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「時計じかけのアンブレラ」
GreenLight(やま)

Green Light ③

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ショウとの生活は、一人で暮らしていた頃と変わらず快適だった。

最初こそ、戸惑いを見せたものの、ショウはあっという間に学んでいく。

寝る時間、起きる時間、スケジュール管理やその準備まで、

完璧に把握し、実行する。

おいらの時間の流れや、快適な過ごし方はもちろん、

おいらの表情を覚え、読み解いていく能力がすごい。

おいらが嬉しいこと、心地いいことが、おいらの小さな表情の変化でショウに伝わる。

逆に、できれば避けたいことも的確に理解できる。

これ以上優秀な秘書がいたら見てみたい。

並々ならぬ学習成果だ。

しかも、3日間寝ずに動いて、5時間の充電で持続する。

すばらしい!

おいらは予想以上の出来に、有頂天になっていた。

どこに行くにもショウを連れて行き、見せびらかした。

ショウの笑顔に魅了されていく人々を見るのが、面白かった。

誰もショウがアンドロイドだとは気づかない。

おいらの新しい助手くらいに思い、何人かの女性から声をかけられるほどだ。

それも、ショウはスマートに対応する。

「連絡先を教えてもらえませんか?」

綺麗な若い娘がショウの腕にそっと手を添える。

それをサラリと払い、にっこり笑う。

「すみません。今は博士の家に居候中なので……。」

有無を言わせぬ目力に、それ以上何も言えない娘を見て、おいらは心の中で笑う。

また、大人しく賢そうな娘がショウを見つめる。

「あの……お食事にお誘いしてもよろしいでしょうか?」

「まだまだ勉強中の身ですから……。」

受け入れる要素を持たない声色に、賢そうな娘の顔色が変わる。

ショウは誰も受け入れない。

おいらだけを見、おいらだけの為に動く。

そう作られているのだから、当たり前なのだが、

当たり前と言う以上においらは喜んでいた。

そして、すぐにショウがアンドロイドだと言うことを伝える。

その時の驚きに満ちた人々の顔!

そりゃそうだ。

タイプだと思った相手がアンドロイドなのだから!

皆、一様に目を瞠(みは)り、不躾なほどショウの顔を覗き込む。

その瞳の輝きも、すべすべの肌も、柔らかそうな口元も、全て造り物だ。

信じられないと首を振り、ショウの肌に触ろうとする。

そこでおいらの手が遮る。

「失礼。もう時間がないようだ。」

にっこり笑ってショウと同時に会釈する。

そう簡単に触らせたりするものか。

おいらは満足していた。

最高の成果!

完璧なおいらのショウ!



「いいですね。表情にグッと広がりが出てます。」

マツモト君がシャッターを切りながら言う。

「ショウのこと?そうだろ?まるで感情まで学習しているみたいだよ。」

おいらは笑いながらショウを見上げる。

「いえいえ、ドクターも、なんだかとても楽しそうです。」

「はっはっは。そりゃそうだ。これほどの成果を得られるとは思っていなかったからね。」

マツモト君は画面で写真を確認しながら、ファイルを取り出す。

「どうですか?バグはなさそうですか?

 バッテリー容量を大きくしたので、充電ケーブルの不具合が心配だったのですが。」

ファイルを右手でペラペラ捲りながら、近づいてくる。

「それは問題なさそうだ。それより、たまに動きが固まることがあるのが気になる。」

「固まる?」

「ああ、この間の学会の親睦会でも固まったよ。」

「私が行けなかった時の、ですね。」

「そうだ。」

おいらはショウを椅子に座らせ、コードを接続していく。

「どんな状況だったんですか?」

「いや、大した場面ではなかったんだが……。」

思い出すように視線を上げ、ショウの肩に手を添え、耳の裏を人差し指で押す。

ショウの耳たぶのランプが青から赤に変わる。

ショウの電源が落ちたのを確認し、ショウの髪を撫でる。

「知り合いの女性がおいらにチケットをくれたんだよ。

 ほら、今度ロングランが決まった話題の……知らない?」

「すみません、そっち方面は全く門外漢で……。」

マツモト君は申し訳なさそうに視線を下げる。

「それは残念……、ま、いいんだけど。

 その時、チケットを受け取ったら止まったんだよ。」

「チケットを受け取っただけですか?」

「ああ、そうだよ。」

「鼻の下を伸ばしてニヤけてたんじゃないですか?」

マツモト君が意地悪そうに笑う。

「そんなことはない。……が、おいらも男だ。女性に興味がないこともない。」

「ほら~。」

マツモト君の顔が楽しそうだ。

「だが、今は女性よりショウに夢中だよ。

 おいらに取って、研究が全てで……。

 だからこうして今だに独身なんじゃないか。」

ちょっと怒り気味にそう言うと、マツモト君がめんどくさそうに頷く。

「冗談ですよ。女性にデレデレしたくらいで、

 アンドロイドが止まるわけないじゃないですか。

 どうしたんでしょうね。何かプログラミングを間違えてるのかな……。

 他に何かなかったんですか?」

「何も……。ただ、その女性が、チケットを渡す時にこう、

 おいらの腕に手を添えた時……。」

おいらは座っているショウの腕に手を添えて見せる。

「その瞬間、ショウの動きがカチッと止まったんだよ。

 ほんの数秒で、たぶん、その女性も気づかなかったと思うけど、

 動き出す時に微かにモーター音がしたから、間違いないと思う。」

「モーター音……それは心配ですね。」

マツモト君は眉間に皺を寄せる。

「そうだろ?」

おいらも眉間に皺を寄せ、ショウをじっと見つめた。










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