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夏疾風(やま)

夏疾風 そして、パンツは今…… 前編

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5人が集まっているのに気づいた生徒達が、ざわざわと騒ぎ始めた。

櫻井は4人に目配せし、狭い用務員室に入って行く。

用務員室は、給湯室の奥に6畳ほどの部屋が続いている。

窓の外には、今を盛りと大きな花を咲かせるひまわりと、

下校し始めた生徒の後ろ姿が見える。

櫻井は一番奥に陣取り、4人に入れと促した。

キョロキョロとお互いの顔を見比べ、恐る恐る靴を脱ぎ始める4人。

それを、櫻井が胡坐を掻いて待つ。

二宮が、櫻井に続いて畳に上がる。

ついで松本、相葉が上がり、最後に大野がよっこいしょと胡坐を掻いた。

車座になった5人はお互いの顔色を窺う。

誰が櫻井のパンツを盗ったのか……。

お互いを疑う疑心暗鬼な面々。

「さて……アリバイをもう一度聞いとこうか?」

櫻井が、胡坐に肘をつく。

「アリバイなんて……。」

人を疑うなんて良くないと言うように、相葉の眉間に皺がよる。

「アリバイはアリバイだろ?」

櫻井の視線は鋭い。

それに反し、気持ち悪そうに時折、腰が動く。

位置をズラしているのは一目瞭然。

ノーパンに作業用のズボンでは……いったいどっちを向いていることやら。

「み、見んなよっ!」

両手で股間を押さえる櫻井に、4人の視線が泳ぐ。

「さて、アリバイだけど……二宮先生?」

櫻井が隣に座る二宮に視線を向ける。

二宮は動揺する様子もなく、櫻井を見返す。

「アリバイの前に、パンツの形態と素材を確認したい。」

「そ、素材?」

「そう、素材です。何でできていましたか?」

「そんなのわかるわけないじゃん!」

「ご自身の履くパンツの素材もわからないんですか?

 それでよくアリバイだなんだと言いますね?

 盗まれたと騒ぐくらいなんだから、それなりの素材で作られていたんでしょう?」

「そ、それなりの素材ってなんだよ!」

「Au、Ag、Pt……などなど。」

二宮が勝ち誇ったようにニヤリと笑う。

大野は隣に座る松本の袖を引っ張る。

「Au、Ag……ってなんだよ?」

松本は前を向いたまま大野に顔を寄せる。

「Auは金、Agは銀。Ptは……。」

「わかった!ポリタンク?」

「違うよ、プラチナ!」

「そこ、静かに!」

二宮が先生よろしく、二人を注意する。

「すいません……。」

怒られた生徒のように小さくなる二人に相葉がクスッと笑う。

「で、素材は?」

二宮が質問を繰り返す。

「そんなのわかんないよ。」

「じゃ、形状は?」

「け、形状?」

「そ、形。ヒモだったとか、カップが付いてたとか……。」

「に、二宮先生、そんなの履いてんの?」

相葉が、びっくりしたように目を見開く。

「ち、違いますよ!櫻井さんならそれくらい履いててもおかしくないなー

 と思っただけです!」

「そんなの履いて作業してたらおかしいだろ!」

想像した櫻井が、顔を赤くして怒鳴る。

「そんなことはありません。どんなパンツを履こうと、個人の自由。

 他人がとやかく言うことではないし、誰も文句なんて言わないでしょう?

 パンツで歩いてるわけじゃないんだから。

 で、どんなパンツだったんです?」

二宮の目が鋭く光る。

「ふ、普通のパンツだよ。」

櫻井がぶっきらぼうに答える。

「普通って?」

松本が、面白そうに口を挟む。

「だから、普通!」

「普通ってなんだよ~。

 普通普通って言うけどさ、普通なんてないんだよ?

 それぞれの個性を伸ばすのが、我々教師の仕事なんだから!」

相葉の力説に、二宮の冷たい視線が突き刺さる。

「それ、ここで関係あります?」

「あ、あるよ~!ふ、普通じゃないパンツ履いてたって、それが個性って言う話!

 みんな違ってみんないい、だよ!」

「じゃ、やっぱり普通じゃないパンツ履いてたんだ~、櫻井さん!

 紐がグイグイするやつとか、お尻に穴が開いてるやつとか!」

松本が意味深に、ニヤニヤ笑う。

「ち、違う!俺のはいたってノーマル!普通のボクサーパンツ!

 素材も汗を吸い取りやすいやつ!」

思いっきり両手を広げ、松本、二宮、相葉を制止した櫻井が、大野を見る。

大野の目は冷ややかに櫻井を見下し、視線を逸らす。

「さと……大野さ~んっ!誤解しないで!」

「知るかっ!翔君が普段からそんなパンツ履いてようが何しようが、

 俺にはカンケーないね。」

「違うっ!断じてそんなパンツは履いてない!」

「どうだか……そう言うのが好きなんだろ。」

「違う!違うから~っ!信じて!智くぅ~んっ!」

相葉、二宮、松本が顔を見合わせる。

「……翔君……?」

「智……くぅぅぅ~んっ?」

「名前で呼び合う仲なの……?」

三人の視線が大野、櫻井を交互に移動する。

見られて戸惑う大野と櫻井が、視線を逸らす。

「二人……こういう関係……?」

松本が、大野と櫻井を指さし、その指を、自分の顔の前でくっつける。

「え、えええ~っ?」

相葉の素っ頓狂な大きな声に、窓の外を歩く生徒が振り返る。

慌てて相葉の口を二宮が抑える。

「シ、シィーッ!

なぜか隠れるように体を屈める大野、櫻井、松本。

「そ、そうなの?そういうこと?」

相葉がどまどいながら、二人を見比べる。

大野と櫻井も顔を見合わせ、困ったように眉を下げる。

「そ、それは今回の件に関係ないから!

 で、二宮先生、犯行時刻のアリバイは!」

櫻井が喰いつきそうな勢いで、二宮に迫る。

「アリバイって言われても、花に水やってただけだし……。」

「あ~、それ、俺見てたから間違いないよ。」

松本が小さく手を上げ、一同を見回す。

「見てた?」

相葉が怪訝な表情で首を傾げる。

「ちょうど、陸上部が走り込みから戻って来たところで……。

 ふと見たら、二宮先生がそこの花壇で水やってて。」

松本が窓の外を指さす。

いつも二宮が水をやってる辺りが、この部屋から良く見える。

「やっぱり、二宮先生、用務員室を……。」

小さな声でブツブツ言う大野の声を、聞きとれた者はいない。

「じゃあ、そういう松本さんは?」

「俺?俺を疑ってんの?」

松本の濃い顔が、目づからを添えて櫻井を突きさす。

「うっ。」

思わず声が出るほど視線はするどい。

「……二宮先生見てたってことは、それがアリバイなんじゃない?」

言い終えた相葉はニカッと笑い、うんうんとうなずく。

「そ、そうだよ!陸上部に聞いたってわかるよ!」

櫻井は頭の中でメモする。

陸上部に裏付け、トルっと。

「まぁ、じゃあ、それを取りあえず信じましょう?

 残るは相葉先生と大野さん。」

櫻井が二人の方を向く。

「相葉先生……、確かに吹部の音は聞こえてましたけど……。

 本当にそこにいたんですか?」










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