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「ふたりのカタチ」
ふたりのカタチ(やま)【201~ 】

ふたりのカタチ (218)

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類さんの道案内で着いたのは、小さな美術館の前。

「ここ……。」

入口を見て、おいらが類さんを見上げると、類さんが小さくうなずく。

そう。

以前、類さんと偶然会った場所。

類さんが一人で考えたい時に来る場所。

近くのパーキングに車を止めたショウ君が戻って来る。

ショウ君を確認してから、類さんがゆっくり中に入って行く。

おいらはショウ君を待って、一緒に中へ。

「ここは……?」

ショウ君がキョロキョロ周りを見ながら、おいらに聞く。

「類さんの秘密の場所。」

「秘密……?」

ショウ君の眉間に皺が寄る。


「うん、前に……偶然会ったことがあるんだ。」

「偶然……?」

怪訝そうに眉が上がる。

「うん。ほんと、偶然……。」

誰もいない受付の前を通り、奥へ入って行くと、背の高い類さんの大きな背中が見える。

「あの時も……類さんはあそこに立ってポスターを見てた……。」

ショウ君も類さんの背中を見つめる。

類さんの視線はあの時と同じ、あの大きなポスターに注がれてる。

おいら達も類さんの後ろに並ぶと……。

「え?類さんの奥さん?」

大きな類さんに隠れた所に、類さんの奥さん、静さんが立っていた。

「こんにちは。」

会釈する顔は明るく笑ってる。

「こんにちは……。」

おいらも翔君も会釈して類さんを見上げる。

照れたように笑う類さんが頭を掻く。

「こいつには……なんでもお見通しらしくって。

 ここのこともなんとなく気付かれてたみたいで……。」

類さんが奥さんを見て恥ずかしそうに笑う。

「ここで、愛する妻と、背中を押してくれた女神の前で宣言すれば、

 俺も、このポスターに近づくまで頑張れるような気がしてね……。」

類さんがポスターを見つめながら噛みしめるように言う。

「類さん……。」

おいらもショウ君もポスターを見上げる。

相変わらず、そのポスターの存在感は大きい。

二十年も前のものとは思えないスマートさ。

良いモノは古くならない。

いつでも新鮮で、人の目を引く。

スタイリッシュなのに茶目っ気もあって、

なんだろう?と立ち止まらせる存在感。

「サトシさん、静、俺はこのポスターを越える物を作りたい。

 それがどんな形になるかわからない。

 けど、そこまで……頑張ってみたいんだ。」

「うん、応援してる。」

おいらが言うと、奥さんも笑ってうなずく。

すると、類さんが奥さんの方に向き直り、両肩に手を掛ける。

「だから、会社も変わる。父の跡も継がない。

 許してくれる?」

類さんのお父さんって、どこかの社長さんって言ってたっけ?

「もちろん。あなたのやりたいことをやりたいようにやって。

 それを見守るのが、私の幸せだから。」

「静……。」

類さんが奥さんを抱きしめる。

「ありがとう……。」

「ばかね。そんなの、結婚した時からわかってたわよ。

 類は自分のやりたいことしかやらないじゃない。」

「ん……そうだけど……。」

「それでどれだけ周りに迷惑かけてると思ってるの?」

奥さんがチラッとおいら達を見る。

それは……類さんじゃなく、おいらが悪かっただけで……。

「もうこれからは……私以外に迷惑を掛けてはダメよ?

 約束して。」

「わかった……。このポスターに追い着くまで、がむしゃらに頑張るから。」

「約束だからね。」

類さんの背中に回った奥さんの手がギュッと類さんの背中を抱きしめる。

「わかってる……約束する。」

「本当ね?」

「本当だよ。」

「信じるからね?」

「信じろって。」

「男に二言はないからね?」

「二言はないって……信用しろよ。」

「……だって、信用できないんだもの。今までの行いを思い出すと。」

奥さんは意地悪そうにクスッと笑う。

「でも、信じるから。ここで、このポスターの前での誓いに嘘偽りはないって。」

類さんは奥さんから手を離し、ポスターを見上げる。

「大丈夫。このポスターに追い着くまでは……。」

類さんの思いのこもった視線は真剣で。

本気の類さんならきっと大丈夫。

いつかきっと、このポスターに追い着けるよ。

そう思った時、ショウ君がおいらの腰に手を回す。

おいらもショウ君に寄り添いながらポスターを見上げる。

おいらもいつか……これ以上のモノが描けたらいいな。

分野は違うかもしれないけど、これくらい、人を惹きつけるモノ……。

「差し詰め、俺らは誓いの立ち会い人?」

ショウ君がいつもの調子で、ちょっと意地悪そうに言う。

「まぁ、そういうことですね?櫻井さんは予定外でしたけど。」

さっきまでの類さんが嘘のように、いつもの類さんで。

「それはそれは。予定外のことにも臨機応変に対処できなければ、

 このポスターに追い着くなんて、夢のまた夢。」

ちょっとムッとした類さんが、言い返す。

「もちろん、そうですよ。俺は、自分の夢の為に一歩踏み出しました。

 二人の女神と女神の番犬の前でね。」

類さんが、爽やかなイケメンスマイルでおいらに笑い掛ける。

ショウ君が、スッとおいらを後ろに隠すと、顎を上げて威嚇する。

「奥さんの気持ちが良く分かりますよ。何を言っても信用できませんからねぇ。

 花沢さんは。番犬に吼えられるのがおちだ。」

「信用は信頼関係で成り立つもの。俺は静とサトシさんが信用してくれればそれで十分。

 うるさい番犬にまで信用されなくて構わないから。」

「ははは。番犬に信用されないような男、女神が信用しますかね?

 ほら、動物は人間の本性を見抜くって言うでしょう?」

二人のやりとりは続き……。

おいらと奥さんは何度も口を挟もうとしたけど、

二人の頭の回転がすっごく早くって、口を挟む間もなくて。

おいらと奥さんは困ったように顔を見合わせ……。

そっとその場を抜け出した。










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