夢でいいから(やま)

夢でいいから ⑤

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「好きって……気持ちで見てくれるの?」

櫻井の顔が……嬉しそうに、照れ臭そうに笑う。

ば、ばかじゃねぇの?

そんな告白したての中学生みたいな顔、すんじゃねぇよ。

調子狂うだろ。

櫻井は中学生みたいな顔でずっと俺を見続ける。

「お前……。」

「ん……?」

櫻井が小首を傾げる。

うっ……。

なんだろ、小動物……。

リス……うさぎ……、いや、もうちょっと大きい……。

産まれたての小鹿?

フルフル震えた足で立ち上がって、ニコッと笑ったような……。

そんな可憐さが櫻井から漏れてる……。

こんな櫻井、初めて見た!

やば……なんか……可愛いんじゃ…ね……?

「うん、いい顔。」

「えっ?」

櫻井が、ニッと笑う。

小鹿とは別人の、獲物を狙うオオカミの顔で。

「その顔なら、青木も騙されるかな?」

櫻井は面白そうにビールを煽る。

なんだよ、わざとかよ。

くそ食えない男!

俺も一緒になってビールを煽る。

空になったグラスに、すぐにビールを注いでくれる。

ついでに言えば、俺が好んで手を出す砂肝とほうれん草も、

俺の前にずらしてくれる細やかさ。

イケメンは気配りもできんのな?

どーせ、俺は気付かねーよ!

「でね、恋人同士ってわけだから、少しはスキンシップにも

 慣れておいた方がいいと思うんだよね。」

櫻井がビールを飲みながら、穏やかな口調で言う。

ん?

スキンシップ……?

スキンシップって何だ?

手、繋いだり、肩に腕回したり?

男同士で手は繋がねぇよな。

肩くらいは組むか?

そんなんで恋人同士だって思わせられる?

え?……じゃ、まさか……。

俺が櫻井から少し体を引くと、櫻井が笑いながら箸を振る。

「あはは。そんなに警戒しなくても、これはフリなんだから。」

「そ、そりゃわかってるけど……。」

お前が信じられないんだよ!

喉まで出かかって飲み込んだ。

さっきみたいに落ち込まれたらたまんねーし。

横目で櫻井を見ると、櫻井は箸を持つ手で口を抑えながらクスクス笑う。

「な、なんだよ。」

「だって、大野、すっげぇビビってるから。」

「ビビってねーし。」

「ビビってるね。」

「ビビってねぇ!」

クスクス笑っていた櫻井が、片眉を上げて俺を見る。

「じゃ、動かないでよ。ビビッてないんだったら、できるよね?」

「ん、ん~。」

俺が返事を渋ると櫻井が膝立ちになる。

「ほら、動かないで。」

櫻井が膝を使って、ローテーブルを回ってくる。

ふ、ふん!それくらいでビビったりは……。

そう思った時、櫻井の右手が俺の膝に乗る。

うほっ!

さらに左手が俺の肩に乗る。

う、う~っ!マジか?耐えろ、俺!

もぞもぞする腹の奥をグッと我慢。

もぞもぞ?ぞわぞわか?

肩に置いた櫻井の手が、俺の首の後ろに回る。

ま、待てよ。

この体勢って……。

気付けば櫻井の顔はすぐ真ん前。

「えっ?」

「え?じゃないでしょ?スキンシップ。」

櫻井の満面の笑みは俺の視界をかっさらう。

膝に乗っていた手が、今度は俺の顎を上げる。

「近くで見ると……綺麗な唇。」

ま、待て!待ってくれ!

ってか、待たせねぇと!

でも、ビビってるって思われるのも……。

「だ、だろ?よく言われるんだよ。」

ニッと笑ってみせる。

そうだ!強気に出て、櫻井の上位に立て!

「俺より、櫻井のがいい唇なんじゃね?柔らかそうで、プルッとしてて……。」

確かに櫻井の唇は美味しそう。

そこらへんの女より……。

おっと!危ない!

何をトチ狂ったことを!

「そう?じゃ、食べてみる?」

口角の上がった櫻井の顔がさらに近づく。

う、うわぁ~、ま、まずいっ!

「え、え~っと、あ~、ほら、俺ら、今食べてる最中じゃん?

 歯磨きもしないってのは……。」

「大野はキスする前、必ず歯磨きする派?」

う、うおっ!

キ、キス、キスだと~?

言ったな?

言い切ったな?

俺がなんとかその単語から離れようと頑張ってるのに~!!

「で、できれば……。汚いって思われたくないし……。」

櫻井がニコッと笑う。

「今も……そう思ってるってこと?」

「ま、まぁ、そう……、そ、そうだよ。だから、早くどけ!」

櫻井がさらに嬉しそうに笑う。

「ふふふ。俺は気にしないよ。大野の口が汚かろうが、

 それが大野の味だから。」

櫻井の唇が、今まさに俺のに触れようとする。

ま、待て!待つんだ、櫻井!!

「あれ?やっぱりビビってる?」

「ビ、ビビビってねぇよ……。」

「ビビってるでしょ?でなきゃそんなにガン見する?」

「お、俺、キスの時、目、開けてる派なんだよ!」

櫻井がクスッと笑う。

「そうなんだ。相手をしっかり確認する派なんだね。」

櫻井の唇はほとんど開くことなく話す。

「でも……キスしてる時の顔ってブサイクじゃん?

 あんまり見られたくないんだけど……。」

うわっ!

マジだ。

本気だ!

本気でキスする気だ~~~っ!!

どうする?

キスくらい、受け入れる?

いや、だって、相手は男だぞ?

でも、キスまでなら相手が男でも女でも変わんねぇ……かも?

「ビビってる大野、可愛いなぁ。」

そう言うと、櫻井の唇が一気に俺のに重なった。










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