愛と勇気とチェリーパイ(5人)

愛と勇気とチェリーパイ #20 下

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「キッチンから包丁とまな板持って来て……。」

包丁?

まな板???

「魚を三枚に下す練習……朝方までさせられた~!」

ええ~っ!

「ぐふふふふっ!」

アイバ君の笑い声が店中に木霊する。

ショウ君が大きな口を開けて、欠伸を噛み殺す。

「まだ眠い……。」

ショウ君の目尻に涙が溜まってて、本当に眠そう……。

「なんでまた?」

「二級小型船舶取ったんだって。」

アイバ君がまだ笑いながら、サイフォンを掻き混ぜる。

「小型……船舶?」

あたしが首を傾げると、ニノちゃんが後ろから顔を出す。

「そそ。釣りに行くのにね?」

釣り?

で、ショウ君の特訓……?

「おめでとう!ショウさん、店長に選ばれたんだよ!」

ショウ君が、わかってるって顔で嬉しそうに笑う。

あ、そういうこと?

店長、ショウ君と一緒に釣りに行きたい?

「私は船は無理ですからね~。」

「ニノちゃん、無理なの?」

「そう、酔っちゃう。」

「俺も取り直そっかな。」

「え?アイバ君、持ってるの?」

アイバ君がサイフォンを見つめながら、イケメンの顔で笑う。

「昔ね。更新してないから、もうないけど。」

「へぇ~すごい!」

「取り直したら店長と行けるじゃん?店長が具合悪くなっても代わってあげられるし。」

竹べらについたコーヒーを、ヒュンヒュンと切る。

「俺も取る!なんなら一級目指す!」

ショウ君の目がアイバ君に対抗意識剥きだしで……。

なんか笑える。

店長に、釣りのお供に選ばれたんだって自信はないの?

あたしがクスクス笑っていると、奥からMJがやってくる。

「お待たせ。本日のケーキ。」

カウンター越しに、あたしの前にケーキを置く。

「ちょうどよかった。もうすぐコーヒーもできるよ。」

「うん。」

アイバ君がカップの用意を始める。

目の前には……。

チョコレートでコーティングされた丸いケーキ。

上のは白い……ホワイトチョコ?で作られた綺麗なリボン。

少し金粉が散りばめられてて、大人の高級感?な感じ。

この店とはちょっと違う雰囲気。

「このケーキ、今日のお姉さんに合ってるね。」

ニノちゃんがケーキとあたしを交互に見る。

「そう?」

「うん。一段上って感じ。」

ニノちゃんがニコッと笑って行ってしまう。

一段上……。

そう、今日のあたしはいつもより一段上。

あいつに、逃がした魚は大きかったって思わせてやりたい。

もう、俺には手の届かない相手なんだって思わせてやりたい。

あいつがいなくても、あたしが楽しい人生を謳歌してるって教えてやりたい!

だから、いつもより丁寧に化粧して、一段上のあたしになった。

悔しいじゃない?

俺といた時の方が可愛かったなんて思われたら!

「いつものお姉さんも可愛いけどね?」

アイバ君ができないウィンクをしながら、あたしの前にカップを置く。

「ほんと?」

「ほんとほんと。」

そう言うアイバ君の後ろで、MJがアイバ君の腰を抱く。

それ!

それがあたしの一番の活力源!

さっきのニノちゃんとアイバ君のも萌えたけど~。

振り返ると、ショウ君の背中に纏わりつくニノちゃん。

ニノちゃんといるとショウ君、一気に大人の雰囲気になるのよね~。

それがわかっててわざと幼くするニノちゃんもまた……。

ほんと、ここはあたしのパラダイス!

力の源!

これに美味しいコーヒーとケーキがあるのよ?

ここに来る為に仕事しても、しょうがないじゃない?

あたしがコーヒーに口を付けると、カランとドアが鳴る。

入って来たのは店長で……。

「ショウ君、起こしてくれればよかったのに~。」

ふにゃっと笑った店長が、申し訳なさそうに首を撫でる。

あ……二日酔いのせい?

若干色気が……。

「ごめんごめん。でも気持ち良さそうに寝てたから……。」

店長があたしに気付いて隣の席に来る。

「あ、うまそ……。」

あたしのケーキを見て、カウンターの中のMJに目を向ける。

間違いなく、おねだりウルウルお目目。

「わかってるよ。店長のもあるから。」

MJがニヤッと笑って奥へ消える。

「さすがジュン君!大好き~!」

その背に向かって声を掛ける店長が可愛い。

おねだり聞いてもらえてよかったね♪

店長の隣に並んだショウ君が、店長に何か耳打ちする。

カッと頬を染める店長。

なになに?

何話してるのっ!

赤い顔のまま、うつむく店長に、さらにショウ君が何か言う。

「ほらほら、店長いじめないで!」

ニノちゃんが、後ろからショウ君を突き飛ばし、自分が店長の隣に並ぶ。

「ショウちゃんショウちゃん、ちょっと手伝って!」

アイバ君がカウンターの中から手招きする。

隣では店長とニノちゃん、カウンターの中ではアイバ君とショウ君。

この店の日常。

この店の温かさ。

あたしの……萌え!

話してるだけで、ちょっと触れるだけで、あたしに力がみなぎって来る。

よしっ!

このケーキ食べ終わったら行こ!

いざっ!決戦の場へ!!

「お姉さん。」

隣の店長から声を掛けられる。

「リラックスね。」

店長のふにゃっと笑い。

「そうそう。どんなことがあっても、平常心。」

ショウ君が、コーヒーの袋を開けながら、ニコッと笑う。

そうだね。

きっとここのみんなにもいろいろあって……。

それでもここではこんな素敵な空間を作ってくれてる。

それはリラックスして平常心でいるから?

わかってる。

あたしだって、あいつの前に立っても、リラックスして平常心を忘れないから。

だから、お願い!

ケーキを食べ終わるまで、もっとあたしに力をちょうだい!

イチャイチャ……わちゃわちゃでもいい!

手を握って、腰を抱いて、なんなら、チューでも……。

そこまでは高望み?

でも、そしたらあたしは無敵になる!

リラックスして、笑ってここに戻ってくるから!

ケーキを食べ終えるまで……。

ここでの日常を……あたしに堪能させてね。

そう思った時、カウンターの中のショウ君が、チュッと小さくキスを飛ばした。

その先にいるのは……店長?

気づいた店長の顔がまた赤くなって……。

あ、この二人、キスまではいったんだ!

そう思ったら、あたしのテンションが天井まで上がった!










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