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「時計じかけのアンブレラ」
GreenLight(やま)

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サンドイッチは男の子と一緒に食べた。

ショウにとって、食事をすることの負担は大きい。

体の中に、有機物を入れっぱなしにすることになるからだ。

それを消化する機能は特にない。

そのまま排出するだけだ。

数時間放置すれば……当然腐る。

それでも、おいらの食が細いと思っているショウは、

おいらに食べさせる為に一緒に食事を取ろうとする。

男の子がいたのは好都合だった。

「今日はよく食べましたね。」

ショウが弁当箱を片づけながら言う。

「そうか?外で食べたから、気持ちいいんだよ。

 ショウのサンドイッチも旨かったしね。」

ショウが嬉しそうに笑う。

男の子は犬と一緒に、とうに帰ってしまった。

散歩の途中では、そう長居もできない。

沖に目をやると、いつの間にかさっきの船はいなくなっていた。

夢を乗せた船はどこへ行くのだろう。

おいらの夢は……。

隣のショウを見ると、ショウもこっちを見て笑っている。

「何?おいらの顔に何か付いてる?」

「いいえ。キスしたいなぁと思って。」

「キス?」

ショウの手がおいらの頬に伸びる。

「はい。」

ショウに促されるまま、唇を重ね、すぐに離す。

「言ったよね?口同士のキスは……。」

「恋人のキスでしょ?ちゃんと覚えています。

 でも、今は口にしたかった。」

ショウの手がおいらの髪を撫でつける。

「どうして……?」

おいらが聞くと、ちょっと首を傾げたショウが、おいらの髪から手を離す。

「どうして……なんでしょう?」

ショウは本当にわからないと言うように考え込む。

きっと大した意味はない。

いくらショウの学習能力が高くても、人間の感情まで身に着けることはできない。

ショウはアンドロイドだ。

おいらがこの手で作り上げた……。

今度はおいらが手を伸ばす。

「おいらの……可愛いショウ……。」

唇に唇を重ね、ショウの首に腕を回す。

このご時世、性別を越えた恋愛に異議を唱える者はいない。

増えすぎた人口を抑制する為、政府から推奨されているくらいだ。

だが、アンドロイドとキスする者が、おいら以外にいるだろうか?

いくら人間により近くなっても、アンドロイドは機械だ。

パソコンや洗濯機にキスする者はいないだろう。

そして、機械は感情をもたない。

おいらは込み上げるものを噛みしめ、ショウから唇を離す。

「そろそろ帰ろう。冷えて来た。」

「はい。」

ショウはにっこり笑って立ち上がり、空を眺める。

流れて来た雲が、空の2/3を覆っている。

「降りそうだな。」

「そうですね。」

弁当箱の入った袋を持ち、ショウがおいらの手を引き上げる。

「早めに帰りましょう。サトシが濡れないうちに。」

「お前だって濡れたら困る。防水だとは言え、どこから痛むかわからない。」

「大丈夫ですよ。私は。」

ショウは笑ってレジャーシートを畳んでいく。

「不具合は自分で気づきます。」

「その回路が壊れたら、気付けないだろ?」

おいらも畳むのを手伝う。

「そうですけど……その為に定期点検に行っているんじゃないですか。

 サトシがちゃんとメンテナンスしてくれれば、私はいつまでもサトシの側にいられます。」

「ショウ……。」

なぜか寂しさを感じ、ショウを見ると、ショウがはにかんだように笑う。

「私は……いつまでもサトシの側にいるつもりなんですが……迷惑ですか?」

ちょっと口を尖らせたショウの顔が可愛くて、

おいらは歩きながら、ショウの腰に腕を回す。

「まさか。いつまでも一緒だ。」

ショウは畳んだシートを袋にしまい、おいらの肩に腕を回す。

「よかった。」

おいら達は車に戻り、家路を急いだ。

自動制御の車の中で、おいら達はキスを繰り返した。

キスしては離れ、離れてはキスして……。

そしてその度思い出す。

ショウの冷たい唇が感情をもたないということを……。

車が家に着く少し前、おいらの唇がショウから離れた所で携帯が鳴る。

携帯をタップすると、マツモト君の顔が映し出された。

「どうした?」

おいらは携帯に向かって話す。

「今、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だよ。」

おいらは携帯を目の前のフォルダーに差し、テレビ電話に切り替える。

「A社とD社がドクターに話を聞きたいと言ってきてます。」

「話?」

「はい。ショウのことだと思います。

 ドクターがショウを連れまわしてるから、業界じゃ大注目です。

 相当高性能だと思われてます。」

「ははは。高性能なんだから、しょうがない。」

おいらは携帯に映らないよう、ショウの手を握る。

ショウがおいらに向かって微笑んだのが、見なくてもわかる。

「来週の予定を後で転送してください。

 適当なとこにアポ入れときます。」

「ん、頼んだよ。」

「連れまわすのもほどほどにしておいてくださいね。」

「どうして?」

「企業だけじゃなく、女性達も興味津々なんですから。」

「女性達……?」

「そうですよ。ドクターがショウをあんなイケメンに作るから。

 セレブのレディ達がアクセサリー替わりに欲しがってます。」

「却下だな。ショウをその辺の石コロと一緒にするな。」

「ははは。言うと思いました。でも、そういう需要もあるんですよ。

 覚えておいてください。」

マツモト君の電話は切れ、車は家の駐車場に止まった。










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