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STORY

STORY scene#4

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一歩踏み込んだ家の中は、想像した通り雑然としたものだった。

男は一瞬後悔したよ。

中に入らなければよかったって。

でも、ドアを閉めた家の中は、思ったほど隙間風は入ってこない。

少し温まって、すぐ帰るんだから……そう自分を納得させ、周りを見回した。

3畳ほどの台所は、窓から漏れる明りのみで、薄暗い。

大野さんは、物の溢れた台所を抜け、奥の部屋に入っていく。

男も恐る恐る後に続く。

台所を抜けると、4畳半ほどの部屋で、6畳程度の部屋と続いている。

襖を外して、細長い一つの部屋のようにしていたんだ。

奥の窓の片側からだけ外の明りが差し込んでいたから、

他は雨戸が締めっぱなしになっていたんだろうね。

雨戸を開けたって、今日のような天気では、大して明りは入り込みはしなかったけどね。

そんな薄暗い部屋の窓際に、イーゼルが置いてあって、描きかけの絵がのっていた。

そうそう、大野さんの絵の話をしていなかったね。

新聞に掲載した大野さんの作品は、不思議な絵だったんだ。

目録からではよくわからなかったが、写真を撮る為に展示会にも行っていたからね。

40号のキャンバス画で、描かれているのは、子供なのか大人なのか、

男なのか女なのかわからない人物画でね。

何て言うんだろう。

相反するものが、一緒くたにされているような、交じり合っているような……。

細かく描かれているのに、雑に見えたり、整列されているのに、不規則だったり。

綺麗な色なのに、どこかグロテスクだったり……。

う~ん、私には説明するのは難しいな。

全くの門外漢だからね。

まぁ、不思議な絵だと言うことだけわかってくれればいいよ。

でも、どこか男を惹きつけるものがあったのは事実だよ。

目録の中にたくさんある絵の中で、この絵を描くのはどんな人なんだろうと、

唯一男が気になった絵だったんだから。

そう、男は大野さんに会う前から、大野さんに多少の興味はあったんだ。

初受注と言うだけでなく、その絵に、その声に、自分にはない何かを感じていたんだろうね。

会う前から期待していたせいかな?

大野さんが意外と普通の見かけだったことに、がっかりもしてたんだ。

いかにも画家風な風体で出て来てくれたら、

こんなあばら家でも違った気持ちで入っていけたかもしれないよね。

話を戻そうか。

部屋の奥まで進んだ大野さんが、振り返って男に目配せする。

その視線の先には、古い石油ストーブが置いてあってね。

暗い部屋の中で、赤く光るドーム型の燃焼筒は、見るだけでも温かい。

男はそろそろと近づいて行く。

近づくと、温かさが体に染みる。

男の体は自分で思う以上に冷たくなっていたんだ。

思わず、ストーブの前にしゃがみ込み、体中に温かい空気を感じホッとする。

大野さんは何も言わず、イーゼルの隣に置いてあった椅子に腰かけて、

じっと男を見ていたんだ。

その家の中の暖房は、男が見る限りではそれしかなく、

その前を男が牛耳っていては、大野さんだって寒かっただろうにね。

もちろん、部屋はある程度温まっていたよ。

でも、なんせあばら家だから。

ああ、だから雨戸を閉めていたのかな?

雨戸を閉めれば多少機密度は増すものね。

今頃になって納得したよ。

体が温まって来ると、会話のない二人の空気感に男は戸惑った。

何かしゃべった方がいいのか、何もしゃべらない方がいいのか。

時間はゆっくり過ぎていく。

どうしたものかと振り返ると、男を見ていた大野さんと目が合う。

大野さんの目は鋭く、瞬きすることもなく、男を見つめてる。

男はドキッとしてね。

そんなにじっと見られることなんかないだろう?

大野さんくらい年配の男性からは特にね。

男はそこそこ女性にもモテていて、友達も多かった。

だから逆に、あまり女性にも友達にも興味がなかったんだよ。

興味がないと言う点では、自分の人生に対しても、そうだったのかもしれないな。

傍からはそうは見えなかったと思うけど、強くやりたいと思うこととか、、

好きで好きでたまらない異性など、これまで出会ったことがなかったから。

大野さんに見つめられてドキッとした男は、大野さんから目が離せなくなる。

最初は目を逸らしていいのかとか、そんな感じだったのに、

どんどんその目に引き寄せられて行ったんだ。

わかるかな?

その目の……奥にあるものが見てみたい、

その奥にあるものを……大野さんと同じように感じたい……。

そんな感情が芽生えてきたんだ。

欲求なのかな?

じっとみつめあったまま、動くことのできない空気を、最初に破ったのは大野さんだった。

大野さんは立ち上がり、ゆっくり男に近づいて行く。

男は、瞬きもしないで、その動作を見つめていたんだ。










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