FC2ブログ

「時計じかけのアンブレラ」
GreenLight(やま)

Green Light ④

 ←Green Light ③ →Green Light ⑤


ショウの定期点検は問題なく終わった。

特に大きな不具合も見当たらない。

フリーズした原因がわからなかったのが気になったが、

そうちょくちょく固まるわけでもないし、次に止まった時に考えることにして、

おいらはさっさとショウからコードを外していく。

コードだらけのショウは……痛々しくて見ていられない。

おいらのショウが、鎖に繋がれたような気分になる。

「次に固まる時、僕も一緒だといいんですけど……。」

マツモト君はおいらのとこでロボット工学を学んではいるが、

元々は電子工学が専門だ。

おいらでは気付けないことに気付いてくれることも、しばしばある。

「それは難しいんじゃないかな?

 しっかり観察して記録を付けておこう。」

「そうですね。お願いします。できれば写真もお願いします。」

「写真?」

「フリーズ時の状態を確認したいんです。」

「回路の写真ならともかく、見た目だけでわかるかな?」

「わかることもありますよ。表情の歪み方や電源ランプから。

 あ、できれば動画の方がいいんですけど、ドクター……できます?」

マツモト君が心配そうにおいらを見る。

「失礼だな。……できるわけないじゃないか。

 最近の電化製品はよくわからん。」

「そうですよね~。」

わかってましたと言わんばかりの顔で、マツモト君が苦笑いする。

だったら聞かなきゃいいのに。

おいらはショウの耳の裏のスイッチを押す。

微かにモーター音がして、ショウの耳のランプが赤から青に変わる。

ショウが静かに瞼を上げる。

「おはよう、ショウ。よく眠れたかい?」

「おはようございます、マスター・サトシ。」

「他人行儀だね。いつものように、サトシと呼んでくれないの?」

おいらが少し拗ねた表情を浮かべると、ショウが困ったように笑う。

「それは……二人きりの時だけかと思ってました。」

チラッとマツモト君を見る。

「ああ、彼を気にしたのか。大丈夫。いつものようにサトシと呼んでおくれ。」

おいらはショウを立たせ、その腰に手を添える。

「サトシ……おはよう。」

ショウはおいらのこめかみにキスをし、おいらの背中に手を添えて帰りを促す。

「もう、終りですよね?夕飯の準備をしないと。

 何がいいですか?何でも作りますよ。

 サトシは他の人と比べて食べる量が少ないような気がします。」

おいらは促されるまま、ドアに向かって歩を進める。

「そんなことはないよ。動かない分、食べないだけで……。」

2、3歩歩いて振り返り、マツモト君に向かって手を上げる。

マツモト君も軽く会釈してにっこり笑う。

「まるで恋人同士みたいですよ。」

マツモト君がからかうようにそう言って、ファイルをパタンとデスクに置いた。

「そうだろ?友達でマスターで親で恋人だ。

 あらゆる関係性を網羅している。」

おいらも笑い、ショウを見上げる。

ショウはよくわからないのか、首を傾げた。



おいらの就寝時間は夜の10時と決めている。

研究に没頭すると寝ることを忘れてしまうことも多いが、

家にいる時はできるだけ、その時間に寝るようにしている。

すっきりした頭でないと、考えはまとまらない。

夕飯を終え、リビングで本を読んでいると、洗い物を終えたショウが隣にやってくる。

「どうした?」

おいらは本を閉じ、ショウを見上げる。

「ハーブティーを淹れてきました。」

「ハーブティー?」

「リラックス効果があるようです。

 サトシの疲れが、少しでもとれたらと思って。」

ショウがにっこり笑ってローテーブルにカップを置く。

「ああ、それでアロマも……?」

棚の上にそっと置かれた小さな青い陶器。

この家にはショウとおいらしかいないのだから、

ショウが置いたのは一目瞭然なのだが、その良い香りのする陶器は、

なんの為に置かれたのか、おいらにはわからなかった。

「はい。端末で調べました。

 サトシは私と違って疲れます。

 少しでも快適に過ごしてもらいたくて……。」

おいらは閉じた本をカップの隣に置く。

カップを手にすると、ハーブの甘い香りとツンとするミントの香りが鼻をくすぐる。

「ああ、いい香りだね。」

一口口に含み、ショウを見ると、ショウが嬉しそうに笑う。

「それを飲んで、早く休んでください。

 サトシはよく寝てないと機嫌が悪くなるから。」

「ははは。そう?」

「そうです。いつまでも眠そうで……。」

おいらは笑いながら、明日の予定を思い起こす。

明日は特に予定はなかった。

今までのショウの成果をまとめておければと思っていたが、

それも、明日じゃなくてもいい仕事だ。

また一口、ハーブティーを飲み、隣に座るショウを見る。

目を三日月型にして、にっこり笑うショウの顔を見て、気分が変わる。

「明日は一緒に出掛けようか。」

「外出ですか?」

「ああ、海に行こう。」

「海……?」

ショウが怪訝そうに首を傾げる。

「そう。この時期は寒いんだけど、静かで。

 凪いでる海を見るのが好きなんだ。」

「わかりました。用意しておきます。」

おいらはハーブティーを口にし、棚の上の陶器を見つめる。

「サトシ、そろそろ寝室へ。」

ショウが、おいらの手からカップを取り上げる。

「そうだね。そうしようか。」

おいらは立ち上がり、寝室へ向かう。

「ああ、そうだ。今日は充電する日だったね?」

「はい。サトシが寝たら、充電する予定です。」

「ゆっくりお休み。良い夢を。」

思わず漏れた言葉に自分で驚く。

何を馬鹿なことを言ってるのだろう。

アンドロイドが夢など見るわけないのに。










関連記事
スポンサーサイト



 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png Sunshine(やま)
総もくじ 3kaku_s_L.png 五里霧中
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png 時計じかけのアンブレラ
総もくじ 3kaku_s_L.png 大人の童話
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
総もくじ  3kaku_s_L.png Sunshine(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png 時計じかけのアンブレラ
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png Happiness(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png 夏疾風(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png STORY
【Green Light ③】へ  【Green Light ⑤】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【Green Light ③】へ
  • 【Green Light ⑤】へ