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「時計じかけのアンブレラ」
GreenLight(やま)

Green Light ⑳

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目を開ける。

目の前はぼんやりしていて、全てが真っ白だ。

何か……いい夢を見ていたような気がする。

どんな夢だったんだろう……。

全く思い出せない。

ただ、少し、胸の辺りがふんわり温かい。

今、眠れば、夢の続きが見れるだろうか……?

思考が、次第にはっきりしてくる。

白いのは……天井?

ここは……どこ?

真っ白な視界の中に、黒い何かが顔を出す。

人……?

誰……?

「あ、ドクター?気付かれたんですね!」

マツモト君の声が頭に響く。

「もう少し……小さな声で……。」

おいらはガンガンする頭を押さえて目を細める。

さっきよりピントが合ってくる。

白い……天井と、マツモト君?

「気づきました!すぐ来てください!。」

おいらの声なんて聞こえない様子のマツモト君が、興奮ぎみに誰かに話してる。

頭が痛いから……。

おいらは片手で頭を押さえる。

マツモト君の顔が、徐々にはっきりしてくる。

「ショウは……?」

「ショウは……研究室にいます。」

「研究室……?……何が……あったんだ?」

「何がって……。」

マツモト君の顔が歪む。

「覚えてないんですか?」

「覚えて……?」

あっという間の出来事で……おいらの記憶に残ってるのは、衝撃と女性の悲鳴だけ。

何が起こったかなんてわかるわけがない。

「それはそうですね。あの場では、みんな、何が起こってるかなんてわからなかった。」

マツモト君が、水を持って来て、おいらの口に当てる。

水差しから少し口に水を流し込まれる。

喉を通る水を感じて、初めて、喉が渇いていたことを知る。

「で、何があったの?」

マツモト君はじっとおいらを見、溜め息をついて続ける。

「テロ……と言うべきか……。」

「テロ?」

「ドクターの才能を妬んだ者が……洗脳されていたんです。」

「洗脳……?」

「ドクターも……危惧していたでしょ?

 人間以上の存在……アンドロイドは必要か?って。

 それを恐れる輩が実際いたんです。

 そいつらが反勢力を名乗って……才能のない者にドクターを狙わせたんです。」

最後の言葉を、マツモト君は吐き捨てるように言う。

「じゃ、おいらが狙われて……撃たれた?」

「そうです。前にも忠告しましたよね?

 あれは、ショウだけじゃなく、ドクターのことも言ってたんですよ。

 ここのとこ、嫌がらせのメールや手紙が時々届いてたんで。

 目立つことをすると、必ずそういう輩が出るものです。

 いちいち対応するまでもない。

 でも、まさかのこともあるので、注意はして欲しかったから……。

 本当にあんなことが起こるなんて……。」

おいらはゆっくり目をつぶる。

あの衝撃は撃たれた衝撃だったのか……。

それにしては……体に違和感が少ない……?

「犯人は……?」

「すぐ掴まりました。撃った本人も自分のしたことに愕然としてましたから……。」

マツモト君が忌々しそうに唇を噛む。

「ショウは……?おいらが撃たれて、どうなった?」

取り乱したりはしないだろうが、マスターが突然いなくなるなど、想定外なはずだ。

実際は倒れただけだったが、そんなプログラムは組んでいない。

主をなくしたショウは、どうしたんだろう?

「ショウは……、ドクターを助けるために……。」

「おいらを助けるため……?」

マツモト君は思い出すように、一語一語区切って話す。

「異変に、一番最初に気付いたのは、ショウでした。

 撃たれる寸前、ショウが、ドクターを庇ったんです。」

おいらは目を瞠る。

「じゃ、あの衝撃は……。」

「ショウが、ドクターを抱え込んだ時でしょう。

 ドクターに弾は届いていません。無傷です。

 衝撃の大きさで意識を失ったんじゃないかと医師が言っていました。」

おいらは改めて自分の体を触って見る。

痛いところなど、どこにもない。

「じゃ、まさか……。」

マツモト君が小さくうなずく。

「撃たれたのはショウです。

 ショウの右胸、深さ3センチの所で止まってました。」

右胸には神経回路が埋め込んである。

まさか……。

血の気が引いていく。

動かないショウを想像して、言葉が出てこない。

ショウが……。

「ドクターの回復を待っていました。

 私のできることはしたんですが……これ以上はドクターでないと……。」

マツモト君が小さく首を振る。

「おいらは……どれくらい寝てたの?」

「丸3日です。意識さえ戻れば、命に別状はないと医師も言っていたのですが、

 全然目を覚まさないので心配しました。」

3日……。

軽く腕を動かしてみる。

なんの問題もなく動く。

「心配かけたね。もう大丈夫だ。すぐに退院の手続きを取ってくれ。」

「ドクター……。」

「ショウがおいらを待っている。すぐにいかないと……。」

「はい!」

マツモト君が、笑顔を浮かべて部屋を出て行く。

ショウが……おいらを守って撃たれた。

そうプログラミングしたのはおいらだ。

何があってもマスターを守る。

おいらの作った、おいらの理想通りのショウ。

わかってる。

アンドロイドに感情はない。

感情があると思いたいだけだ。

けれど、全てがプログラミングのせいだとしても、ショウはおいらを守ってくれた。

自分を犠牲にして……。

……絶対おいらが助けてみせる。

ショウを助けられるのはおいらしかいない。

もう、なんでもいい。

ショウに感情があろうとなかろうと、ショウがアンドロイドであろうとなかろうと、

人々にアンドロイドが必要であろうとなかろうと、

ショウという存在が……おいらには必要なんだから。










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