ワイルドアットハート(やま)
ワイルドアットハート 30
2018.07.22 *Edit
「翔君、ほら、起きろ?」
ん、んん~~~っ。
「飯!朝!仕事!」
智君の……声……。
もっと……聞いてたい……。
「起きねぇと、遅刻すんぞ?」
蒲団が剥がされ、縮こまる俺。
でもまだ目は開けない。
もうちょっと……智君の声聞きながら寝かせて……。
「起きねぇの?翔君!」
起きない……起きたら智君の声……聞けなくなっちゃう……。
智君が帰って来たの、全部夢でしたって言われそうで……。
そう思うと、目が開けられない。
突然、耳の穴に息が当たって、背筋がゾワッとする。
「うわぁ~っ!」
思わず飛び起き、布団を引き寄せる。
「んははっ。起きた?」
蒲団を抱きしめる俺を見て、智君がゲラゲラ笑う。
「智君……。」
「ほら、飯食お。」
智君の手が俺の蒲団を剥ぎ取る。
「ああ~っ。」
追いかける俺の手はゆっくりで。
「来ないと一人で食っちゃうぞ?」
俺の部屋を出てく智君の背中をぼぉーっと見つめる。
智君……帰って来てくれたんだ……。
智君がいる朝……。
俺と智君……。
ぼぉーっと考えてた頭が徐々に覚醒してく。
「はっ!待って、智君っ!」
急いでベッドから下り、智君を追いかける。
一人で食べられちゃったら……楽しみ半減!
智君の迎え舌見逃しちゃう!
写真に撮れないんだから、目に焼き付けないと!
「待って~っ!!」
向かい合ってご飯を食べて。
温かいご飯と美味しい味噌汁、智君の迎え舌を堪能して……。
今はソファーでコーヒーブレイク中。
智君が起こしてくれたから、そんな時間も味わえる。
「智君さ……。」
「ん~?」
「俺のインスタ見つけた時……何検索してたの?」
「え?」
ビクッと肩が揺れる智君。
あれ?聞いちゃいけないこと?
「別に……。」
智君の視線がマグカップに落ちる。
「俺には言えない……?」
「……言えない。」
そう言ってそっぽを向く智君。
え?俺には言えない?
どゆこと?
俺ら、付き合ってるんだよね?
なのに、隠し事?
それはないでしょ~っ!
「智君……。」
俺には教えてくれないの?
ってことは松潤関係?
それとも……。
じとーーーっと、横目で智君を見る。
「そんな目で見んなよ。」
智君の手が俺の頬を押して、視線を逸らそうとする。
「だって……。」
「だってじゃない。」
智君は少し頬を膨らませ、俺から顔を背けると溜め息をつく。
「はぁ……、翔君の写真を探してたんだよ。」
写真?……俺の?
「ちょっと前に出た雑誌の翔君が……ご……きで……。」
え?なんて?
俺が耳を傾けると、頬を染めた智君が、ぎゅっと目を閉じて言う。
「雑誌買いそびれたから!画像、探してたの!」
雑誌……?
……画像?
俺の……?
俺が自分を指さして智君を見ると、顔を赤くしたままの智君が、口を尖らせてうなずく。
「櫻井翔、写真って検索したら……あれが出て来て……。」
あれってインスタだよね?
って、今はそこじゃない。
智君がなんで俺の画像探してたのか?
「画像……どうして?」
観念したのか、赤い顔の智君が俺を見て言う。
「すっごい好きな写真だったから!」
すっごい……?
「でも、恥ずかしくて買えないじゃん?
女性誌だし、メンバーの載ってる雑誌なんてさ……。
松潤に欲しかった雑誌が買えなかったって言ったら、画像検索すれば?って。」
すっごい……好き?
「スマホに入れとけば、いつでも見れるし、
メンバーの写真持っててもおかしくないじゃん?」
口を尖らせたままの智君。
智君も……。
「俺と一緒?」
「違う!俺は一人で楽しみたかっただけ!」
顔を赤くしながら怒って、そっぽを向く智君。
……可愛い~っ!
「智君っ!」
「わっ、ばか!よせっ!」
こっちに向かせようと肩を掴む俺を智君が振り払う。
その手を掴んで、智君の顔を覗き込もうとしたら、
逆にソファーに抑え込まれた。
俺の上に乗っかって、じっと俺を見る智君。
まだ顔は赤いのに、俺を見てクスッと笑う。
「もう……我慢しないからな?」
俺の上に落ちてくる智君の顔……。
唇が重なって、ドキッと心臓が鳴る。
柔らかい唇が離れ、智君の前髪がパサッと落ちる。
男前な智君の男臭い顔。
俺は智君の肩を掴んで、クルッと回り込む。
今度は俺が上で智君が下。
「俺も……。」
智君の唇目がけて落ちていく。
いつの間にか、自然にキスができるようになってる。
あんなに悩んだのに。
これで富士山は越えられる?
それとももっと高い壁が?
そういえば、どっちがどっちって……。
智君と舌を絡ませると、ムズムズしてくる俺の……。
智君のも固くなってる……?
あれ?男同士ってこの後……?
唇を離し智君を見ると、智君がふんわり笑う。
「翔君、もう俺から離れんなよ?」
「それは俺の台詞!
そろそろ……荷物まとめて持って来れば?」
「んふふ。そんなことしたら、本当に我慢できなくなるよ?」
智君が俺の首に手を掛け、引き寄せる。
重なる唇。
柔らかい感触……。
この感覚はインスタでは味わえない……、
伝えることもできない。
伝える気はさらさらないけど。
チラッとスマホを見ると、智君の目が一瞬細くなる。
「翔君、まさかまだ……。」
「捨てた捨てた。」
スマホを開いて見せる。
今までインスタのアイコンのあった右端には、クマのマークのアイコン。
「どんな智君も……俺の心に焼き付けるから。」
「翔君……。」
智君が微笑む。
それだけで幸せを感じる俺。
男同士に拘ってたなんて、今までの俺はなんてバカだったんだ!
おっさん同士だろうが、こんなに幸せで、こんなに気持ちいい……。
「やばっ、翔君時間っ!」
智君が俺を跳ね除ける。
「やべっ。」
俺も時計を見て慌てて起き上がる。
「俺、先に洗面所使うから。」
「俺も準備~!」
二人、一緒にソファーから下りる。
着替えて、持ち物チェックして……。
準備のことを考えながら、頭半分は違うことを考える。
やっぱり、もっかい検索してみなくちゃね。
“どっち”と“男同士が付き合ってから”の2つ!
ま、クリフより高い壁を乗り越えた俺達だから、
調べなくてもなんとかなるとは思うけどね!
- 関連記事
-
- Love Rainbow ① - ワイルドアットハートおまけ -
- ワイルドアットハート 30
- ワイルドアットハート 29
スポンサーサイト
総もくじ
a Day in Our Life

総もくじ
Kissからはじめよう

総もくじ
Love so sweet

総もくじ
season

総もくじ
ココロチラリ

総もくじ
ふたりのカタチ

総もくじ
Sunshine(やま)

もくじ
ナイスな心意気(5人)

もくじ
Troublemaker(5人)

もくじ
Crazy Moon(5人)

総もくじ
テ・アゲロ

もくじ
愛と勇気とチェリーパイ(5人)

もくじ
花火(やま)

もくじ
イチオクノホシ(やま)

もくじ
Japonesque(5人)

もくじ
miyabi-night(5人)

もくじ
明日に向かって(やま)

もくじ
ZERO-G

もくじ
Don't stop(いろいろ)

もくじ
イン・ザ・ルーム(やま)

もくじ
復活LOVE(やま)

総もくじ
WONDER-LOVE

もくじ
Your Eyes(やま)

もくじ
Attack it ~ババ嵐~

もくじ
つなぐ(やま)

もくじ
白が舞う

もくじ
夢でいいから(やま)

もくじ
ワイルドアットハート(やま)

もくじ
愛してると言えない(やま)

もくじ
Happiness(やま)

総もくじ
短編

もくじ
智君BD

もくじ
ティータイム

もくじ
ブログ

もくじ
Believe(やま)

もくじ
コスモス(5人)

もくじ
BORDER(やま)

もくじ
夏疾風(やま)

もくじ
STORY
