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夢でいいから(やま)

夢でいいから ⑬

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「なんで……キス……?」

離れた唇を目で追う。

名残惜し気に見えるか?

すぐに視線を逸らすと、櫻井の唇が俺の頬を甘噛みする。

フワッと来て、ヌルッと食べられた俺の頬。

これは愛撫……なのか?

細くなった櫻井の目には、寂しそうな光が宿ってる。

なんだ?

その顔……?

「キス……したかったから。」

「イケばよかったじゃん。お前はイケただろ?あのまま……。」

櫻井が自嘲気味にクスッと笑う。

「あのままイッたら……あなた、誰とヤッテも変わらないでしょ?」

……どういう意味だ?

「ただ気持ちいいだけで……俺じゃなくてもイッたでしょ?」

え……それはわかんねぇけど……。

「俺がイカせたいから。俺でイカせたいから……わかんない?」

俺はゆっくり首を振る。

櫻井の言ってることは何一つわからない。

第一、なんで俺がここに来ることになったのかも、

全く理解できてねぇんだから、しょうがねぇじゃん?

「まだ……青木に早く来いって思ってる?」

お、思ってるよ!早く来い!青木!

「役目を終えて、早く帰りたいと思ってる?」

思ってるよ。

だ、だってそうだろ?

俺は恋人の振りで、青木が来れば終わるんだから……。

あ、当たり前だろ?

櫻井、男同士で何を……。

「俺は……帰って欲しく……ない……。」

語尾が消えそうなほど小さい。

……ないって、それ……俺にいて欲しいって……こと?

「…………櫻井……。」

「イッたらあなた帰っちゃうんでしょ?」

そうだよ。

お前がイッて、青木が来たら俺は帰る。

フィフティだから。

やってもらったら、やってあげるは俺の流儀だから。

「だから……イカない。俺は絶対イカないよ。」

「櫻井、お前……。」

櫻井が俺を柔らかく抱きしめる。

大事そうに、真綿で包むみたいにフワッと。

「大野、全然気付いてなかったでしょ?」

櫻井の声が耳元で聞こえる。

「入社した頃、俺があなたと話せるチャンスを、躍起になって作ってたこと。」

……入社した頃……?

「無理なお願いも、あなたは仕方ねぇなって、最後はちゃんと受けてくれて……。」

それは……、俺、お前の顔に弱いから。

「仕事は完璧で、でも、なぜか自信なくて。

 上司からも可愛がられてるのに、全然気づかないあなたが不思議で。」

え?俺、上司に可愛がられたことなんかあったっけ?

それを言うなら、お前の方じゃん。

上司からも後輩からも慕われて……。

お前の周りはいっつも華やかで。

「そんなあなたが、俺の気持ちに気付くわけないんだよね。」

……え?

「ずっと……見てた。」

櫻井の腕がギュッと俺を抱きしめる。

「ずっと……。」

ずっとって……櫻井……?

「気付いて欲しくて……気づかれたくなくて……。」

「……櫻井?」

櫻井の顔を見ようと首を動かすと、動けないようにさらにギュッと抱きしめられる。

「……夢でいい。夢でもいいから、大野と一度……そう思って、家に呼んだ。」

え……櫻井、それって……。

青木のことは……嘘?

「一度だけ夢見て、冗談だよって笑って終わろうと思ってた。

 終われるはずだった……。」

はぁ……と、櫻井の吐息が首筋にかかる。

「でも……終わるのは止めた。」

……え?

「終りになんかしない。終りになんかさせない。」

櫻井が顔を上げて俺を見る。

「大野がなんと言おうと……俺、絶対イカないから。」

「櫻井……。」

イカないって……それ、俺をここに縛りつけるって、そういうこと?

「男に二言はないって……言ったよね?」

「ああ……言った。」

「大野の流儀も……。」

「ああ、俺の流儀も。」

櫻井が、ホッとしたように笑う。

なんか……櫻井が可愛く見えて……。

いつもえらそうで、キレて、人の中心で。

なのに、こんな可愛いとこがあるのにびっくりして。

「櫻井……。」

俺は櫻井の頬を撫でて、顔を寄せる。

「キス……させて。」

「大野……。」

「俺からのキス……まだしてねぇよ?俺の流儀に反する!」

櫻井の目がクシャッと細くなる。

俺に向かって唇を出し、それに俺が合わせると、

背中に回った手が俺の後頭部を撫でつける。

甘噛みが深くなって、舌が絡みだす。

それと同時に体も絡みだす。

腕も足も、櫻井を取り込もうと、一つになろうと動き出す。

さっきの櫻井のは……告白。

俺に対する……。

俺は、それに応えなくちゃならない。

「さくら……うっ。」

しゃべろうとして舌を噛む。

「ばかだね。話さなくていいよ。言葉なんて……必要ない。」

櫻井がクスッと笑って、俺をぎゅっと抱きしめる。

「ここにあなたがいる。例え夢でも……それだけで十分だから。」

「櫻井……。」

櫻井はまた俺を確かめるように抱きしめて……。

キスを繰り返す。

キスしながら、櫻井が俺を見る。

魚眼レンズみたいに見えてるはずの俺の顔。

なのに嬉しそうに目尻に皺を寄せて笑う櫻井が……やっぱり可愛くて。

「お前も……ちゃんとイケよ。イカせてやるから。」

「でも……。」

「それでやっとフィフティだろ?」

対等になって、それから……。

俺が片目をつぶると、櫻井がクスッと笑う。

あれ……?

ちょっとオオカミの……顔?

「その前に……大野、もう一回イッてよ。

 そしたら貯金ができる。」

……え?

「フィフティにならなかったら、大野ずっといてくれるってことだよね?

 大野の流儀なら。」

櫻井がニッと笑う。

「大野、後ろでもイキそうだったじゃない?

 素質あるよ。だから……。」

櫻井が、ゴロンと俺を仰向けにし、マウントを取る。

「だから、先にイカせる!」

「えっ?」

櫻井に足を取られ、俺は……。

「わぁ~っ!ちょっと待て!」

「待てない!」

喜々とした櫻井の顔……。

可愛かったはずの櫻井は……やっぱりオオカミ?



「ん~、今週も大丈夫そうだね?」

カレンダーの前で、ボールペンを手に、裸の櫻井が笑う。

「それ、いつまで続けんの?」

「え?待って、数えてるから話しかけないで。」

櫻井は、カレンダーの正の字を数えてく。

「今月は俺が25回で大野が26回。合計492回と499回。」

振り返った櫻井の笑顔に、俺は肩を竦める。

「500回記念は何か特別なことしようか?」

オオカミの顔で櫻井は笑うけど、今の俺にはそれすらも可愛くしか見えない。

櫻井、俺のこと鈍感みたいに言ってたけど……。

お前の方がだいぶ鈍感じゃね?

「ばぁか。お前を先に8回イカせてやるよ。」

「無理無理。大野の方が感じやすいんだから。」

櫻井が楽しそうに笑う。

前よりも柔らかくなった櫻井の笑顔。

フィフティになって、そしたら言ってやろうと思ってるのに。

「絶対追いつけないよ。」

櫻井がニヤッと笑って、ボールペンをカレンダーに引っ掛ける。

知らなかったよ。

櫻井がこんなに鈍いなんて。

櫻井は俺の隣にやって来て、キスをする。

フィフティになって、それから……本当の夢の時間が始まるのに。










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