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ワイルドアットハート(やま)

ワイルドアットハート 6

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今日は別々の仕事だから、俺が先に降ろされる。

「じゃ、翔君、頑張って。」

智君のふんわり笑顔に俺も笑顔で返す。

「智君も。俺の方が帰り遅いと思うから。」

「飯は?」

「適当に食べて帰る。」

「わかった。」

……やっぱり、影があるように感じたのは気のせい?

車の中でも、智君はいつも通りで、特に変わった様子はなかった。

「じゃ。」

車のドアを閉め、黒い窓ガラスに向かって手を振る。

智君は見えないけど、智君からは俺が見えてるはずだから。



俺の仕事は順調に進んだ。

特にトラブルもなく、割と時間通りに次の仕事に向かえた。

最後の仕事が終わったのは9時を過ぎたところ。

思ったより早く終わったし、来週キャンセルした友達誘って飲みに行くか?

来週の水曜日は、結局後輩の舞台を観に行くことにした。

久しぶりだったのと……ちゃんと相葉君に返事しないとと思ったから。

もしかしたら、相葉君も冗談だったのかもしれないし。

さっそく友達にメールしたけど、返信はない。

突然は、やっぱり難しいか。

ま、家に帰れば智君がいるしね。

またまったり二人で飲むのもいいし……。

そう思って、家路を急ぐ。

俺、何急いでんの?

まだ時間は早い。

急ぐ必要なんてないのに。

スーパーに寄って、刺身を買って帰る。

刺身なら智君も好きだし、俺用の貝と智君の好きな蛸と烏賊を買って……。

そうそう、本わさびも忘れずに。

「ただいま~。」

と声を掛け、玄関を入ったけど、家の中は暗くて……。

まだ、智君は帰ってない?

おかしいな。

今日の智君のスケジュールなら、もう帰っててもよさそうなのに。

仕方なく、先にシャワーを浴びて、帰って来るのを待ってみたけど……。

飲んでるうちに帰って来るか?

ビールと肴の準備をして、ソファーに座る。

疲れた体にまずは一杯。

「くはぁ~。旨いね~。」

喉を通るビールは冷たくて、胃に入った瞬間全身に広がる感じはいつもと同じ。

旨い。

確かに旨いのに……。

何か物足りない俺。

テレビをつけて、バラエティ番組にチャンネルを合わせる。

テレビから聞こえてくる楽しそうな笑い声。

でも、その楽しさの中に入っていける気がしない。

「あっはっは、何それ!」

わざと声に出して言ってみる。

ダメだ。

余計に、寂しいような、切ないような気持ちが押し寄せてくる。

どうした、俺?

なんでこんなに気持ちが落ちてる?

手荒くテレビのリモコンを押して、スマホをタップする。

今のトレンドでも調べておくか。

幾つかあるニュースの中に、「嵐」の文字が浮かぶ。

タップしてみると、松本の新しいドラマの話題で、ホッとする。

嫌なニュースはこういう気分の時に見るもんじゃない。

他には……。

画面をスクロールしていく。

すると、ガチャッと玄関の開く音がして、廊下の明りが点く。

智君が帰って来た!

リビングのドアを凝視する。

ドアにはめ込まれたすりガラス越しに、人影が違づいてくる。

ドアが開いて、俺を見た智君が、ビクッと驚いて、目を丸くする。

「なんだ、翔君、帰ってたんだ!」

「お帰り。思ったより早く終わったんだ。」

「朝、電気消し忘れたのかと思った~。」

智君が笑顔でキッチンに入って行く。

「俺もビールもらっていい?今度買っとくから。」

「遠慮せず、飲んで飲んで。」

ビールを持ち上げ、グビッと飲み込む。

う~ん、旨い。

これだよ、これ!

ビールはこうでなくっちゃ。

でも……なんでビールの味が変わった?

さっきよりぬるくなって、本当なら味が落ちてるはずなのに……。

「何、買って来たの?」

気持ちを切り替えようと、智君を見る。

智君が、スーパーの袋から、次々冷蔵庫に何かしまっていく。

「朝ごはんのおかず。翔君に食べさせたくて。」

智君のふんわり笑顔が、背中越しでもわかる。

う~ん、いいね。

俺の為に買い物して、俺の為に朝ごはん……。

え?

なんか、なんか……違くね?

缶ビールを持った智君が俺の隣にやってくる。

「おっ、旨そ。」

智君が肴の刺身を見て、にっこり笑う。

「智君も食べて。一緒に食べようと思って買ってきたんだから。」

「翔君、食べて帰るって言ってたから、俺、食べてきちゃったよ~。」

智君が急いでキッチンから箸と小皿を持ってくる。

もう、どこに何があるかわかってるんだな。

朝ご飯、作ってくれてるもんな……。

「ごめん、メールすればよかったね。」

「いいよ、いいよ。一緒に暮らしてるからって、

 一緒にご飯食べなきゃいけないわけじゃないし。」

チクっと……。

何かが俺の胸に刺さる。

「でも、でもさ、どうせなら、一緒に食べたいじゃん?」

「ん~、そうだけど、別にいいよ。気を遣わなくって。」

智君がビールを開け、グビッと一口飲む。

「お疲れ。」

飲んでから缶を差し出す智君。

普通は逆でしょ?

でも、それが智君っぽい。

「お疲れ~。」

缶を当て、俺もまたビールを飲む。

やっぱり旨い。

誰かがいるってだけで、こんなに違うものなのか?

俺、相当な寂しがりだな……。

「どこで飯食ったの?」

「ああ、前から誘われてたのを、やっと行って来た。

 だから、店、よくわかんない~。」

智君が嬉しそうに蛸を摘まむ。

「おっ、翔君が擦ったの?」

「そ、そうだよ。智君に教えてもらった通り……。」

智君の迎え舌。

目に入ると、離せなくなる。

「で、誰と行ったの?」

「ん~?侑李。でも突然だったから、タイミング悪くて、

 あいつ、明日朝早いって言うから……。」

あ、あいつ……?

あいつなんて、呼べる仲になったの?

いつから?

映画から……?

「だったら、ウチで一人で食べてればよかったのに。

 俺が早く帰れるかもしれないとか、思わなかったの?」

智君が、烏賊にわさびを乗せて、口に放り込む。

「思わなかったね。仕事に厳しい翔君だし、

 遅くなることはあっても早く終わるなんて……。」

「そんなことないよ。俺だって、早く終わらそうと思えば……。」

「自分が思ったって、自分一人の力で終り時間なんて決められないだろ?」

「そうだけど……。」

「遅くなるかもしれなくても……翔君は一人で家で待っててもらいたいの?

 翔君の彼女になる人は大変だ!」

あれ?

智君、イラついてる?

てか、俺も……イライラしてる……?

「そんなことないよ。彼女にそれを無理強いしたことなんかない!」

「へぇ~、彼女には求めないのに、俺には家で待ってろって言うんだ?」

「そんなこと言ってないじゃない!」

「俺は……!」

智君が俺を見上げる。

「俺は……ここで翔君を待つのが嫌だったんだ……。」

嫌……?

どうして……?

なんでそんなこと言うんだよ、智君~っ!










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