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Your Eyes(やま)

Secret Eyes ① - Your Eyes side story -

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『今日は何時頃、来れますか?』

スマホのメッセージがピコンと出る。

それを横目に、パソコン画面のエクセルの表をつらつらとスクロールする。

エクセルの表は、伊野尾が作った価格データ。

各取引先の見積りを一覧にしてもらったんだけど……。

それを見ながら、今日の予定を頭の中で確認する。

今日は最後に櫻井君のとことの商談で終わりだから……。

一緒に帰れるか?

表の最後、櫻井君のとこの見積りはまだ出てない。

今日の商談でもらう予定だから……。

なのに、打ち込んである数字。

「おい、伊野尾ぉ!」

おいらが呼ぶと、伊野尾が前髪を気にしながらやってくる。

「はい、はい!」

返事は一回でいいから。

「これ、今日もらう予定なんだけど、なんで数字が入ってるの?」

「空きままだと設定がしづらいので、過去データから適当に数字を割り当ててみました。」

「設定終わったら、ダミーに戻しておかなきゃだろ?

 このまま数字変えずに稟議に回ったら大変だぞ。」

「だ、大丈夫です。ちゃんと覚えてますから。」

「お前が覚えてても、他の誰かがこのデータ使ったらどうする?

 共有ドライブに入ってんだから、誰でも見れんだぞ。」

「え、あ……、はぁ……。」

相変わらず歯切れが悪い伊野尾。

「もうすぐお前も後輩が入ってくんだから……。」

おいらは伊野尾の肩をポンポンと叩く。

4月になれば新卒が入って来る。

そしたら、伊野尾だって先輩で、教える立場になる。

「え、なんか俺……一生新入社員がいいです!」

え……?

「新入社員で、ずっと大野さんに……おい!伊野尾ぉって呼ばれてたいです!」

そりゃ、これからも呼ぶけど。

同じ部署にいるうちは。

それ、新入社員じゃなくてもよくね?

「あははは。伊野尾ちゃん、ほんと大野さん大好きね。」

事務の女の子が、おいらの肩をポンポンと叩く。

「そ、そぉなんです!大野さんが……好きです。」

伊野尾がポッと頬を染める。

やめろ。

お前、一見女の子みたいなんだから。

「んふふ、伊野尾ちゃん可愛い!でも、大野さん、仕事できる人が好きみたいよ?」

「え?そうなんですか!?」

伊野尾が丸い目をまん丸にして俺に寄ってくる。

「だって、J社の櫻井君が来る時、いっつも楽しそうじゃない?」

え?おいら、顔に出てる?

慌てて頬を撫でる。

まずい。

今日も来るのに!

「J社……あのイケメン!俺と同い歳の!」

伊野尾の顔がキッと鋭くなる。

「しかも、この間、坂本部長も褒めてた!」

え?坂本部長が?

どっかで櫻井君に会った?

おいら、聞いてないけど!

坂本部長はキレもので有名。

若いのに、取締役も目前。

おいらの……いくつ上だっけ?

その坂本部長のおめがねにかなった櫻井君……さすが。

キラッキラのイケメンは違う。

「ほら、あんたも頑張りなさいよ?

 仕事ができると、男の株は5割は上がる!」

伊野尾がおいらの手を取って、じっと見つめてくる。

「俺……大野さんに認めてもらえるように頑張ります!

 5割増し、目指します!」

う、うん、いいんじゃないか?

仕事を頑張ろうってのは、いいことだよ、うん。

「じゃ、さっそくその表直してきます!」

「あ、あぁ、よろしく。」

直して来ると言ったくせに、伊野尾はまだおいらの前にいる。

おいらが、ん?と首を傾げると、伊野尾が恥ずかしそうにおずおずと言う。

「あ、あの……頑張る俺に、エールってか、お祝い……は違いますね……ははは。」

なんだ?何が言いたい?

「ご褒美に、一緒にご飯、行ってください!」

伊野尾が腰を90度に曲げ、右手を差し出す。

飯くらい、行ってもいいけど……今日はまずい。

櫻井君がやってくる。

「わかった。そのうちな?」

せっかくやる気になってるんだ。

これくらいでやる気が持続してくれるなら……安いもんだ。

「やったぁ~っ!」

伊野尾が飛び上がって喜ぶ。

おいらは慌てて付け加える。

「ラ、ランチだぞ!お前に酒は早い!」

「ええ~!?」

不満そうな伊野尾を後目に、立ち上がる。

「大野さん、どこ行くんですか?」

「ミーディング。その後は商談続きだ。」

「俺、どんなに冷たくされても、大野さんに着いて行きます!」

冷たくしてないし、着いてこなくていいから。

おいらは上の階の会議室に向かう。

チラッと振り向くと、伊野尾が胸の辺りで両手を振っている。

本当にあいつは女子か!

あいつとランチ……。

ま、そのうちだからな。

事務の女の子が、伊野尾を叱る声が聞こえる。

おいらはエレベーターと階段で悩んで……階段を一歩上がった。



「では、弊社からはこちらでお願いします。」

「検討しまして、後ほどご連絡させて頂きます。」

「良い結果を期待しております。」

櫻井君が丁寧にお辞儀する。

おいらも釣られてお辞儀……。

顔を上げると、ニコッと笑う櫻井君が、ビジネスモードの顔のままおいらを見つめる。

「今日は、この後……。」

「あぁ、これで今日の仕事は終りだ。」

おいらもビジネスモードの顔のまま……ちゃんとなってるか?

不安になって、顎を撫でる。

「じゃ、一緒に帰れますね?」

櫻井君の瞳が一瞬和らぐ。

「そうだな……櫻井君は?」

「僕もこのまま直帰です。」

櫻井君は手早く目の前の資料をまとめ始める。

おいらもそれを手伝う。

「資料を上に持って行くから……少し待っててくれる?」

「はい!」

元気な笑顔……でも、瞳は少し艶を含んで……。

思わず顔に見惚れていると、資料をファイルにしまうおいらの手に、櫻井君の指が触れる。










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