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愛してると言えない(やま)

愛してると言えない 30話

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「告白されて……優しく断った?」

「最初は……。」

大野の眉間に皺が寄り、顔が歪む。

「でも美咲は……諦めなくてもいいですかって……。」

初めての恋。

簡単には諦められなくても、仕方ないこと。

でも……。

美咲は知らなくても大野は知ってる。

二人が兄妹だということを。

「美咲さんが諦められるように……してあげたんですね?」

「…………。」

大野は、ふぅと長い息を吐く。

「……そうだ。美咲が諦められるように……襲う振りをした……。」

その時イヤリングが飛んだのか。

突然の豹変に驚いたことだろう。

驚いて……。

「美咲さんはその場から逃げだした?」

大野がコクッとうなずく。

その場から逃げても……冷静になって考えれば、大野がわざとそうしたのはわかるはず。

それで潤にフラれても諦めないと……。

「それでも美咲さんは諦めなかったんですね?」

また大野がコクッとうなずく。

「美咲は……普段は態度を変えなかった……。

 でも、夕飯のおかずを作ってくれてたり……、ついでだって、洗濯してくれたり……。」

甲斐甲斐しく大野に尽くし始めたのか……。

「そのうち、二宮にからかわれるくらいになって……。

 本当のことを……言わなきゃいけないと……。」

思いながらも言えなかった?

美咲が傷つくことがわかっていたから。

「最後まで……美咲さんには言わなかったんですか?」

「ああ……。」

大野は低い声でそう言って、自分の膝を叩く。

「知らないなら知らないままでいいかと思った。

 自分が好きになった相手が兄妹だと知ったらどうだ?

 諦めなきゃいけないとわかっても、それ以上に辛くはないか?」

大野の問いに、俺は答えることができない。

初めての恋が、絶対に敵わぬ恋……。

ずっと一人だった女にとって、それは確かに酷な気がする。

「自然に……違う人を好きになるのを待とうと思った。

 ここを引っ越して……。」

俺は驚いて大野を見る。

「そのことは……。」

「美咲には言ってない。ちょっと舞ちゃんに話しただけだ。

 冗談だと聞き流せる程度に……。」

大野はガンガンと膝を叩く。

「美咲は……恋すらせずに死んでいった……。

 ずっと一人で……懸命に生きてきたのに……。」

「大野さん……。」

「俺は……。」

大野が縋るような目で俺を見る。

「あいつを幸せにしてあげたかった。

 もっと……楽しい思い出を……作ってあげたかった……。」

大野の目が潤む。

俺は大野の肩に手を掛け、引き寄せる。

「どうすればよかったんだ?美咲を受け入れればよかったのか?」

大野の背に腕を回し、大野を抱きしめる。

「兄妹だと知らせぬまま受け入れれば……美咲も少しは幸せになれたのか?」

俺は大野を抱きしめながら首を振る。

大野の髪が頬に当たる。

「……余計傷つくだけです……。大野さんは間違ってなかった……。」

「美咲がこんなことになるとわかってたら……。」

例えわかっていても……大野は受け入れることができなかっただろう。

生き別れになったとは言え、可愛い妹だ……。

「大野さんは間違ってない……。」

大野の背に回した腕に力を込める。

俺の肩に乗せた大野の顔が、首筋に寄る。

「大野さんは間違ってなかった……。」

冷たいものが首筋に落ちる。

大野は俺の腕の中で静かに泣いた。

俺は黙って大野の背を撫でる。

しばらくそうしていると、大野がそっと体を離す。

「……すまない。もう大丈夫だから……。」

潤んだ瞳のまま、無理して笑う大野に、胸が締め付けられる。

「全然大丈夫じゃないくせに……。」

「……大丈夫だ。」

「大丈夫な顔してない!」

「大丈夫だから……。」

大野が俺の胸を押し、俺から離れようとする。

俺は大野を引き寄せ、また抱きしめる。

「いいから……、俺達は契約が終了するまで……協力し合う仲間なんだから……。」

「仲間……。」

耳元で大野がつぶやく。

鼻にかかった小さな声……。

「だから、黙って俺の腕の中に収まって……。」

「バカ言うな……。大人しく収まってなんか……。」

「大丈夫。誰にも言いません。

 だから……黙って俺の腕の中で泣いてください……。

 気持ちが落ち着くまで、何時間でも……。」

「大丈夫だって言って……。」

俺は一気に大野の口を塞ぐ。

グッと押し付けた後、愛撫のように唇で唇を撫でる。

軽く開いた唇から舌を送り込み、大野と優しく絡む。

宥めるように、労わるように柔らかいキスを繰り返す。

大野もされるまま、俺のキスを受け入れる。

目の端から涙を零し、酔いしれるように目をつぶる。

深く重なる唇。

思いの外華奢な体。

俺に掛かる大野の重さ。

大野の気持ちが落ち着くよう、ゆっくり優しいキスを続ける。

息苦しそうな大野が俺から唇を離すと、大野の目から涙は消えている。

ホッとして片目をつぶる。

「すみません。黙らせ方、これしか知らなくて。」

大野が笑う。

今までになく、優しい笑顔で。










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