ワイルドアットハート(やま)
ワイルドアットハート 25
2018.07.19 *Edit
急いで楽屋に戻ると、楽屋にいたのは相葉君一人。
「おはよ。みんなまだ来てないの~?」
相葉君がいつもの笑顔で笑う。
「智君は?まだ?」
「まだじゃない?」
俺の勢いに怪訝そうな相葉君。
「そっか……。」
せっかくついた勢いを、どうしていいかわからず、ドカッと椅子に座る。
早く来い!智君!
すると、はかったようにドアが開く。
「おはよ……。」
入って来たのは智君で。
俺はガッと立ち上がり、ズンズンと智君に歩み寄る。
「智君!」
びっくりして体を引く智君。
その手をぎゅっと握ろうとして避けられる。
「話がある。来て。」
「やだ。」
間髪入れず、答える智君が一歩退く。
逃がさない!
ズンっと前に出る俺。
「どうしても、聞いて欲しいんだ。」
「いやだっ!」
智君が身を翻し、部屋を出る。
「智君っ!」
智君を追って走り出そうとする俺を、相葉君が呼び留める。
「翔ちゃん!始まっちゃうよ!二人もいなかったら……。」
「ごめん、俺……。」
振り返ると、俺を見た相葉君がしょうがないなぁって顔で笑う。
「いいよ、こっちはなんとかする。追い掛けたいんでしょ?」
俺は力強くうなずく。
「あ~あ、相葉さんはほんとお人よし。」
戻って来たニノが、両手を頭の後ろで組んでニヤッと笑う。
「早く行けったら。リーダー見失っちゃうよ?
こっちは俺らでごまかしとくから。」
「ニノ……。」
二人が並んで笑う。
「なんだよ、ニノだってお人よしじゃん。」
「相葉さんのがうつったんでしょ?」
ニノ……相葉君……マジ、でっかい感謝!
「ほんと、ごめんっ!」
小さく頭を下げ、走って部屋を出る。
「早く早く!」
「戻って来たら、1週間分の宅配、翔さんに付けとくから!」
1週間だろうが、1ヶ月だろうがいくらでも付けろ!
心の中で叫んで、エレベーターホールでエレベ―ターを待つ。
ここは6階。
2台あるエレベーターは、3階へ下りるのと、4階へ上るのと。
智君はエレベーターに乗ってる?
どこへ?
外?
階段を使おうか迷って、エレベーターを待つ。
6階のランプが点いて、矢印が下を向く。
開いたエレベーターに勢い込んで飛び乗った。
ドンッと。
誰かにぶつかって、おでこを撫でる。
「痛っ。」
同じくおでこを押さえてるのは松潤。
「え?翔さん?」
「智君は?見なかった?」
「え?ああ、なんか急いで出てったけど。」
「出てったって、どっち?外?」
「うん。」
松潤が不審そうに俺を見る。
「ごめん!」
俺は松潤を押し出し、閉まるボタンを押す。
エレベーターのドアが閉まる。
「え?ちょっと、翔さん?」
「急いでるんだ!話は後で!」
何かに気づいたような松潤が、閉まるドアの間から笑ってるのが見える。
「やっと動いたか!頭いいのにほんとバカなんだから。」
チンとドアが閉まって動き出す。
タコだのバカだの……ほんと、いい奴ら!
焦る気持ちにエレベーターは遅い。
どこにも止まるなと念じながら、1階に着く。
ドアが開いた瞬間、走り出す。
受付の前を抜け、外に向かって走り続ける。
智君は?智君はどこ?
周りを見回しても智君の姿はない。
こうなったら勘が頼り。
絶対智君を見つけ出す!
会って、話を聞いてもらわないことには、何も先に進まない。
タコだバカだと罵ってくれて構わない。
でも!ちゃんと伝えなきゃ。
ううん、伝えたい!
どっちだ?
ええいっ!右だ!
俺は右に向かって走り出す。
俺に気付いた人が振り返る。
「あれ、櫻井翔じゃね?」
「まさか。櫻井なら車でしょ?」
「ロケ?」
「カメラどこ~?」
そんな会話を振り切って、走り続ける。
こめかみを汗が伝う。
心臓がバクバク音を立てる。
足が重い。
側溝に躓いて転びそうになる。
「うわっ……ってってって。」
片足で踏ん張って、なんとか転ぶのは堪えたけど、
靴の底がベロッと剥ける。
「え?あれ?」
走ろうとすると、靴底がパカパカする。
これじゃ走れない!
仕方なく、片足だけ靴を脱ぎ、走り続ける。
櫻井翔が片足靴下で、はぁはぁ言いながら走ってる姿なんて、滑稽だろうけど、
そんなこと気にしてる余裕はない。
とにかく、智君を見つけ出さないと!
信号を待つのももどかしく、走れる方に曲がる。
智君。
智君。
智君、どこ~っ!
二つ目の信号を曲がると、トボトボ歩く猫背が見える。
あれは……間違いない。
智君だ!
「さ、智君っ!」
智君は道の向こう側。
俺らの間を車が行き来する。
「智君っ!」
声に気付いた智君が振り返る。
俺を見つけ、一瞬びっくりして、すぐに走りだそうとする。
「待って!逃げないで!」
智君は困ったように首を傾げ、その場に立ち止まる。
「俺っ!智君のことがっ!」
ブォォォォと車が通り過ぎる。
「え?何?」
「お・れ!さ・と・し・くん・の・こ・と!」
大きな声で叫ぶ。
喉がつぶれちゃうんじゃってくらい、大きな声で。
「え?なん…言っ…の?……君?」
智君の声もとぎれとぎれにしか聞こえない。
俺はガードレールを飛び越え、信号で車が止まったのを見計らって、
道の向こうへ走る。
智君のいる、向こう側。
あっちの道へ。
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