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「時計じかけのアンブレラ」
GreenLight(やま)

Green Light ②

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「違う違う。マツモト君、もう一枚パンツはある?」

「はい、全部2着ずつ用意しました。」

マツモト君は、そう言いながら、もう一枚のパンツを差し出す。

おいらはVer.9.2に見せるように、パンツを広げ、片足を突っ込む。

「こうやって履くんだよ。」

両足を入れ、グッと腰まで持ち上げる。

Ver.9.2は、すぐにおいらの真似をしてパンツを履く。

「これでよろしいでしょうか、マスター。」

「ああ、いいね。では他の服も着方を教えようか。」

Ver.9.2は、おいらとマツモト君の様子を見ながら、次々に服を着ていく。

パーカーのジッパーで一瞬躊躇したが、それも見ただけで構造を理解したようだ。

基本的知識はプログラムしたが、

こういった日常的なことは、生活する中で教えていこう。

学習能力も見てみたい。

ジーパンにグレーのパーカー姿のVer.9.2は、自分の姿を確認するように両手を広げ、

私を真っすぐに見つめる。

「これでいいでしょうか?マスター。」

ああ、そうそう、忘れていた……。

「いいよ。だが、おいらのことはマスターではなく、サトシと呼んでくれ。

 おいらは君のマスターであり、友達だ。」

「友達……?」

「そうだ。おいらは君の友達になりたいんだよ。」

Ver.9.2は小首を傾げ、黒曜石の瞳はじっとおいらを見つめ続ける。

「ははは。君の中ではマスターと友達は共生できないのかな?

 まぁいいよ。おいらのことをサトシと呼んでくれれば。」

「サトシ……。」

「そうだ、おいらの名前はサトシだ。」

「……サトシ。」

「なんだい?Ver.9.2……。」

おいらが笑い返すと、Ver.9.2が照れたように視線を逸らす。

「う~む、君にも名前を付けた方がいいな……。」

おいらはVer.9.2を上から下までじっと見て考える。

Ver.9.2はまだ視線を逸らしたままだ。

何か、いい名前はないだろうか?

おいらは研究室を見回して、名前のヒントを探してみる。

こう、呼びやすくて、柔らかく、しなやかな名前……。

ふと、デスクの上の雑誌に目が留まる。

ミュージカルやダンス雑誌だ。

自分で踊ることはほとんどないが、観るのがとても好きなのだ。

軽やかに踊る人々を見ると、なぜか心の底からワクワクしてくる。

その雑誌の表紙の宙を舞うダンサーの写真と、

「宙(そら)を翔ける」と言うキャッチが目に入る。

「ああ、いいね、君の名前はショウだ。」

「ショウ……?」

「そうだよ。空に羽ばたくと言う意味がある。

 君はこれから、世界中に羽ばたいて行くんだから、ちょうどいい。

 名は体を表すと言うからね。」

隣でマツモト君が大きくうなずく。

「ではショウ、記念撮影だ。おいらの隣に並んで。」

マツモト君がカメラを構える。

おいらはショウと並んでニコッと笑う。

ショウは直立不動でカメラを見つめる。

表情はまだ固い。

おいらはクスッと笑う。

いくら表情や行動をプログラミングしても、それをどういう場面でどのように使うかは、

学習させるしかない。

早くショウの自然な笑顔が見てみたい。

ショウを見上げるおいらを、マツモト君がパチリと撮る。

おいらは正面を向いてにっこり笑う。

「ドクター、いい顔です。」

マツモト君が、カメラマンよろしく、パシャリパシャリと撮って行く。

そりゃそうだ。

何にしろ、ここまで、すこぶる順調なのだから。



それから、ショウはおいらと一緒に「生活」するようになった。

朝起きて、歯を磨き、コーヒーを飲んで新聞を読む。

普通の、一般男性が過ごすような生活スタイルを学ぶ為だ。

新聞や辞書替わりに、少し大き目の端末を渡した。

A5サイズくらいの物だが、ショウには大きすぎるか?

おいらと違って、ショウの視力はとてもいい。

1キロ位までなら見通せるだろう。

ちなみに聴力もとてもいい。

人が聴き分けられない周波数をも聴き分ける。

「ショウ、朝食は何がいい?」

「サトシが食べたい物で。」

ショウがにっこり笑う。

おいら好みのイケメンが、顔を崩して笑うのをおいらはとても気に入っている。

「では、目玉焼きと……ヨーグルトにしようか。」

「そうですね。それに作物も入れた方が、栄養バランスがよくなります。」

おいらはショウを見て、顔の前で人差し指を振る。

「ショウ、そこは作物ではなく、“野菜”だ。

 間違いではないが、食べ物の話をしている時には、“野菜”と言うのが一般的だよ。」

「承知しました。」

おいらは眉間に皺を寄せる。

「その返事も固いね。もっとラフな返事も教えなきゃダメかな?」

ショウが困った顔をする。

「んふふ。いいね、ショウの困った顔はおいらの大好物だ。」

「サトシ、その言葉の使い方は……。」

おいらはクスッと笑う。

「いいんだよ。言葉と言うのは常に進化している。

 新しい言葉や造語、使い方は日々変化していくんだ。

 学ぶことは多いね?」

ショウがさらに困った顔でおいらを見つめる。

「だが、おいらのショウに対する気持ちは変わらない。

 なんせ、おいらはショウの産みの親だからね。」

「……サトシは私のマスターで友達で、親?」

おいらはショウの肩に手を掛け、椅子に座らせる。

「ああ、そうだ。おいらはショウのマスターで、友達で、親なんだよ。」

困った顔のままおいらを見上げるショウが可愛くて、思わず頬にキスする。

ショウが不思議そうな顔をして、おいらの触れた頬に手を添える。

「キスだよ。大好きだったり、可愛いと思った時にするんだ。」

「大好き……?

 可愛い……?」

「そうだよ。」

笑って、ショウの隣に腰かける。

「今のは……どっち?」

ショウが首を傾げるのは本当に可愛い。

「両方だよ。大好きで可愛い。」

おいらはもう一度ショウの頬に唇を添える。

大好きで可愛い、おいらのショウ。










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