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イチオクノホシ(やま)

イチオクノホシ ~ Swan Lake ~ ③

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「そろそろシャワー浴びないと……。」

だるそうに、俺の肩に頭を擡げた智が、チラッと俺を見上げる。

「いいの?離れて?」

だるそうなのに、明るくなった顔はちょっと意地悪。

朝する方が好きなのかな?昨日だってやったのに。

「良くないけど、いいよ。レッスン遅れちゃう。」

「翔とくっついてるより、レッスンに行けってわけ?」

ちょっとふて腐れたような顔をして、俺のを握る。

「うっ、ちょ、ちょっと!」

「ヘニョヘニョのくせに!」

「ヘニョヘニョにしたのは智だろ!」

「グチョングチョンにしたのは翔じゃん!」

してって言ったの、智のくせに。

まだ甘えたい?

智の頭の下の腕で、智の髪を撫でる。

「そんなに大変な役なの?白鳥の王子って。」

智がプイッと視線を逸らす。

「大変じゃないよ。何度も踊ってるし。」

じゃ、何が原因?

「あ、じゃ、苦手なリフトがある?」

「……今回のオデットは軽いって有名なプリマ。

 体も小さいからなんとかなるんじゃん?」

リフトでもないのか。

じゃ、何が智をイライラさせてる?

俺の顔を見た智が、俺の胸に腕を回し、ピトッと全身をくっつける。

「今回の公演、日本でも有名な団なんだ……。」

そりゃ、智なら有名な団からだって呼ばれるだろ?

今までだってそうだったし、これからだって。

プレッシャー?

ロシアの大きなバレエ団にいた智が?

「……昔、同じスタジオにいた後輩がいだ。」

後輩……?

「今回も道化役で出てる……。」

後輩と……何かあった?

まさか、また元カノ……あ、いや、元カレ……?

「おいらに憧れてるんだって。」

智は珍しくポツポツ話す。

いつも言葉は少ないけど、こんな歯切れの悪い話し方はしない。

「いいじゃない。憧れの先輩と一緒に踊れて喜んだでしょ?」

「……うん、喜んでた。」

「じゃ、問題なんて何も……。」

智の頬が肩の上で動く。

擦りつけるように動いて、指が、俺の胸の上をクルクル回る。

「同じスタジオにいた頃も踊ったんだ。白鳥。」

へぇ、憧れの先輩と懐かしい演目。

そりゃ後輩も頑張っちゃうね。

智の指が、胸に2本だけ生えた胸毛をイタズラする。

「その時おいらが踊ったのが道化。」

昔智が踊った役を後輩が……。

憧れの智の目の前で。

ますます張りきっちゃうね、後輩!

智の首が伸びて、俺を見る。

「怖かった。」

「怖い?」

それは脅威ってこと?

それほど上手くなってた?

智の表情は複雑で……。

無表情と言うわけでもなく、怖がってるわけでもなく……。

戸惑ってる……のか?

智がギュッと俺の胸に抱き着く。

「……昔のおいらにそっくりで。」

「智……。」

抱き着いた智の髪を撫でる。

踊り方が似てたのか?

それとも表現の仕方?

智と付き合うようになって、俺も少しはバレエを観るようになった。

バレエや智の名前を聞くと、聞き耳を立てるようになったし、

ネットで調べたりもする。

でも、同じ振付で、同じ役を踊って、違いがわかるほど観てるわけじゃないから……。

観てるのはほとんど智の舞台だし。

それぞれのダンサーがそれぞれの表現方法や能力で、観客を魅了するバレエ。

そこには振付師やバレエ団の個性や要望も入っているのだろうけど……。

音楽だって似たような曲を作る人はいる。

過去、たくさんの作曲家が曲を作って来た。

その誰かに似ていると言われれば、

そうなのかもしれないと思わないわけにもいかなくて……。

そういうのとは違うのか?

知っている人間だから余計に感じる?

智を抱きしめ、背中を撫でる。

「レッスン……今日は休む?」

「……行く。」

智が俺を見上げ、脇の下に顔を擦りつける。

「翔に力、もらったから。」

顔を上げ、にこりと笑う。

体の向きを智の方に変え、智を全身で抱きしめる。

「いいよ。俺のでよければいくらでも……。

 あんまり役には立たないと思うけど。」

「翔……。」

智を両手でぎゅっと抱きしめて、頬にキスする。

「帰ってきたら、ラーメン食べに行こ。

 今日は寒いって言うし。」

「んふふ。それを楽しみに、レッスンしてくる!」

「帰り、待ち合わせしようか?」

「翔も出かける?」

「うん、事務所まで。」

「じゃ、待ち合わせしよ。」

智の声が少し明るくなって、楽しそうに待ち合わせ場所を決め出した。

帰りも……明るい顔で会えるといいけど……。

そう思っていたら、胸の辺りがチクっと傷んだ。

え?チクッ?

俺、後輩にヤキモチ焼いてる?

いや、この痛みは……。

抱きしめた智を見ると、智が俺の胸毛を1本唇で咥えてニコッと笑った。

そのまま引っ張っられて、またチクっと胸が痛む。

でも、唇じゃ、抜くまでには行かず、智の唇からスルッと抜ける。

「さ、智っ。」

「ね?なんで翔、2本だけ生えてんの?」

「知らないよ。」

「これ、抜いちゃダメだよ。おいらが育てる!」

「育てなくていいから~っ!」

智がふにゃっと笑う。

智が笑顔になるなら、胸毛の2本くらい……。

大事にするよ!










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