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愛してると言えない(やま)

愛してると言えない 27話

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人を好きになるのは理屈じゃない。

いつの間にか好きになって、好きになったら止められなくて。

そしてその想いが、人を強くも大きくもする。

なのに、大野はこの先、恋をすることを拒むのか?

そこまで美咲を……。

「それで寂しくはないんですか?」

言いながら、寂しさを感じてるのは俺だ。

なぜ?

「寂しい?」

大野がふふっと笑う。

「寂しさにはもう慣れた。」

大野はビールをグラスに注ぐ。

「寂しさなんて感じる時間もなかった……。」

そう言い切る大野に胸が詰まる。

なぜ俺が寂しさを感じる?

俺には潤がいる。

家族も友達も……。

なのに、大野を見てるだけで寂しさに押しつぶされそうになる。

大野の寂しさを感じてるのか?

それとも……人を好きにはならないと言う、大野の言葉が寂しかったのか?

「大野さんに……いい人が…現れたら……。」

俺は何を言おうとしている?

「いい人なんか現れねぇよ。」

大野が空笑いする。

「仮にいい人が現れたとしても……俺なんか好きにならねぇよ。」

「そんなことない!」

思わず立ち上がり、ガタンッと椅子が倒れる。

「大野さんならいい人が現れます。絶対……。」

「だから、現れたって……。」

「大野さんのことも好きになります!」

大野が立ち上がった俺を見上げる。

「だって……。」

だって?

だって何だって言うんだ?

俺はいったい何を言おうとしてる?

「ははは、おまえ優しいな。」

優しい?

優しさなのか?この感情は?

「優しさは……時に人を傷つける。」

大野の表情がガラッと変わる。

立ち上がったままの俺を見上げる視線は鋭く、そして冷たい。

「俺は誰のことも好きになっちゃいけねぇ。」

「……なぜ?」

大野はチラッと視線をイヤリングに向ける。

「美咲は死んだ。だからだ。」

「だからって!」

「あいつの敵(かたき)を打つまでは、俺は誰も好きにならねぇ。そう決めたんだ。」

「敵……。」

それは潤のこと?

潤じゃなければ、犯人さえまだわからない。

「愛してるんですね。美咲さんを……。」

「……愛してる。これからもずっと……。」

美咲だけを?

これからもずっと?

ズンッと胸の奥が重くなる。

俺はいたたまれず食堂を後にする、

そこにいれば、自分でもわからない感情を大野にぶつけそうで怖かった。

ギシギシと鳴る階段を早足で上る。

明日……俺は潤に会いに行く。

ちゃんと話を聞ければ……潤の汚名を晴らす手がかりが得られるはずだ。

そこから手繰っていければ、潤は釈放されるだろう。

そうしたら大野は?

大野は相手のわからない戦いを、これからもずっと続けていくのか?

一人で?

俺はブンブンと首を振る。

違う。俺が考えなければいけないのは、潤の汚名を晴らすことだけだ。

潤が出て来たら……今まで通りの生活に戻る。

ここを出て、潤と一緒に暮らし……。

今までのように快適で何不自由ない生活に……。

上りきった所で立ち止まり、階下を見下す。

コーヒー牛乳など、飲むことのない生活……。

階下に見えるのは、黒ずんだ玄関の前の廊下。

古い寂れたアパート。

軋む階段。

夏を感じる暑さ。

蝉の声と工場の音。

……壊れたシャワー。

何かがぎゅっと俺の胸を締め付ける。

なんだ?俺はどうしたいんだ!

俺は拳をギュッと握り込み、階段を駆け下りる。

ギシギシ軋む階段が、今にも抜けそうだ。

それでも駆け下り、食堂に入って行く。

「……どうした?」

ビールを飲んでいた大野が顔を上げる。

「大野さん……忘れてないですよね?」

「何を……?」

「俺達は契約を交わした……。」

「契約……?」

大野が、ははんと口の端で笑う。

「あれは……。」

「契約は、目的が達成されるまで継続される。」

テーブル越しに大野の肩に手を掛ける。

「俺達は、一緒に犯人を見つける……。」

大野の顔に顔を近づける。

「おまえ……。」

片手をテーブルにつき、大野の肩を自分に寄せる。

そっと唇を重ね、すぐに離す。

「これが契約です。」

もう一度大野の唇に唇を押し当てる。

グッと押し付けた唇から、舌を差し入れ、大野の舌を探る。

びっくりしていた大野がクスッと笑う。

大野の片手が俺の後頭部に回り、舌が、俺の舌を絡めとる。

「ん、んっ。」

大きく口を開け、顔の角度を変える。

深く、深く結び付く唇。

「あ……んぁ……。」

絡まる舌が唾液の音をさせ、大野の手が俺の髪を掻き上げる。

唾液が混ざり合う。

粘膜が擦れ合う。

クチュッ、ピチュッと音をさせ、絡まる舌が離れると、

大野が、俺の唇の端を親指の腹で拭う。

「いいのか?」

俺は小さくうなずく。

「同情なら……。」

「同情なんかじゃありません。契約は絶対です。」

「……それが、おまえにとって辛い結果でも?」

「……俺は潤を信じてますから。」

大野がクックと笑う。

「真面目なお坊ちゃんだね!」

「そんなことは……。」

大野が意地悪っぽく片目をつぶる。

「そんなことはないか?こんなキスができるんだからな!」

「お、大野さん……。」

言われるまでもなく、俺が一番びっくりしている。

3度目のキスを俺からしかけるなんて……。










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