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ワイルドアットハート(やま)

ワイルドアットハート 2

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「ま、適当に入って。散らかってるけど。」

「お邪魔しま~す。」

キョロキョロと壁や天井を見回す智君。

「え?兄さん、荷物それだけ?」

「あ、うん。」

智君は手に持った小さめのボストンバックを持ち上げる。

「下着と着替えをちょっと持ってきただけだもん。」

だもんって、兄さん!

可愛く笑いながら、所在無さげにリビングを歩き回る智君に、先に部屋を見せる。

普段は使ってない客間。

家族とか、友達が泊まる時しか使わない。

「ここ、この部屋使って。俺、隣の部屋使ってるから。」

「隣……翔君のベッドルーム?」

「そう。ダイニングはほぼ使えないから、食事はリビングになるけど……。」

ダイニングのテーブルに二人の視線が向かう。

テーブルの半分は資料で埋まってる。

資料の山の中にノートPCが開いてて、その隣にノートやらペンやら。

「んふふ。翔君らしい。」

智君はソファーに座ってクスクス笑う。

「ごめん、急だったから……。」

言い訳と恥ずかしさでおでこを掻くと、智君が両手を頭の後ろで組む。

「いいよいいよ。俺も似たようなもん。」

「ほんと?智君は綺麗にしてそう。」

「そうでもないよ。」

ハッと気づいて、俺は冷蔵庫から缶ビールを取り出し、智君に一本渡す。

「取りあえず、乾杯。」

「乾杯?」

「そうだな……智君が俺んちに居候記念。」

「んはは。居候って記念にしていいの?」

「いいのいいの。ほら。」

俺がプシュッと缶を開けると、智君もプルタブを引っ張る。

「しばらく、よろしくお願いします。」

智君が、身を乗り出して俺に缶を近づける。

俺も智君の隣に座って、缶を当てる。

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

ゴクゴクとビールを流し込み、目の前の智君を視線だけで見る。

智君がいる。

俺の家に。

俺んちのリビングのソファーに座ってる。

なんだか不思議な光景を見てるみたいで、ゴクッと飲んだビールが喉に詰まった。

「ん、んふっ、ごほっ。」

むせる俺にびっくりした智君が、当たりを見回し、ティッシュを数枚取って俺に差し出す。

「何、慌てて飲んでんの。」

「ん、んふっ、ごめっ。」

「いいから、しゃべんな。」

智君がティッシュで俺の口周りを拭く。

なんか、子供みたいじゃね?

36のいいおっさんが!

「だ、大丈夫。」

智君からティッシュを奪うと、一瞬手を握る形になって、心臓が止まる。

え?ばか。何ドキッとしてんの?

男同士だぞ?

メンバーだぞ?

智君だぞ?

これも全部、相葉君のせいだかんな!

「なんて顔してんの、翔君!」

智君が、俺の顔を見て、ゲラゲラ笑う。

え?俺、どんな顔してる?

缶を持ってない手で、頬を触ると、ゲラゲラがクスクス変わった智君が、俺の頭を撫でる。

「吹き出すくらいなんでもないだろ?

 そんなカジキが船にぶつかったみたいな顔して。」

え?智君、その例え、よくわかんないんですけど。

「まぁ、いいよ。居候、よろしくね。」

智君が、ニコッと笑って、また心臓が止まって。

動かす為に、ゴクゴクとビールを流し込んだら、まだ一本も飲んでないのに、クラッときた。

すきっ腹だったからかな?

今日は早めに寝よ。

「あ、先に飲んじゃったけど、さっぱりしたいでしょ?

 シャワー浴びてきたら?」

「シャワー?」

智君がおもしろそうに笑う。

「なんか、同棲始めたカップルの会話みたいじゃね?」

俺はまた、ブホッとビールを吹いた。



遠くで微かに聞こえるのは、まな板の音?

ああ、いいね。

朝、トントントンってまな板の音がして、味噌汁の匂いがプ~ンとして……。

まだ覚醒中の意識の中、鼻だけがピクピク匂いを手繰る。

もぞもぞと蒲団の中で体を丸め、もうそろそろ起きないとと、脳からの指令に薄目を開ける。

カーテンから漏れる陽で、部屋がうっすら明るい。

もう朝だ。

トントントンとまな板の音がはっきりして、パチッと目が覚める。

まな板の音?

誰?

慌てて、置きだして、キッチンに向かう。

キッチンに立っていたのは、Tシャツ短パン姿の智君で……。

「あ、起きた?おはよ。」

まな板から鍋に葱を入れながら、ニコッと笑う。

「え?あ、おはよ……。」

ササッと最後まで払って、まな板を戻す智君の手際はいい。

回らぬ頭で、ぼぉっと考える。

智君が、俺んちで朝ごはん作ってる……?

「朝、味噌汁飲むといいぞぉ。」

鍋をお玉で掻きまわしながら智君が微笑む。

「え、毎日作ってんの?」

「毎日じゃないよ。でも、作れる時は作ってるかな。」

食器棚から、小さなお皿を出して、味噌汁をちょっと注ぐ。

「ほれ、味見。熱いから気を付けて。」

俺に差し出された皿からは湯気が立ってる。

両手で受け取って、そっと口に含むと……。

お出汁の香りと、ほどよい塩分が、体中に染みわたるようで……。

「んんっ、んまいっ!」

「だろ?」

当然だろと言うように、智君が笑って鍋の火を止める。

「朝飯にしよ。ご飯も炊けてる。」

智君が手早くご飯をよそっていく。

その光景を見ながら、俺は思う。

朝起きて、温かいご飯で迎えてくれる人がいる……。

笑顔と思いやりの添えられた朝ごはん。

二日酔いの胃を優しく包む味噌汁。

これが幸せって言うのかな?

智君との同居、最高じゃね?










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