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愛してると言えない(やま)

愛してると言えない 16話

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「まず、あなたの知ってることを教えてください。」

「知ってること?」

「そうです。」

俺はペットボトルを握り締める。

「柴山美咲について……。」

大野は握っていたペットボトルをポンと畳の上に置く。

「俺は……大したことは知らねぇよ?」

「でも……あなたは柴山さんを殺した相手を絶対許さないと言った。

 殺してやるとも……。それくらいの付き合いではあったんですよね?」

大野は黙って俺を見つめる。

どこまで話していいものか、考えている?

「全て話してください。

 俺達は協力すると誓った。」

そう、お互いの恋人の為に……契約したんだから。

大野は膝に肘を付き、頬杖を付いて俺を見上げる。

「その前に、まずはおまえが話すのが筋だろう?」

「俺が知っているのは……ここで二宮さんに聞いたことと、弁護士の話だけです。」

「弁護士はなんて?」

「……難しいと……。」

俺は弁護士の話と事件の経緯を思い出す。

潤が美咲の家を訪れたのは、事件当日の午後3時過ぎ。

ノックしても応答のないのを不審に思い、ノブを回すと鍵が開いている。

そっと戸を開け、中に入ると、美咲が血塗れて倒れている。

その胸には包丁が……。

慌てて美咲を抱き起こそうとする。

その時に、手や体に血が付いたのだろう。

抱き起こそうとしても、全く動かない美咲を見て、警察と救急車に電話をかける。

数分後、警察が到着し、潤と話をするも、たどたどしい潤を怪しいと思った警官が、

同行を求め、何がなんだかわからぬ間に捕まった。

概ね、俺の知ってる事件の経緯はこんなところだ。

平日の午後。

大野は仕事中だろう。

二宮は本人の話の通りだとすると、部屋で居眠りしていたことになる。

隣は工場だ。

美咲や潤が悲鳴を上げても、隣近所に聞こえなかったとて不思議ではない。

もちろん、タイミングにもよるだろうが……。

俺が知ってることを説明すると、大野は確認しているようで、時々うなずく。

「……潤は、相談があると呼び出されたと言っていました。」

「相談……。」

「本当に……潤と柴山さんは付き合っていたのでしょうか?」

俺が大野を見つめると、大野がクスッと笑う。

「ヤキモチか?」

「そんなんじゃありません!潤が俺と付き合う以前に誰と付き合っていようが……

 そこまで言うほど独占欲は強くない。ただ……。」

「ただなんだ?」

「潤は……真面目で一途な男です。彼女と別れてすぐ俺に告白なんて……、

 できるのかと思って……。」

大野が、ふんと鼻で笑う。

「お前の知らない“潤”がいるんだろ?」

俺の知らない潤……。

いつでも俺を追いかけて来た、可愛い潤とは違う潤?

「美咲は松本のことを、付き合ってる人と言っていた。

 それは事実だ。」

事実……。

「でも別れた。」

「別れてないのかもしれねぇだろ?

 松本は別れたがり、嫌がる美咲を思い余って……。」

警察の見方はそうだ。

別れ話の縺れ……。

そう見るのが自然だろう。

潤は……俺と付き合う為に……?

まさか!

そんなことをすれば、永遠に俺との未来はやってこない。

それくらい、潤にならわかるはずだ。

リスクが大きすぎる。

しかも、それならもう少しうまくやるはずだ。

血がべったりついたまま部屋で警察を待つか?

警察にも救急車にも、電話したのは潤だ。

「絶対違う。潤はそんなにバカな男じゃない!」

「じゃあ、誰がやったって言うんだ!?」

大野の語気が荒い。

潤以外に美咲を殺すことができたのは……。

俺は大きく息をつき、冷静に考える。

「アリバイのないのは……。」

そう、俺が調べた関係者の中で、アリバイがないのは……。

「二宮。」

俺の言葉に、大野の視線がピクリと動く。

「二宮に……そんな度胸はねぇよ。」

「どうして言い切れるんですか?

 普段度胸がなくたって、カッとなれば……。」

「確かにちょっと変わった男だ。

 だが、あいつに動機はない。」

「そんなの、男女の問題なんて、外から見たってわからないじゃないですか。」

「…………。」

大野だって疑ってる素振りを見せていた。

長年一緒に生活した仲間だ。

疑いたくないのはわかるが……。

一人一人、潰していかなければ先に進まない。

「美咲さんは手帳とか日記とか、書いてなかったんですか。」

大野は腕組みし、考え込むように首を傾ける。

「日記はわかんねぇが……手帳は使ってるのを見たことがある。」

手帳……。

それに何か書いてあれば……。

「それは、警察に?」

「いや……警察が持って行ってるかどうか……。」

大野が顎を撫で、思い出そうと考え込む。

俺も顎に手を当て、考える。

警察が持って行ってしまっていれば、見ることはできない。

でも、もしあるとしたら……。

「美咲さんの部屋……入れませんか?」

「無理だろ。」

「でも、鍵さえあれば……入れますよね。」

「そりゃそうだが……。」

「オーナーに……借りられませんか?」

「警察が止めてるうちは無理だろ。

 舞ちゃんが鍵を貸してくれるとは思えない。」

オーナーとしての立場では、なんと理由を付けても貸すのは無理か。

正攻法でないとしたら……。

「ここの鍵、古いタイプですよね?

 実家にある俺の引き出しの鍵とそっくりなんです。」

「それがどうした。」

「俺、何度か鍵なくして……針金で……。」

大野を見つめると、大野はふぅと溜め息をついた。










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