み、ギュッと腕を抱きしめる。

「怖いのかな……わかんない。」

握られた腕をそっと離し、智の肩を抱く。

「似てたけど……似てない。」

「え……?」

智が俺を見上げる。

俺はニコッと笑う。

それが俺の正直な意見。

確かに似てた。

似てたんだけど……。

「俺にはバレエはよくわかんないけど……。」

智が不満そうに俺を見つめる。

「似てるよ。顔がなくて踊ってるとこだけ見たら、

おいらか侑李か見分けがつく人いないよ!」

「そうかな?」

「そうだよ!」

珍しく智の声が大きく響く。

「俺なら……間違えないと思うよ。」

「どうしてそう言い切れる?」

俺は一息ついて智を見つめ返す。

「愛してるから……?」

「はぁ?」

智がバカにしたように首を傾ける。

「愛してるから間違えない。」

そう言い切る俺に、智が溜め息をつく。

「王子とは違うって言いたい?」

「言えると思う……。」

自信が……あるわけじゃないけど、俺は間違えないんじゃないかな?

智のことは。

「王子だってそう思ってたんだよ。愛する人を間違えるなんて、微塵も思ってなかった!」

「それは……王子の愛が足りない。」

「はぁ~?」

「俺の愛は王子より大きい!」

きょとんとした智が、次の瞬間、顔を崩して笑う。

「あはは、翔、すごい自信!」

「自信って言うか……智に対する気持ちは……大きいと思う。」

俺が困った顔で智を見ると、笑い続ける智が俺の腰に手を回し、体をぎゅっと寄せてくる。

「んふふ。ラーメン食べに行こ!」

智が俺の手を取って走り出した。

え?さっきまで踊ってたのに疲れてないの?

「早く早く!」

俺も、縺れる足で智の後に続いた。










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