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愛してると言えない(やま)

愛してると言えない 31話

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自室に戻って、手帳とイヤリングを前に考える。

美咲と大野が兄妹……。

知らなかったとは言え、兄を好きになった妹と、受け入れられなかった兄。

可哀想に……。

イヤリングを指で転がす。

でも、これではっきりしたことは……。

美咲には潤と大野以外に男の影はない。

敢えて言えば、相葉と二宮だが、この二人が事件を起こすほど関わっていたとは思えない。

相葉は相談に乗り、二宮は事件の第二発見者。

改めて事件を整理してみると……。

俺は自分のノートを広げる。

事件が起きたのは13時から15時の間。

ちょうど潤と美咲が約束していた時間だ。

美咲は潤に相談があると言っておきながら、やっぱりいいと言って断った。

心配になった潤が美咲の部屋にやってきたのは、約束の14時を少し過ぎた頃。

部屋に入ると胸に包丁を刺して倒れている美咲を見つける。

慌てて、美咲に駆け寄り、包丁を抜こうと手を掛ける。

凶器の包丁には潤と美咲の指紋しか付いていなかった。

犯人は手袋をはめていたか、拭きとったか……。

でも待てよ。

だとしたら美咲の指紋はいつついた?

拭き取った後?

包丁を抜こうとして?

それとも美咲の指紋は拭き切れなった?

どこにどんな風についていたかは、警察も弁護士も教えてはくれない。

裁判になればわかるだろうが……。

潤はベタベタと触っている。

一気に引き抜くのが難しかったらしく、何度か持ち方を変えている。

二宮が部屋を訪れた時には包丁は抜かれ、潤が警察と救急車に電話していた。

この状況では、誰が見ても潤が犯人だ。

二宮は美咲の悲鳴は聞かなかったと言っていた。

悲鳴……。

この古びたアパートだ。

悲鳴を上げれば必ず聞こえるだろう。

やっぱり……潤が犯人なのか?

大野が殺すとは思えない。

二宮には動機がない。

美咲に興味すらないように見えた。

そう言えば、相葉が同級生だと言う話もしてなかった……。

自分に繋がる話をしたくなかった?

二宮が……怪しい?

女より非力そうな二宮を思い出し首を振る。

抵抗されたら……胸を一突きになどできそうもない。

相葉は店が忙しい時間だろうし……。

今まで話に上がらない、第三者の犯行?

「あ~、振り出しに戻ってる!」

誰か……誰か来なかったのか?

このアパートに……。

それを証明するものは……。

ふと、大野の言葉を思い出す。

美咲の部屋を捜索している時に大野が言っていた言葉……。

正確には、紙に書いた言葉。

『盗聴されているかもしれない』

盗聴……。

もし、盗聴されていたのなら、あの部屋で何が起こったかもわかるのではないか?

大野はどうして盗聴されていると思ったのだろう。

俺は急いで立ち上がり、大野の部屋に向かった。



ついさっきまでいた部屋で、大野と向き合う。

「盗聴器を見つけたんだ。」

「盗聴器?」

折りたたみテーブルの向いに、大野が胡坐を掻く。

俺も、畳の上に腰を下ろす。

「下の……食堂で。」

「食堂……、どこにあったんですか?」

「テーブルの下のコンセントだ。見覚えのない黒い機械がついていて、

 なんだろうと思って調べたら盗聴器だった……。

 ここは、おまえも知ってる通り、あまり戸締りはしてないからな。

 部屋には鍵をかけてるが、食堂や玄関は開いてることが多い。」

確かに……。

大野と初めて会った時も、大野は庭先からやってきた。

玄関も鍵はかかってなかった。

下町独特の習慣か。

「誰にでもしかけられる。」

大野が人差し指で顎を撫でる。

「その後、食堂とトイレ、風呂場は確認したが、盗聴器はなかった。

 美咲がいたからな。不安がるといけないから、公にはせず、

 一人で調べたから残っているかもしれないが……、

 コンセントまで外して調べたから、たぶんもうないんじゃないか?」

大野は美咲狙いの盗聴と思ったのか。

確かに盗聴、盗撮されて一番嫌な思いをするのは美咲だ。

「俺の部屋は調べたが、他の部屋は調べてないからな。

 盗聴されてる可能性があるってだけの話だ。

 ただ、盗聴器はここでしか見つからなかったから……。

 部屋にある可能性は低い……。用心しただけだ。

 仕掛けた人間の目的がわからねぇからな。」

俺は、顎に手を当て、人差し指で唇をなぞる。

乾いた唇はサラサラしていて、集中しやすい。

「ということは……盗聴器がどこかに残っていれば……誰か……、

 別の第三者が来たらわかる……?」

俺が首を傾げて大野を見ると、大野が難しい顔をする。

「あればな。」

あったら困るが、今回はあって欲しい!

「食堂とトイレ、風呂場、大野さんの部屋は調べたんですね?」

「ああ。」

大野がうなずく。

「じゃ、廊下、階段……玄関は調べてない……。」

俺は大野を見ながら、立ち上がる。

部屋にある可能性は低いが、誰でも入れる共同部分なら……。

大野も俺に遅れて立ち上がる。

「俺、廊下調べます。」

「俺は玄関だな。」

二人同時に駆け出した。










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