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愛してると言えない(やま)

愛してると言えない 26話

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部屋でコーヒーを飲みながら、相葉の話をまとめ、もう一度手帳を見直す。

美咲は潤と付き合っていた。

……俺に告白する前のことだ。

潤が不誠実なわけじゃない。

別れた原因はわからない。

でも、美咲にはずっと好きな人がいた。

本人が気付いていなかったとしても……。

潤にも俺がいたんだから、似た者同士だったのか。

二人は別れて別々の相手に告白する。

潤は俺に、美咲は……大野に。

その結果がどうなったかはわからないが、大野が付き合っていたと言うんだから、

そう言うことなのだろう。

だとしたら、美咲が潤に会う理由は?

お互いの近況報告?

新しい人と付き合い始めましたって?

わざわざ言うか?そんなこと!

潤と美咲、二人の別れた原因……。

付き合った経緯……。

俺は自分の手帳にそう書き込む。

そして一番大事なこと。

事件当日、呼び出したのはどちらなのか。

どうして約束は反故になったのか。

窓からの風が、美咲の写真を浮き上がらせる。

慌てて手で押さえ、窓に向かって顔を上げる。

まだ、陽は高い。

でも、風は少し涼しくなった気がする。

大野が……そろそろ帰って来るか。

ポケットからイヤリングを取り出し、手帳の脇に置く。

このイヤリングは……きっと、大野からのプレゼントだ。

手帳に書かれたOの横のイヤリングの文字を見る。

美咲の誕生日に、大野がイヤリングを作ってプレゼントしたのだろう。

文字からも嬉しさが伝わって来る。

そんな大事なイヤリングをダイニングで無くす……?

あそこで何かあったに違いない。

ダイニングで、大事なイヤリングが落ちても気付かないような何か……。

何があったんだ?

相手は大野か?潤か?

大野に……このイヤリングを見せてみるべきか……。

俺は片方だけのイヤリングを指で摘まむ。

キラッと白く光る花びら。

繊細な、可愛らしいデザイン。

小さな5枚の花びらにたくさんのおしべ。

そんな花が5つ、ランダムに連なっている。

ぶどうの小房のよう?

もう少し丸いか。

俺には薔薇と桜くらいしかわからない。

何と言う花なのだろう。

大野にとって、美咲とはこんな風に可愛らしい女だったのか。

俺は改めて手帳を見直す。



カップを洗いに下に下りると、大野が食堂でビールを飲んでいた。

「帰ってたんですか?」

「ああ、納期分は終わったから。」

大野が缶からグラスにビールを注ぐ。

「わざわざグラス使うんですね。」

「グラスの方がうめぇんだよ。飲みやすいし。」

「俺は面倒だから缶のまま飲んじゃう。」

カップを軽くゆすぎ、冷蔵庫からビールを取り出す。

「あれ?前は缶のまま飲んでましたよね?」

大野がちくわを摘まんでパクッと口に入れる。

「あの時は……おまえがそのまま飲んでたからな。」

俺に合わせてくれたのか……。

そういう所に美咲も惚れた?

俺は大野の向いに座る。

「今日……相葉亭で少し話を聞いてきました。」

「相葉亭?……あぁ、何か言ってたか?」

「店主は美咲さんの話を聞いてあげてたらしいです。」

「話……?どんな?」

大野のこめかみがピリッと引きつる。

「大野さんの話が多かったみたいでした……。」

「俺の?」

大野の視線がグッと強くなる。

「俺の何を話してたって?」

いつにない大野の目力に、視線を逸らしてビールを飲む。

「……大野さんのことずっと好きだったみたいですよ……。」

「ずっと……。」

「お、男冥利に尽きるじゃないですか!」

明るく言って、ビールをゴクゴク飲む。

死んでしまった恋人が、自分をどれだけ思っていたか知ることは、

大野にとって酷ではないのか?

「それだけ?」

大野の目が冷たく光る。

「そ、それだけです。大野さん、愛されてたんですね。」

大野がじっと俺を見る。

「他には?」

「特にはなにも……。でも……。」

「でも……?」

俺はポケットからイヤリングを取り出す。

「相葉亭に行く前に、ここで……これを見つけました。」

イヤリングを手の平に乗せ、大野に見せる。

さっきの工場とは逆に、大野の指が、俺の手の平の上のイヤリングを動かす。

「これは……。」

大野は驚いているのか、何か思い出しているのか、イヤリングから指を離さない。

「大野さんがプレゼントしたイヤリングですよね?」

大野の視線が俺に向く。

目力に負けないよう、俺もグッと大野を見据える。

「大野さんが、美咲さんの誕生日プレゼントに……。

 手帳に書いてあったイヤリング……。」

大野はじっと俺を見たまま口を開く。

「そうだ。俺が美咲の為に作ったイヤリングだ。」

「やっぱり……。」

「美咲は……とっても喜んで、しょっちゅう付けてくれてた。」

「そうだったんですね……。」

大野は俺の手の平からイヤリングを取り上げると、梳かすように照明に翳す。

「どこでこれを?」

「このテーブルと壁の間で……雑誌や新聞に隠れて。」

大野は自分の手の平の上に持ち替えて、寂しそうに笑う。

「そうか……あいつ、無くしてたんだな。言えば作ってやったのに……。」

言えなかったのだろう。

大好きな人からの大事なプレゼントを無くしたなんて……。

「美咲さんはそういう人だったんですね。可愛いじゃないですか。」

大野が優しく笑う。

「ああ、可愛いな……。」

ギュッと、なぜか大野の笑顔に胸が締め付けられる。

「この……事件が解決したら……大野さんも新しい恋を……。」

そこまで言って、首を振る。

余計なお世話だ。

俺が言える立場じゃない。

「俺はいい。」

大野がグラスに残ったビールを飲み干す。

「俺は人を好きになったりはしない……。」

美咲のことがあったから?

美咲だけが、大野の生涯の恋人……?










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