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愛してると言えない(やま)

愛してると言えない 32話

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廊下に這いつくばって怪しい物がないか探す。

コンセントには何もついていない。

コンセントの中を調べるにはドライバーが必要だ。

大野なら持っているか?

でも、まずは調べられる所を調べつくす!

廊下を隅々まで見て回る。

床付近だけでなく、天井に近い部分も細かく調べる。

古い建物だ。

梁の出っ張った部分、階段の裏は仕掛けるのにちょうどいい。

俺は廊下を隈なく調べ……階段に足をかける。

大野は玄関を調べている。

後、調べてないのは階段だ。

「あっ…た。」

小さな大野の声に振り返る。

「えっ?」

玄関の戸の上を調べていた大野が、カチッと何かを取り外す。

大野の手の中には……。

小さな黒い塊。

俺は急いで大野に駆け寄る。

シッと大野が唇の前に指を立てる。



「間違いない。前に見つけたのと同じものだ。」

カバーを外し、ピッピッとランプが点滅する盗聴器を挟んで、顔を見合わせる。

「……本当にあるなんて……。」

俺は口を抑えて小声でつぶやく。

玄関にあるなら、美咲の部屋にないとも限らない。

美咲の部屋にあれば……事件の真相がわかる!

「これで、真相がわかるんじゃ……。」

俺は口を抑えたまま大野を見つめる。

「……仕掛けた奴がわかればな?」

……そうだった。

これを仕掛けた奴を探し出さなければ……。

俯く俺に、大野がボソッとつぶやく。

「俺に……あてがある。」

「あて!?誰なんですか?」

思わず声が大きくなる。

「おい!聞いてんだろ?出て来いよ。」

大野が盗聴器に唇を寄せる。

「そんなんで出て来てくれます?」

「さぁな。でも出てくんだろ。あいつなら……。」

「あいつ……?」

大野の顔から、誰なのか読み取ろうとしてみる。

大野は表情を変えず、ただ黙って両手を組む。

組んだ両手の親指で、自分の顎を撫で、じっと誰かを待っている。

ここに現れることができる相手……。

誰だ?

まさか……。

ドアがガチャッと開く。

「大野さん、声大きすぎっ。」

いつもより高い声で、二宮が耳を押さえながら入って来る。

「見つかっちゃいましたか~。

 食堂のが無くなってたから、こっちもいつ見つかるかと思ってたんですけど、

 以外と遅かったですね~。」

「え?二宮さん?」

「それどころじゃなかったからな?」

二宮は、大野の隣に腰を下ろし、俺を見てニヤッと笑う。

「二宮さんだったんですか!?」

俺の言葉を無視して二宮が大野の方を向く。

「で、俺に用?」

「用があるから呼んだんだ。」

大野は溜め息混じりに膝を撫でる。

「あ、言っときますけど、盗聴器は他にはありませんよ?

 もちろん、柴山さんの部屋にも。」

「あ……。」

せっかくの望みが絶たれ、困惑する。

それじゃ手がかりは……。

「そんなのはわかってる。もし美咲の部屋に盗聴器があったら警察が見つけてる。」

……確かにそうだ。

アパート全体を調べるのは手薄になったとしても、美咲の部屋で見逃すわけがない。

「玄関の盗聴器、いつ付けた?」

「いつって言われても……。」

二宮は悪びれた風もなく、ニヤニヤと笑う。

「細かいとこまで覚えてないなぁ。」

「細かくなくていい。事件の前か後か。」

大野の視線が鋭く二宮を捉える。

「それくらいなら覚えてますよ。事件よりは……一週間くらい前かな?」

「盗聴した録音、取っといてあるのか?」

「あ~、どうかな?面白くないと消しちゃうから。」

「じゃ、なんで盗聴なんて!」

俺が声を上げると、二宮がクスッと笑う。

「漫画のネタ探し。どこに何が落ちてるかわからないでしょ?」

「全部出せ。」

低い大野の声に、俺と二宮が振り返る。

「全部持ってこい。」

「全部?」

「そうだ。お前が聞いてた録音、全部だ。」

「大した内容、入ってませんでしたよ?」

「それでもいい。持ってこい。」

大野に言われ、眉間に皺を寄せた二宮が、俺に助けを求める。

「持って来てください。何か手がかりが残ってるかもしれません……。」

二宮は渋々立ち上がる。

「わかりましたよ……。でも、知りませんよ?」

部屋を出て行く二宮を見送って、俺は大野に顔を寄せる。

「玄関の録音なんて……手がかりになるんですか?」

「わかんねぇから聞いてみるんだよ。少なくとも、玄関からの出入りはわかる。」

確かにそうだが……。

このアパートは庭からも行き来できる。

だから玄関だけを調べても、アパート全ての出入りを確認できるわけじゃない。

でも、これで何も見つからなければ、潤の無罪を証明する手立てがなくなる……。

しばらくして、二宮が、クッキー缶を持って戻って来た。

缶を開けると、無造作に入れられたUSBが10本くらい入っている。

「これ、一本何時間なんですか?」

俺は一つ取り上げ、目の高さで見つめる。

「80時間くらいかな?」

「そんなに!?」

俺の声がひっくり返る。

80時間が10本……倍速で聞いても400時間かかる。

「これで全部か?」

大野は缶の中に手を突っ込み、一掴みすると、10センチくらい持ち上げて落とす。

ガシャガシャとUSBが当たり合う。

「そうですよ。食堂のも入ってるけど。」

二宮がクスクス笑う。

「二宮さんは聞いたんですよね?」

「そうね、聞いたかな?」

二宮は楽しそうな態度を崩さない。

「何か入ってなかったですか?」

「何かって?」

二宮が首を傾げてニヤッと笑う。

「あ~あ、入ってるよ。食堂での大野さんと柴山さんのやりとりとか?

 あれくらいかな?ストーリーの参考になったのは。」

「そ、それじゃなく!」

俺は大きく目の前で手を振り、大野をチラッと見る。

大野の表情は変わらない。

「それ以外だと……特にはなかったかな。」

俺と大野は顔を見合わせ、缶に視線を向ける。

「手分けすんぞ。」

大野が缶から一つ取り上げ、俺にも選べと顎をしゃくった。










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