「Sunshine(やま)」
Sunshine(やま)【 ~20】
Sunshine ② -ふたりのカタチ side story -
2018.04.26 *Edit
今日はショウ君と一緒に買い物。
買い物と言っても、近くのスーパー。
重い食材を買う時とか、ショウ君と一緒の方が便利。
車で行けるし、車で行けない所でも、一人で行くより買えるし。
ほら、お米とか、ビールとか。
でも今日は、お散歩がてらの買い物だから歩き。
庭のバジルが大きくなってきたから、
それで明太子パスタが食べたいんだって。
明太子の和風パスタ。
美味しいよね。
ショウ君、バジルも苦手だったんだけど、最近食べれるようになったんだ。
庭のハーブのおかげかな?
じゃ、今度はパクチーも植えてみようかな?
パクチーって、庭で栽培できるのかなぁ……?
う~ん、陽ざしも温かいし、空気は爽やかだし、今日は絶好の散歩日和!
そんなことを考えながら、おいらが太陽を見上げて伸びをすると、
ショウ君がクスッと笑う。
「サトシも家にばっかいないでたまには散歩くらいしないと。
運動不足になっちゃうよ?」
それは痛感してる。
打ち合わせとかないと、家から出ない生活だから。
ジョギングくらいした方がいいのかなって。
でも、走るのあんまり好きじゃないし……。
「犬でも飼う?そしたら毎日散歩……。」
「犬?犬はダメ!」
犬なんか飼ったら、虎次郎が来なくなっちゃう。
思わず言った言葉にショウ君が不審そうな顔をする。
「サトシ、犬好きだよねぇ?マサキのとこのショウはものすごく可愛がってた。」
ドキッとする。
「そ、そりゃ、ショウ君と同じ名前だもん。」
笑ってごまかそうとしてみたけど……。
ショウ君の眉間にはさらに深いタテジワ。
おいらはショウ君の手を握る。
「ショウ君達が来た時、大変だったでしょ?
もう少し、二人の時間を満喫したい……。」
ショウ君を見上げて、体を寄り添わせる。
「ショウ君は違う?」
「いや、俺だって……。」
不審そうだったショウ君の頬が緩み、上がっていた目尻が下がる。
「ね?もうちょっと、二人だけの時間を楽しもう?」
「う、うん、そうだな。」
ショウ君の顔が近づいてくる。
あ、ダメ。
ここは外。
家じゃないんだから。
おいらが誘ったみたいになってるけど……。
ショウ君の頬を押し上げ、ふと見た塀の上に……え?虎次郎?
虎次郎がチェシャ猫のように尻尾を垂らして、こっちを見てる。
どうやってあの巨漢であそこに乗ったんだろ?
ほとんど体が塀からはみ出てる。
あれでバランスとれるんだから、すごい!虎次郎!
虎次郎は欠伸をしながら、のっそのっそと塀の上を歩きだす。
じっと見ていたおいらに気付いて、ショウ君も虎次郎を見つめる。
「すげぇな。」
ショウ君も感嘆の声を上げ、虎次郎の後ろ姿に釘づけになってる。
「よく落ちないな?」
虎次郎がゆっくりこっちを見る。
おいらに気付いた?
「ニャア~。」
虎次郎は低く鳴いておいらにご挨拶?
「こんにちは。どこ行くの?」
虎次郎は目を細め、ニッと笑ってショウ君を見、スタスタと歩き出す。
着いて来なって言ってる?
おいらとショウ君は顔を見合わせ、塀の上の虎次郎に着いて行く。
虎次郎は塀づたいに角を曲がって、塀の終りで道に飛び下りる。
大きな体なのに軽やかに降り立つ虎次郎。
……カッコいい。
なんで重さがないんだろ?
あんなに大きいのに!
膝かな?
体の柔軟性?
尻尾を揺らしながら歩く虎次郎は、すっごく頼もしく見えて……。
やばっ。
おいら惚れ直しちゃいそう。
ショウ君がギュッとおいらの手を握る。
「今、あの猫に惚れちゃったでしょ?」
ショウ君の目が不審そうに細くなる。
「え?あ……。」
なんでわかったんだろ?
ショウ君て超能力者?
「でも、カッコよくない?あんなに大きな体なのに、
シュタッて飛び降りるんだよ?
おいら達だったら、3階から飛び降りるくらいの高さで!」
「そりゃ、カッコよかったけど……。」
面白くなさそうに口を尖らせるショウ君が可愛い。
おいらはその唇の先をチョンと突っつく。
「そんな顔しなくても、相手は猫だよ?」
「それはわかってるんだけど……、
なぜか俺の中の危険信号がピコンピコンいってる。」
危険信号って!
やっぱりショウ君に虎次郎の話はできないなって思った時、
虎次郎が小さな公園に入って行く。
「……公園?」
「こんなとこにあったんだね……。」
ショウ君も知らなかったのか、周りを見回してる。
住宅街の中にポツンと造られた公園。
ブランコと小さな遊具が三つくらい。
鉄棒もある。
後は、時計の柱と水飲み場。
それだけの小さな公園。
親子連れが二組、遊具で遊んでる。
虎次郎は人に臆することなく、のっしのっしと歩く。
満開の頃はみんなを楽しませたに違いない桜……もう葉桜だけど。
虎次郎はその根元を縫って、コブシの下で立ち止まる。
虎次郎の視線の先には……。
え?子猫?
小さな黒い猫が、おいらとショウ君を見て、ミャア~と鳴いた。
マー君とこのサトシ君よりもずっと小さい。
「ショウ君……。」
ショウ君も戸惑った表情で、うんとうなずく。
また子猫がミャアと鳴く。
おいら達は顔を見合わせ、虎次郎を見る。
虎次郎は大きな欠伸をし、のっそのっそとどこかに戻って行く。
おいら達にこの子猫を助けろって言いたいの?
虎次郎の大きなお尻に声を掛けたかったけど、子猫の鳴き声に振り返る。
子猫は大きな耳をピンと立て、頼りなさげにちょこんと座る。
その姿が可愛らしい。
思わず子猫の前にしゃがみ込む。
大きな瞳が潤んで見える。
不安そう。
「ショウ君……。」
ショウ君を見上げると、ショウ君もおいらの隣にしゃがみ込む。
「どうしよう……?」
「そうだね……。」
おいらとショウ君は子猫を見つめて途方に暮れる。
子猫が動く度、首の赤い鈴がチリンと鳴った。
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