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イチオクノホシ(やま)

イチオクノホシ ~ Swan Lake ~ ④

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甘えん坊の智は、俺のをヘニョッじゃなく、ムクッて感じにしたままレッスンに向かった。

これくらいなら……ちょっと仕事すれば収まる?

自分のイチモツをじっと見て息を吐く。

若い恋人を得て、俺も若返った気でいるんじゃないか?

出会う前とは大違い。

だからって調子に乗んなよ。

自分のを指先でピッと弾いて立ち上がる。

最近は少しばかり仕事にもありつけてる。

またまたゲームだけど。

この間、智が使った曲が気に入られて、

ゲームのテーマに使いたいからアレンジしてくれって話がきた。

俺にしては結構おいしい仕事だ。

智と出会ってから、ポツポツではあるけど、仕事が入ってくるようになった。

以前は「何をしてらっしゃるんですか」って聞かれるのが苦痛なくらい、

仕事らしい仕事はできなかった。

それがこうして、少しは曲を作らせてもらえてる……。

智のおかげだよって言うと智が笑う。

「やっと気づき始めたんだ。周りが。

 おいらを躍らせてくれる翔に、才能がないわけないじゃん。」

そう言って、俺の頬を撫でた。

辞めた方がいいのかと思ったことも何度もあった。

それでも辞められなかったのは、音楽が好きだったことと……智に出会うため?

本気でそう思ってる。

音楽が好きなのも、智に出会う為だったんじゃないかって思うくらい。

智に出会って、いろんなことが動き出した。

仕事も、気持ちも生活も。

智はレッスン……できてるかな。

コーヒーを淹れ、パソコンをつける。

「さぁ、まとめて事務所に持っていかないと。」

パソコン画面に音楽ソフトを立ち上げる。

帰りは智と待ち合わせてラーメンだ。



駅の改札を行き交う人の波。

それをぼんやり見つめる。

足早に通り過ぎる人、自動改札で止められる人。

人の流れは不思議なリズムを刻む。

バラバラなようで、止まることのない同じリズム。

面白いものだね。

自動改札が一定のリズムを作ってるんだ。

たまにリズム感のない人もいるけど。

ほら、あの人、乗り切れてない!

このリズム!

改札でもたつく人を見て、腿を叩いてリズムを送る。

「何見て笑ってんの?」

いつの間にかやってきた智が、不思議そうに俺を見る。

「笑ってた?」

「笑ってたよ。ニヤニヤ。」

智が俺の顔を真似る。

目も口も湾曲させる智の顔。

ピエロみたいだ。

「俺、そんな顔してた?」

「してたしてた!こんな顔してニヤついてた!

 何見てたの?」

「え……ただ改札見てただけだけど……。」

「それであの顔って、変な人じゃん。」

うっ。確かにそれじゃ変な人だよ。

俺は確かめるように自分の頬を撫でる。

そんなに口角上がってた?

目も下がって?

頬を撫でてた指で目尻を上げる。

智が笑って俺の腕を引く。

「気にしなくていいよ。翔はどんな顔でもイケメンだから。

 早くラーメン行こ。お腹ペコペコ!」

智は朝ほど落ちてない?

ちょっと安心したところで、グイッと俺の腕が引っ張られる。

「ほら、早く早く。」

明るい智の笑顔に、俺も笑って続いた。



カウンターで、隣に並んでラーメンを啜る。

智は味噌、俺は豚骨。

たまに食べたくなる、こってこてのラーメン。

それを智は激辛にして食べる。

見ただけで辛いとわかる真っ赤なラーメン。

それを旨そうに啜る智。

「ふぅ……うまっ。翔もちょっと食べる?」

俺の方にラーメンを寄越す素振りをする。

「け、結構です。」

智がニタッと笑う。

俺が断るのわかってて言ってるんだ。

そんな辛いの、人間の食べ物じゃないから!

智はズズッとラーメンを啜り、レンゲでスープを掬う。

「こんなに旨いのに。」

「俺にはこれがあるから大丈夫。」

俺もラーメンを啜る。

あ~、美味しい。

「レッスン、どうだった?」

智をチラッと見る。

智は顔を上げず、スープを掬う。

「どうって?」

「……プリマ、重かった?」

やっぱりズバッとは聞けない。

「まあ、なんとか?」

でも、聞きたい。

「……白鳥ってさ、黒鳥が有名だよね。あのクルクル回るやつ。」

やっぱり聞けない。

「あぁ、32回フェッテ?」

「そう、それ!」

「見どころだからね。今回はちゃんと一人で踊るし。」

智がラーメンを啜って、俺を見上げる。

「一人で?」

「オデットとオディール。」

ツルッと最後の麺が智に吸い込まれて行く。

ピチュッと智の頬に跳ねるスープ。

「一人で踊らないこともあるの?」

「あるみたい。おいらは経験ないけど。」

おしぼりの端で智の頬を撫でると、智が、ん?と頬を差し出す。

「飛んだ?」

「飛んでた。」

ニコッと笑って、おしぼりを畳み直すと、智が笑う。

「翔と一緒だと、おいらだけでなく、スープも飛ぶ!」

二人で笑ってラーメンを啜る。

後輩のこと、聞きたいけど……。

それは、智が話したくなるのを待った方がいいのかもしれない。

俺なら、話して楽になりたい時もあるけど、智がそう思うとは限らないから。










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