「短編」
短編(いろいろ)

wanna be… 下-2

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音のする方を見ると、角を曲がってきたトラックの前を、猫が走り抜けるところで……。

え?と思う間もなく、トラックがこっちに向かって突っ込んでくる。

あ、まずいパンがつぶれちゃう。

トラックにひかれたら、つぶれるのはパンだけじゃないのに、

なぜかそんなことを思って動けなくなった。

トラックがスローモーションで近づいてくる。

今ならまだ間に合う!

逃げろ!

頭の中でそう叫んでるのに、足がすくんで動けない。

あ、ああ~~~っ!

ひかれるっ!!!

思いっきり目をつぶり、パンだけでも助けようと両手を上げる。

ドンッと大きな音と、激しい痛みが背中を走る。

「う、ううっ……。」

しばらく息ができないほどの痛み。

痛い……。

でも、痛いってことは生きてる……。

そして、重っ……。

そっと目を開けると、おいらに覆いかぶさっているのはトラックじゃなく、

営業の男の人で……。

え?あれ?

男の人はゆっくり体を起こすと、確認するようにおいらを見る。

「だ、大丈夫ですか?」

青ざめたその顔には、さっきまでとは違う、するどさが備わってる。

ドクンと心臓が鳴る。

ああ、大丈夫だ。おいら生きてる。

ドクドクドクドク。

心臓がこんなに鳴ってんだから、死んでるわけない。

おいらは小さく頷いて、袋を持ったまま手を着いて起き上がる。

「とりあえず、救急車呼びます。」

おいら、もしかして……助けてもらった?

この人に……?

名前……なんだっけ……?

名刺もらったのに……。

救急車を呼び終えた男の人が、また電話を掛ける。

「もしもし?櫻井だけど……。」

さくら…い……さん?

櫻井さんの横顔が逆光でシルエットになる。

あれ……おいら、櫻井さんに会ったこと……ある?



目の前にはいく筋もの道。

でも、途中から崩れてる道ばかりだ。

真っ黒いフードを被った男が、おいらに問う。

「どう?そろそろ最後にしたら?」

おいらが答える。

「……まだだ。まだわかんない。」

男がクスクス笑う。

「だから言ってるじゃない。何を選んでも……。」

「いいから!」

男の言葉を途中で遮る。

「……いいよ。何も言わなくて。

 おいらの道はおいらが選ぶ。でないと……。」

「でないと?」

「何かのせいにして、仕方ないって生きるのは嫌なんだ。

 翔君の……せいにするのはもっと嫌だ。

 だから、翔君に出会わない道を……。

 出会わなければ、翔君のせいにしなくて済む。

 翔君を好きにならなくて済む。

 翔君に……迷惑かけなくて済む……。」

黒いフードの中で、男がふふっと笑う。

「なら歩んでごらん。あなたが選んだ道を。

 でもね?何を選んでも、何になっても、変わらぬものもある。」

「変わらぬもの……?」

「そう……変わらないもの。」

真っ黒い男が、フードの下からサッと腕を上げ、パチンと指を鳴らす。

すると、いく筋もの道が、ガラガラと崩れ出す。

「あっ……。」

また、目の前には一本の道。

「いくらでも選び直せばいい。何を選ぼうと、どんな道を歩もうと、

 行きつく先は……同じだ。人はそれを運命と呼ぶ。」

真っ黒い翔君がそう告げて、消える。

おいらはまた一歩を踏み出す。

道の先……。

その遥か彼方は……同じ?



目を開けるとふんわり優しい顔でおいらを見てる翔君。

「お目ざめですか?」

万年筆を指に挟んで、人差し指でおいらの頬を突っつく。

いつの間にか寝てたんだ……。

ソファーの上で丸くなるおいらに、ブランケットがかけてある。

ローテーブルで何か書いてる翔君の瞳は澄んでキラキラで。

思わず見入っちゃうと、翔君がさらに笑う。

「そんなに見られたら、穴が開いちゃう。」

「そ、そんなに見てねーし。」

「そう?」

翔君が、サラサラと何か書き始め、おいらは遠慮なく、翔君の顔を堪能する。

カーテンを揺らして、柔らかい穏やかな風が吹く。

その風は翔君の髪を撫で、前髪が微かに動く。

「なんか……怖い夢見た……。」

「怖い?どんな?」

翔君は万年筆を動かしながら、耳だけおいらに傾ける。

「目の前に道があって……それを選ぶんだけど、どれを選んでも失敗で。」

「失敗?」

「そう。命の危険にあったり、怖い思いしたり。」

「ふふふ。それは災難。」

「あ、これはダメだ。あ、これもダメだって、次々選んで……。

 それでもダメで、黒い人が言うんだよ。」

「黒い人?」

「うん。翔君にそっくりな黒い人。」

「智君の夢に出演できるなんて嬉しいね。」

翔君がちょっとだけ視線を上げる。

「何になっても……運命は変わらないって。」

翔君は万年筆を置いて、う~んと伸びをする。

「そうだね。」

頭の上で手を組んで、思いっきり体を伸ばす翔君の瞳はおいらを見つめる。

「智君が何になっても……、画家になっても、ダンサーになっても、

 それこそアイドルになっても……俺と智君は出会って恋をする。

 それがきっと運命ってことなんだね?」

翔君の指がおいらの頬を撫でる。

優しい指に頬を預け、また目をつぶる。

翔君のいない人生……。

選びたかったけど、選べなかった。

夢でも現実でも。

何になろうと、どこへ行こうと……。

それがおいらの運命。

それが、なりたいおいらの未来……。










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