「ココロチラリ」
ココロチラリ その後(やま)

ココロチラリ 下 - タイムカプセル side story -

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飛行機が早い時間ということもあって、俺達は空港の近くのホテルを取った。

シングルを二つ、隣同士で取る。

俺は荷物を部屋に入れると、ベッドに腰掛け考える。

考えても仕方ない。

俺はサトシの部屋をノックする。

しばらくして、サトシが部屋へ招き入れてくれる。

俺は自分の部屋でそうしたように、またベッドに腰掛ける。

「何?どうしたの?」

サトシが俺の横に腰掛ける。

「……昨日、本社に行って来た。

 ニューヨークに行って、4年経った。そろそろ戻って来いって、

 そういう話だった。」

「そっかぁ。ニューヨーク楽しかったのにな……。」

「サトシはどうする?あの部屋にはいられないけど、あっちが合ってるなら、

 どこか部屋を借りるの手伝うよ?」

「いや……帰るよ。おいらも。」

サトシがにっこり笑う。

「どうして?向こうで仕事も順調で、帰ってくる意味がないじゃない。」

「……意味は…あるよ。」

サトシは俯き、両足をゆらゆら揺らし始める。

「どんな意味?」

「ショウ君がいないと心細いし、淋しい…。」

「……俺達、もういい年なんだよ?」

「……わかってるよ。」

サトシの足が大きく揺れる。

俺はサトシが一緒に帰ってきてくれると聞いて、嬉しかった。

と同時に、期待しちゃいけないこともわかっていた。

サトシは一人が心細いだけなんだ。

俺と同じ気持ちでいるわけじゃない。

でも、竜の木を見て、そう、子供の頃の冒険を思い出して、

あの頃から変わらない自分の気持ちにピリオドを打とうと決めた。

きっと、日本に帰ってくることになったのは、そろそろそうするべきだと、

神様が言っているからに違いない。

「……俺、日本に帰って来たら、上司の知り合いの娘さんと、見合いするかもしれない。」

「え?……お見合い?」

サトシの足が止まる。

「うん。そろそろ身を固めろってさ。俺達、もうそういう年なんだよ。」

「……するの?お見合い。」

「まだ決めてないけど……。」

俺はサトシの方に、上半身を向ける。

「止めて欲しい?」

俺は真っ直ぐサトシを見る。

「え……それで、ショウ君が幸せになれるなら……。」

サトシは視線を外し、また足を揺らし始める。

「俺は見合いなんかしたくない。……好きな人がいるから。」

「……好きな…人?」

サトシの目が潤んで揺れている。

俺はサトシの肩に手を掛け、引き寄せる。

そして、想いっきり抱きしめた。

4年間、一度もできなかった、想いを込めて。

「俺が日本にいる時、実家から出なかったのは、

 少しでもその人の近くにいたかったから。」

サトシの背中に回した手が震えている。

「ニューヨークで一緒に暮らしても、手を出さなかったのは、

 その人を失いたくなかったから。……怖かったんだ。」

声まで震えてきた。

「今の幸せもなくなってしまいそうで……。」

俺はサトシの髪に口付ける。

もう、サトシに触れるのはこれが最後かもしれない。

「昨日、みんなに会って、竜の木を見て、

 俺、昔から全然気持ちが変わってないって気づいた。

 ……竜の木が奇跡的に残ってたのは、俺に勇気を与えてくれた。」

俺は体を少し離してサトシを見つめる。

「俺は……サトシが好きだよ。サトシをこの世で一番愛してる。」

俺は言い終わる前に視線を外した。

これでサトシを失うことになったら……。

すると、サトシが俺の頬に両手を添えて、顔をあげさせる。

それでも視線を合わせられない俺の顔を、軽く揺さぶって、自分の方に向ける。

「ちゃんと、おいらを見てよ。」

俺はおずおずと視線をサトシに合わせる。

「ショウ君、なんでおいらがニューヨークまで付いていったか、わかんないの?」

「え?……仕事…でしょ?」

サトシは溜め息をついて、俺を見た。

「あの夜のこと、本当に覚えてないんだね。」

「え?……あの夜って……酔っ払って帰ってきた日…?」

「そうだよ。あの時のショウ君の方が、よっぽど男らしかったよ。」

俺は気まずくて、目を伏せながら聞いてみる。

「俺、……何したの?」

サトシはニコッと笑って話し始めた。

「帰ってくるなり、おいらのことを抱きしめて、

 俺はサトシが好きだ、もう離さないって。」

「……て…?」

俺は脳みそを懸命に回転させた。でも、全く思い出せない。

「シャツを脱ぎ始め、おいらを抱きかかえて自分のベッドへ……。」

「……え……いたしちゃっ…た?」

俺は酔っ払った自分を想像して血の気が引いた。

「ベッドの上で、サトシのこんなとこが好き、あんなとこが好き……延々。」

サトシの頬が若干染まる。

「ははは……申し訳ない。」

俺は頭をかいた。

「最後にサトシも俺のこと好きだよね?好きって言えよって。」

「……で?……言ったの…?」

「おいらもショウ君が大好きだよ。だからニューヨークに付いてきたんだよって。」

サトシがふにゃりと笑って、俺の唇に唇を合わせる。

「おいらがどんだけ嬉しかったか。……でも、酔っ払いの言ってることだから……。

 そう自分に言い聞かせてた。」

「え……あれ?……じゃあ……。」

俺の顔がほころんでいく。

「おいらもショウ君が好きだよ……。でもいいの?おいら、男だよ?」

「それが障害になるんなら、今まで30年近くも悩んだりしないよ!」

俺はサトシを抱く手に力を込める。

「ひゃっ……。」

「ああ……やっと、本当に抱きしめられる……。」

俺はサトシの頬に口付ける。

「あ……あの夜、俺……その…しちゃった?」

「うふふ。好きって言えよって言いながら、……落ちました。」

二人で顔を見合わせて笑った。

俺はサトシの首筋に唇を落とす。

「ホッとした……サトシの体、全然覚えてないなんてありえない。」

俺はそのままサトシを押し倒す。

「おいら4年も待ったんだから。」

サトシが上目遣いで俺を見ると、ゆっくりと俺の背中に腕を回した。










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