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ワイルドアットハート(やま)

ワイルドアットハート 20

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その後の仕事はほとんど身が入らなくて……、なんとかこなすのが精一杯。

終わった時間も遅くて。

マネージャーに智君の様子を聞いたら、熱は下がったからマネージャーも帰ると言う。

ホッと胸をなで下ろす。

でも、今日はまだうつるかもしれないから、ホテルに行けと強く言われ……。

近くにいても、迷惑掛けちゃうだけだもんな……。

今日はマネージャーの言う通り、ホテルの方がいいのかも……。

大人しく、言われたホテルに行くことに……。

家からそんなに遠くないホテルに着くと、窓からマンションの方に目を向ける。

あのマンションだよな?

あ~、ここからじゃ、反対向いてるから、窓に明かりが点いてるかわからない……。

智君、寝てるかな?

お腹空いて起きてない?

お腹空いたら……松潤のアイスでもいいから、食べてくれたかな。

言われた通り、大人しくホテルに来たけど……。

離れていれば、その分、心配がつきない。

ぐったりしていた智君を思い出す。

カサカサの唇も……。

ちょっとだけ……。

ちょっとだけ様子を見に帰るだけなら……。

そうそう、リップ塗りに帰るだけなら……。

智君愛用のリップは知ってるし。

いつも持ち歩いてるやつ。

それだけなら、ほんの数分。

数分ならうつったりしないよな……?

俺らの仕事は代えがきかない。

風邪を引いただけでたくさんの人に迷惑をかける。

うつらないように慎重に……帰ればよくね?

じっと自分のマンションを見つめる。

じーーっと見ていると、やっぱり智君が心配で……。

ルームキーと家鍵、財布を持って、部屋を飛び出す。

タクシーを捕まえ、ドラッグストアに寄って、マスクとリップを買って……。

マスクは一応予防と変装ね?

自分の家に、泥棒みたいにそっと入る。

夜中だから、少しの音でも響くような気がして……。

リビングには明りは点いてるけど、智君はいない。

寝てるかな?

リップのパッケージを破る。

それを持って智君の部屋へ。

なんか……本当に泥棒みたいじゃね?

それとも寝込みを襲う間男?

違う違う!俺達付き合ってるんだから!

そっとドアを開けると、ベッドヘッドに背中を預けた智君と目が合って。

「あ、さ、智君起きてたの?」

本物の泥棒みたいにドキッとした。

「……翔君?」

智君はスマホを隣に置いて、不思議そうに俺を見る。

「今日はホテルだって……。」

「そ、そうなんだけど……。」

マスクを取って、手に持っていたリップの蓋を開ける。

「昼間、智君の唇が乾燥してるみたいだったから……。」

顎を押さえ、智君の唇に塗ってあげる。

自分で塗るのと違う感触に、智君がンパンパと唇を合わせる。

リップでテカった唇が、ルームライトの小さな明りでもわかる。

「ん~、気持ち悪かったんだ。ありがとう。」

智君がにっこり笑う。

「何してたの?」

「ん?スマホ見てた。釣り情報と……。」

「風邪引いてる時も釣り?」

「こういう情報はかかしたらダメなんだよ。」

「そういうもん?」

「そういうもん。」

二人で笑って見つめ合う。

智君の表情が、朝と違って明るい。

ああ、智君、本当に具合良くなったんだな。

そう思って安心して。

「お腹空いてない?何か食べた?」

「おかゆとプリン食べた。」

マネージャーが用意してくれたのか。

松潤は用意する前って言ってたよな?

「アイスじゃなくて?」

智君がクスッと笑う。

「見たの?冷蔵庫。」

「見た。」

てか、持って来た本人に会った。

とは言わない。

言えないよ。

好みを熟知してる元カレが持って来たなんて!

「あれ、気を利かせたマネージャーが買って来たんだよ。」

え?なんで嘘つくの?

「あんなにたくさん?」

「多すぎだよね。後で言っとく。」

言っとくって松潤に!?

「あんな高級アイス、マネージャーが買って来る?」

「俺が好きだって、誰かに聞いたんだろ?」

知ってる本人が買って来てましたよ!

「その誰かって誰よ?

 智君、あそこのアイスが好きだったんだ。

 言ってくれれば俺が買って来たのに。

 あんなにいっぱい、いったい誰が食べるんだよ!」

捲し立てるように早口で言う。

「俺は智君の好みにも疎い、家事はできない、全然役に立たな……んっ!」

突然!

本当に突然!

俺の頭を抱え込んだ智君に、唇を塞がれた。

リップ塗りたての唇はヌルッとして、ヌメッとしてて……。

思わず目が見開く。

すぐに智君の唇は離れ、言葉にならない言葉が口をつく。

「え?あ、だ、だからっ、あ、え?なんで?」

「うるさいなぁと思って。」

う、うるさい!?

「うつったら、どうすんの!」

「うつすと治るって言うじゃん。」

「智君が治っても俺が風邪引くじゃん!」

「翔君は少し休んだ方がいいんだよ。

 そしたら、俺が看病してあげっから。

 今回のお返しに。」

「俺、看病なんて……。」

「作ってくれたじゃん、おかゆ。

 洗濯も、プリンも。」

「智君……まさか。」

「ん?」

「俺の作ったおかゆ……。」

「食べたよ?芯は残ってなかったから大丈夫。」

智君がふんわり笑う。

「だ、大丈夫じゃないよ。あんなの食べたらお腹壊す!」

「大丈夫だよ~。10年以上前のコーラ飲んでも平気だったんだから。」

え?それと同列?

……まぁ、同列にされてもしょうがないけど!

「プリンは……。」

「さっきも食べた。プリン、翔君が買って来てくれたんでしょ?

 ありがと。おかげで元気になって来た。んふふ。」

笑う智君を見ていたら……。

気付くと智君をギュッと抱きしめてた。

……智君。

俺……。

「ほら、本当にうつるから、ホテル帰んな。

 マネージャーに叱られるぞ。」

「……朝帰れば大丈夫だから。」

「じゃあ……。」

耳元で智君の優しい声がする。

「一緒にプリン食べよっか。

 食べたら帰れよ?じゃないと……本当にうつすぞ?」

智君の息が耳に吹きかかる。

ゾワッとして、慌てて智君から離れる俺。

耳を押さえる俺を見て、智君が楽しそうに笑う。

「あはは。翔君のその顔!」

蒲団を広げベッドから足を下す智君に、身の危険を感じ、ビクッと体を引く。

「ほら、プリン食べよ。」

智君に背中を叩かれ……疑いながらも智君に着いて行く。

キスされるわ、耳に息吹きかけられるわ……。

そういうのは、心の準備が必要なんです!

俺、結構ビビりなんだぞ。

でも……元気そうな智君にホッとした。

とりあえず、プリン食べよっ!










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