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愛してると言えない(やま)

愛してると言えない 21話

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約束を取り消した?

なぜ?

潤は俺との未来がある。

別れを切り出したのも潤の方だろう。

別れを渋ったのはどう考えても美咲の方だ。

ということは……会いたいと言われ、最後にちゃんと話そうとした潤に、

やっぱり会えないと断ったのは美咲だろう。

潤には会う必要がないのだから、誘うのも断るのも潤ではないはずだ。

美咲は誘っておいて、約束を取り消した……。

「どうして?」

俺の問いに大野が、ふんっと顎を上げる。

「必要がないと思ったんだろ……。」

「必要がないって……。」

大野の瞳が冷たい。

大野は潤を敵対視している。

恋人を殺した相手だと思っているんだから仕方ない。

だが、潤じゃないかもしれないと……大野は微塵も考えないのだろうか?

「会いたいと言っておいて、必要がないってどうして?」

「会いたいと言ったのは松本の方だろ?」

「潤が?まさか!」

「どうしてまさかと思える?

 別れたものの、もう一度美咲とやり直したい、そう思ったんじゃないのか。

 それが本気かどうかはさておいて。」

「あり得ない。」

「おまえがいるからか?」

大野が鼻で笑う。

「男より女がよくなったんだろ?」

「潤がそんなこと思うはずがない!」

「どうしてそう言い切れる?」

「どうしてって……。」

潤は俺を愛してる。

来週から一緒に暮らす予定だったんだ。

潤が心変わりなんて……。

「人の心は変わる。男女だってくっついた別れたって話が毎日ある。

 男同士のおまえ達が上手くいくと本気で思ってんのか?」

確かに……男同士がやっていくには難しい社会かもしれない。

でも、それを乗り越える気持ちがあれば……。

「全てを捨てなきゃならないかもしれないんだぞ?

 おまえに、おまえ達にその覚悟があったのか?」

俺は何も言えなくて黙り込む。

俺にその覚悟はあった。

父の跡を継がずに潤と二人で……。

でも潤にもその覚悟があったのか?

一刻の盛り上がりで俺と……。

いや、違う。

俺と潤は幼馴染だ。

小さな頃からの想いがやっと形になったんだ。

それなのに、心変わりなんて……。

「ないとは……言いきれないだろ?」

大野の目が怪しく光る。

「現におまえだって……俺とのキスを受け入れた。」

大野の手が俺の肩にかかる。

「やめろ。」

大野の手を払う。

「あれは無理やり……。」

「嫌そうじゃなかったけどな?」

払われた腕を、大野がもう一度俺の肩にかける。

「あれはただびっくりして……。」

「びっくり?」

大野の顔が近づいてくる。

「びっくりしただけで……。」

さらに近づく大野の瞳は、意地悪そうに歪んでいるのに、ひどく澄んでいて……。

艶やかな唇が、薄く開く。

「本当にびっくりしただけ……?」

ボソボソとしゃべる唇が近づいてくる。

近づく唇に……動けないのはなぜだ?

肩を掴まれているからか?

大野が鍵を握っているかもしれないからか?

唇の感触を……思い出したから……か?

唇と唇が重なる寸前で、大野がクックと笑い始める。

「おまえ達が本気かどうかなんてどうでもいい。」

大野の顔が離れて行く。

「真相がわかった後、別れようがくっつこうが好きにすればいい。

 ただ……松本が犯人だったら、俺が殺(や)るけどな?」

綺麗な形の唇が、ボソボソとしゃべる。

「美咲と松本は付き合っていた。それは事実だ。」

大野の唇は、事実だけを語っていく。

「当日、会う約束はなくなった。なのに、松本はやってきた。」

大野はテーブルの上のペットボトルの蓋を開ける。

「事件は起こり、美咲は死んだ。」

ペットボトルの水を流し込み、大野の喉が上下する。

「松本以外、犯人は考えられねぇ。」

「違う!絶対に!」

「松本以外、美咲と会った痕跡はない。」

「それでも!潤じゃない!」

俺は叫ぶように言う。

「じゃぁ、誰だって言うんだ!」

大野の目が鋭く俺を射抜く。

「それは……。」

俺はゴクッと唾を飲む。

「だから、それを……探しているんです!」

「見つかるかねぇ。」

大野が薄ら笑う。

「絶対に見つけ出して見せる!」

「どうやって?」

「今週の日曜……潤に会ってきます。」

「会ってどうする?」

「会って、本当のことを聞いてきます。」

大野がクックと笑い始める。

「あいつが本当のことを言ってないってわかってるんだ?」

「そうじゃない……でも、俺だから言いにくいことも……あるだろうから……。」

どんどん語尾が小さくなっていく。

俺にだから、本当のことを言って欲しいのに!

「わかった。それを待ってやる。どっちにしろ、今のあいつじゃ俺には手はだせねぇしな。」

「それと……。」

手帳を掴み、大野に向ける。

「これも……貸してください。もう少し、中身を見てみたい。」

大野は一瞬不満げな顔をして、胡坐を掻いた膝を撫でる。

「いいだろう。貸してやるのは松本に会うまでだ。いいな?」

俺はコクッとうなずき、手帳をポケットにしまった。










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