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夢でいいから(やま)

夢でいいから ④

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「どうしたの?右足と右手が同時に出てるよ?」

「え?」

自分の体を見下すと、右手と右足が前に出てて……。

ばかっ。何緊張してんだよ!

「い、いやぁ、別に?」

ごまかすように両手を後頭部で組み、口笛を吹いてみる。

櫻井が俺の顔……口笛をじっと見てる。

なに?もしかして、口笛吹けねぇの?

ちょっと嬉しくなって、さらに口笛を吹き続ける。

「……もう止めたら?ビール飲めないよ?」

おっと、そうだった!

「てか、人前で簡単に口笛吹いちゃダメだよ。」

櫻井が、俺の前に皿と箸を置く。

「なんで?」

櫻井の用意した500mlの缶ビールを手にし、

プルタブをグッと引き、プシュッと音をさせる。

「……あんまり良く思わない人もいるでしょ?下品だって。」

「そうかぁ?俺、すっげぇ上手い口笛聞いたら、尊敬するけど?」

缶ビールを俺と櫻井のグラスに注ぐ。

「尊敬ならいいけどね……。」

ん?なんだ?

櫻井が何を言いたいのかわからない。

片手にグラス、片手に箸を持ち、グラスを櫻井に向ける。

「ま、とりあえず、乾杯!」

俺がグラスを突き出すと、櫻井もカチッと小さく当てる。

「これからよろしくお願いします。」

気持ち頭を下げる櫻井。

「今日で終りかもしれねぇんだろ?……んっ、んめぇ!」

ゴクゴクと喉を流れていくビールは、どこで飲んでも旨い!

例え櫻井んちでも!

「で、これからのことなんだけど。」

櫻井が箸でほうれん草の胡麻和えを摘まむ。

ん?

その箸……。

「……オソロ?」

「あ、これ?」

櫻井が箸を掲げて見せる。

「そうだよ。当たり前じゃん。同棲なんだから。」

櫻井がどうだと言う様に箸を差し出し、俺のと並べる。

赤と青。

柄も長さも同じ箸。

「まさか……。」

「そうだよ。」

櫻井がニヤッと笑う。

「全部オソロ。歯ブラシもマグもパジャマも。」

「パ、パジャマ~?」

「当たり前じゃん。揃えるの結構大変だったんだよ。」

櫻井がグッとビールを煽る。

「男女のオソロと違うからさ。ネットで色違い探しても暗い色ばっかりで……。

 オソロなら一人は明るい色の方がカップルっぽいじゃん?」

「そこまでするか?」

俺もグラスを煽って、砂肝を摘まむ。

「念には念を。こういう細部にまで拘らないとね。絵を描くにしてもデティールが肝心でしょ?」

細部ってか、やりすぎじゃね?

「女はね、こういうとこを見るんだよ。で、男は浮気がバレる。」

櫻井は笑って肉団子をパクリ。

そんなもんかねぇ?

浮気、したこともされたこともねぇから、わかんねぇよ。

「じゃ、今後の作戦なんだけど……。」

櫻井は「シャワー」と言った時と同じ、ニヤッと笑いで俺を見る。

だから、そんな顔で見んなよなっ!

なんだかわかんねぇけど、モゾモゾする!

これはあれか?

蛇に睨まれた蛙?

マングースに見つめられた蛇?

「青木がいつ来るかわからないから……。」

おっ、そうだった!青木さえ来れば俺はお役御免!

早く来い!青木!!

さっさと来て、さっさと俺を家に帰せ!

「早めに……恋人同士の雰囲気……作る練習しないとね?」

櫻井が、ニヤッと笑いの最上級系で俺を見る。

下唇を舐める舌は、まさに獲物を捕獲しようとする肉食獣にしか見えない。

なんだ?

なんでそんなオーラ出す?

「ちょ、ちょっと待て。」

「何?」

「恋人同士のって……。」

「そんなに難しく考えなくていいよ。

 大野は俺のこと好きだ~って顔で見ててくれれば。

 後は俺が上手くやるから。」

「で、できるかそんな顏!」

俺は砂肝を口に放って、ガリッと噛む。

弾力ある砂肝が、口の中でグシャッと崩れる。

「できるできる。ほら、俺の顔じっと見て。」

櫻井がビールを飲んで、口の周りをペロリと舐める。

な、なんなんだよ、その舌!

エロいっちゅーの!

俺は視線を逸らしてビールを煽る。

「ほら、できるじゃない。今、視線逸らす寸前、いい顔してたよ。」

「するか、そんな顏。」

「してたしてた。」

「してねぇ!」

「してたって!」

「うるせぇっ!するか、そんな顏!!」

最後はちょっと大きな声になって、それまで面白がってた櫻井が黙り込んだ。

顔まで伏せてる……。

やべ……。

傷ついたか?

……そりゃそうだよな。あんなに嫌がったら、俺が櫻井嫌いみたいだもんな。

「……櫻井?」

「……ん?」

「これ……このほうれん草、うめぇな。」

「……そうだね。」

「こ、この肉団子も。」

「……ん。」

なんだよ~、調子狂うなぁ。

お前がしょげるとこなんか見たかねぇよ。

「……櫻井。」

「……ん。」

「……こっち、見ろよ。」

「…………。」

「練習……すんだろ?」

櫻井がやっと顔を上げる。

「お前の顔、見れないと練習になんねぇよ?」

まだ落ちぎみの顔で、俺を上目遣いで見る櫻井。

「そんな顔すんなよ。そんな顏じゃ、好きって顔できねぇよ。」

櫻井の頬がピクッとする。










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