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「五里霧中」
夢(カズ)

夢 ① - タイムカプセル side story -

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「おぅ、二宮、調子どう?」

振り返ると、国分先生が手を軽く振りながらやってくる。

国分先生は私の担任。

面倒見がいいって評判の。

一年で写真からゲームに専攻変えした私は、クラスでもちょっと浮いてて。

だから、気になるんだろうね。

「調子ってなんのです?」

持っていた雑誌を鞄にしまって、先生を待つ。

「だから、卒制で作ってるやつ。どう?順調?」

パタパタとやってきた先生が、当たり前だろって顔で私を見下す。

そんなの、突然廊下で呼び留められて、わかるわけないじゃん。

「まぁ、順調っちゃ順調ですけど……。」

「なんだ、なんか困ってるのか?」

先生が嬉しそうにニヤニヤと笑う。

「俺でよければみてやるぞ?」

「みてくれるのは嬉しいですけど……。」

私はチラッと先生を横目で見て歩き出す。

「なんでそんなに嬉しそうなんです?」

「そりゃ、おまえ……。」

並んで歩き出した先生がニヤッと笑う。

「優秀なおまえが泣きごと言ったら楽しいだろ?」

「泣きごとなんて言ってないでしょ?」

「ははは、だよな?

 でもこの時期の生徒はみんな、『先生、もう無理です!できませ~ん!』

 って泣きごと言いながら、キー連打するんだよ。おまえも言え!」

「言えって……。」

押しの強い担任に苦笑いして、実習室に向かう。

「でも、マジで困ったら言えよ?俺、おまえの作品好きだから。」

さっきまでニヤニヤしていた先生が、先生の顔になって、俺の肩を叩く。

「……って、まだ完成品ないのに。」

私が笑うと、右肩を叩いてた手がグッと左肩に回る。

「シナリオも絵コンテも面白かったって言ってんの。

 後はどう作り上げるか……じゃん?」

回した腕で私の肩をガシガシ撫でる。

私は肩から下げた鞄を体の前に持っていく。

「でも、これ、ちゃんと作ったら時間かかるし……卒制は別のにするかも。」

「ええ~~っ!それ作れよ。俺、楽しみに待ってんのに。」

先生が不満そうに口を尖らす。

尖らしながら、私の耳に顔を近づける。

「それさ……スマックスの社長……木村さんが目を付けてる。」

囁き声なのに、やけに大きく聞こえて。

「え?」

驚いて振り向いた私に、5センチの距離で先生が笑う。

「イイものはすぐわかるんだよ。」

また耳に顔を近づける先生が、真剣な顔で囁く。

「で、おまえに会いたいんだと。」

「え、私に?」

真剣な表情のままうなずいて、さらに囁く。

「うまくいけば……就職決まるぞ。」

「それって……。」

先生は意味深に笑って、また肩をガシガシ叩く。

「でも、気を付けろよ……。木村さんはイケメンだが……やり手だ。」

それのどこに気を付けろっての?

「会う時は……俺も行くから。」

先生も?

そういうもんなの?

それ、他の生徒からモンクでない?

「来週の水曜日、空けとけよ。」

国分先生はまたガシガシと肩を叩いて戻って行く。

スマックスの木村社長……。

一世を風靡したDragon Truthを作った人。

日本中がゲームしてたんじゃないってくらいみんなが夢中になったゲーム。

もちろん私も夢中になった。

シリーズ化して今じゃ8まで出てる。

そんなすごい人が私に?

ウチは専門学校の中でも大手で、いくつかの企業とも提携してる。

優秀な子は、生徒のうちに企業から声をかけられるって聞いたこともある。

それが私に?

なんか、実感沸かないけど……。

でも、卒制……もうちょっと頑張ってみようかな。

実習室のドアを開け、目で空いてるパソコンを探した。



約束の水曜日はすぐ来て。

国分先生と木村さん、三人で食事した。

結構高そうな店なのに、木村さんはジーパンでやってきた。

こういう店、ジーパンでも入れるんだ……。

あ、木村さんだから?

木村さんもお店の人も全く気にすることもなく、席に通され、料理が出される。

初めて食べるフランス料理のフルコース。

正直、味なんてわかんない。

マナーばっかり気になっちゃう。

「好きなように食べればいいから。」

木村さんがそう言って笑う。

鼻のスッとしたブルズのマスコットみたいな顔で、偉い人なのに、フランクに話してくれる。

きっといい人なんだろうね。

ブルズはマサキが好きだったバスケットのチーム。

そう言えば、マサキもサトシもDragon Truthやってたな。

私も笑ってうなずいて。

木村さんはイケメンな上にオーラもあって。

なんてんだろ?

圧がすごいってか、みんなを巻き込むってか。

そんな感じ。

「……そうなんですよ~。二宮は本当に優秀で。」

国分先生はおべんちゃらを言い続ける。

それが私のことだってことがすごい。

「特にストーリー……シナリオがいい。」

木村さんは終始先生にうなずいて、スマートにナイフとフォークを動かす。

見よう見まねで私も食べ続ける。

他にすることないんだからしょうがない。

こんなんで本当に就職決まるのかな?

食事は和やかに終り……。

先生がトイレに行って、木村さんと二人になると、木村さんが私に名刺を差し出す。

「君と……もっとちゃんと話がしたい。二人で会うのは……難しい?」

私は名刺を受け取って、小さく首を横に振る。

「じゃ、来週の水曜日は二人で、飯食いに行こう。」

木村さんがニコッと笑う。

さわやかな笑顔なのに、なんでか水を含んだみたいな重い感じがして、

どうしようか悩んだけど、今度は縦にうなずいた。










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