FC2ブログ

ワイルドアットハート(やま)

ワイルドアットハート 18

 ←ワイルドアットハート 17 →ワイルドアットハート 19


「ん~、38.5度……完全に風邪だね。」

ベッドで赤い顔して寝てる智君が、俺の手から体温計を取り上げる。

「大丈夫。今日は午後に雑誌の取材だけだから……。」

数字を見て、体温計を枕元に戻す。

「ダメだよ。ひどくなったらどうするの?」

「翔君、仕事だろ?俺はいいから、行って……。」

ダルそうな智君の腕が、ベッド脇に立つ俺の足を押す。

「病人は他の心配しなくていいから。」

俺は急いでキッチンに向かう。

冷蔵庫から取り出したのは冷却ジェルシート。

おふくろが冷蔵庫で冷やしてたから、ウチも保管場所は冷蔵庫の中。

冷たくって気持ちいいんだよね。

それとアイス枕を持って智君の元へ。

「ほら、これ使って。」

智君の頭の下にアイス枕を入れ、おでこにジェルシートを貼る。

「後は……。」

「翔君、もういいから……。」

困ったような顔の智君が、俺の腕を押す。

ほら、手にも力が入ってない。

「いいから、待ってて。」

今日は俺も午後から。

まだ時間はある。

薬、薬……。

薬飲むなら、何か腹に入れないと。

こういう時は……おかゆだよな?

おかゆってどうやって作るんだ?

スマホに“おかゆの作り方”と打って検索。

出て来た通りに材料を用意する。

「へぇ~、これでできるんだ。簡単じゃん。」

米を研ぎ、分量通りの水を入れ、鍋に蓋をして……。

沸騰したら弱火ね?

これで待ってればできるの?

じっと鍋を睨む俺。

そんなにすぐに沸騰したりはしない。

それでもじっと待つ。

でも、時間がもったいない。

「そうだ、この間に薬、薬。」

確か、まだあったはず……。

薬箱の中を探すと、腹痛の薬はあるのに、風邪薬がない。

「病院……連れてった方がいいかな……。」

チラッと智君の部屋を見る。

「でも……嫌がるよな、きっと。」

午後の仕事には行く気だし、今から病院行くのは……。

俺らは顔が知られてるから、普通に病院に行くわけにはいかない。

とりあえず、マネージャーに連絡して……。

薬は……買ってくるか?

急いで近くのドラッグストアに買いに走る。

一番効きそうな薬を選んでもらって、ついでに冷却ジェルも買い足して……。

プリン……食べるかな?

何が好きかわからないから、目に着くプリンをカゴに入れ、レジへ。

買い物を終えて、家に帰って思い出す。

「そうだ!おかゆ!」

キッチンに走ると案の定……。

吹きこぼれた白い液体でドロドロになってて……。

蓋を開けようとして、熱さに手を離す。

「あちっ。」

蓋が床に落ちて大きな音を立てる。

やべっ。智君起きちゃう?

智君の部屋のドアを見たけど、ドアが開く様子はない。

中のおかゆは……できてるわけない。

「これ、また火にかければできる?」

鍋の底をじっと見つめ考えるけど、料理なんてしたことないんだから、わかるわけない。

「とりあえず、火を付けてみるか……。」

鍋を退かし、吹きこぼれたところを拭いて、火にかける。

もちろん今度は布巾を使って鍋を動かす。

床に落ちた蓋を拾って、床を拭いて……。

買って来たものを冷蔵庫にしまいながら考える。

智君……着替え少ないけど大丈夫?

俺の新しいの、用意しとくか?

洗濯も……。

洗面所に走り、洗濯機を回し、智君の様子を見に行く。

ドアをそぉっと開け……。

ベッドの上の智君は熟睡してる。

さっきの音でも起きなかったみたい。

ベッド脇に行き、そっと首筋を触ってみる。

「うわっ、熱っ。」

熱、上がってるかも……。

リビングで智君のマネージャーに連絡し、病院の手配を頼む。

午後の仕事は行くって言ってたけど……。

休めるなら休ませたい。

「なんとか休めないかな?一日寝てればだいぶ違うと思うんだけど。」

「そうですね。どうにか話してみます。櫻井さんもそろそろ家出ますよね?」

「もう少ししたら出るよ。」

「誰か行かせますから、心配しないでください。」

「じゃ、鍵はマネージャーに渡しておくから、受け取って。」

「わかりました。」

「俺も早めに帰るから。」

「いや、櫻井さんにうつったら困るでしょう?」

「大丈夫。部屋は別だし。」

「ホテル取りますから、そっちに帰ってください。いいですね?」

「大丈夫だって。」

「ホテルに帰ってくださいね?」

有無を言わせぬ言い方に、返事をせずに電話を切った。

取りあえず、これで病院には連れてってもらえる。

後は……。

俺がスマホを見つめていると、キッチンから、ザァーっと聞いたことのない音が聞こえる。

慌てて駆け込むと……。

「あちゃ~。」

コンロには、白い泡塗れの鍋が……。

布巾を使って蓋を開けてみる。

端の方は焦げつき、真ん中はブクブクと粟立って、どうみてもまずそうな物体が……。

「ダメだ。これは食べさせられる代物じゃない。」

鍋をシンクに流そうとすると、携帯が鳴る。

智君のマネージャーからで、今日の仕事は延期してもらったとのこと。

仕事が早い。

ホッとする。

「病院も手配しましたから、午後、連れて行きます。

 櫻井さんのホテルも取りましたから……。」

マネージャーはホテルの名前を言って電話を切った。

俺もそろそろ用意しないと……。

その前に……。

水と薬を持って智君の部屋に行く。

寝ている智君の顔を見つめると、こめかみに汗が浮かんでる。

着替えさせた方がいいのかな……?

苦し気に眉間に皺を寄せた智君が、うっすら目を開ける。

「ごめ……起こしちゃった?」

智君が虚ろな目で俺を見る。

「着替えた方がいいんだけど……。」

智君の首が、わずかに横に揺れる。

「じゃ、これ、薬。」

薬と水を枕元の台に置き、智君の上半身を起こさせる。

「食べれるようなら、プリンもあるけど……。」

智君は何も言わず、俺から水と薬を受け取る。

今は食べられないか。

「冷蔵庫にあるから、食べたくなったら食べて。」

智君が微かに笑う。

無理しなくていいのに。

「後でマネージャーが来て、病院に連れてってくれるから。

 午後の仕事は伸ばしてもらった。」

「ごめん……迷惑かけて……。」

「違うよ、智君。言うなら、ありがとう。

 こんな時に一緒にいられてよかったと思ってるんだよ?」

水を飲んだ智君が潤んだ目で俺を見つめる。

「薬飲んだら寝て。寝るのが一番。」

薬を飲み、ベッドに横になる智君を確認して……俺も自分の用意を始めた。

やべっ。

急がないと!

なのに、髭剃り途中で洗濯機が終りを知らせてくるし~。

スマホがチカチカしてたけど、見る余裕なく家を出た。










関連記事
スポンサーサイト



総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
総もくじ  3kaku_s_L.png Sunshine(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Baby Blue(いちご)
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png WONDER-LOVE
総もくじ  3kaku_s_L.png 時計じかけのアンブレラ
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png 夏疾風(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 
【ワイルドアットハート 17】へ  【ワイルドアットハート 19】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【ワイルドアットハート 17】へ
  • 【ワイルドアットハート 19】へ