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「時計じかけのアンブレラ」
GreenLight(やま)

Green Light ①

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「ドクター、青いランプが点きました。そろそろ目覚めます。」

「おおぅ、そうか、どれどれ……。」

おいらは起動ボタンの点滅しているARS-0125プロトタイプVer.9.2に近づいて行く。

Ver.9.2は椅子型の充電器に座らされている。

一度充電すれば、三日は起動できるバッテリーを内蔵していて、

これが、今回のアンドロイドの目玉だ。

今までのアンドロイドは小まめな充電が欠かせない。

マックスで12時間が限度だった。

大量に電力を消費する作業を与えれば、あっという間に電池切れになる。

その上、充電するのに3時間以上かかる。

それゆえ、人が想像する未来型アンドロイドには到底及ばない代物になっていた。

それを大幅に更新するバッテリー容量と、

電力消費を最小限に抑えたエコなアンドロイドは画期的な発明だ。

しかも、充電時間も、5時間しかかからない。

マツモト君がデータをおいらに手渡し、そっとVer.9.2を見つめる。

「今度は成功するといいですね。」

「そうだね。上手く起動してくれればいいが……。」

おいらは手にしたデータに素早く目を通す。

波形の波に問題は見当たらない。

数値も安定している。

今度こそ……。

おいらもVer.9.2を覗き込む。

超軟化セラミックスで作られたボディは、人間と見まごうほどきめ細やかな肌をしている。

皮膚の皺や毛穴まであり、それが本来の機能を果たすことはないが、

外気が30度を超えると汗も出るし、傷つけば血も出るようになっている。

超軟化セラミックスはゴムのような弾力も持ち、皮膚を押せば凹み、離せば元に戻る。

肌質を再現することに限界までチャレンジした。

もちろん、細かな産毛まで植え込んでいる。

研究を始めた段階では、男女の別を考えていなかったので、

男性のような濃い毛は持ち合わせていないが、とてもいい出来だ。

特にいいのが、顔だ。

長い睫毛と大きな瞳、厚く赤い唇はおいら好み。

理想の顔に仕上げた。

知能も体力も運動神経も遥かに人間をしのぐ。

おいらの理想の男性像が、もうすぐ目を開ける。

はずなのだが……。

どうしたことか、全く動く様子がない。

「目を開けませんね。」

マツモト君が心配そうにおいらを見る。

「君はせっかちだね。考えてもごらん。

 生まれたての赤ちゃんのようなもんだ。

 外界に出るのに、多少の準備も必要だろ。違う?」

おいらはVer.9.2の頬に手を添える。

サラッとしていて、仄かに温かさを感じる。

電力は回っている。

目さえ開ければ……。

「さぁ、君の輝く瞳を見せてくれないか?」

ピクッと瞼が動く。

「ドクター!」

マツモト君が、興奮した声で叫ぶ。

おいらはうなずいて、じっとVer.9.2を見つめる。

人種に拘りはなかったが、おいらの祖国、日本に敬意を表し、

黒髪黒い瞳にしてみた。

肌は多少白っぽくしたが、黒はミステリアスでクールだ。

何より賢く勤勉に見える。

きっと万人に受け入れられるに違いない。

おいらとマツモト君が見つめる中、Ver.9.2の瞼がゆっくり開く。

「おおーっ!」

マツモト君が感嘆の声を上げる。

おいらはVer.9.2の瞳を覗き込む。

想像通り、綺麗な黒曜石の瞳だ。

「おはよう、ずいぶんゆっくりしていたね。

 君が起きるのを待ちわびていたよ。」

おいらが声を掛けると、Ver.9.2がキョロキョロと目玉だけを動かす。

そして、最後にマツモト君とおいらを見比べ、おいらで視線を止める。

「あなたが……マスター?」

「ああ、そうだよ。おいらが君のマスターの大野だ。」

Ver.9.2の瞳がキラッと光る。

「マスター認証、完了しました。」

「うん。しっかり認証してくれよ。君はおいら以外の命令を聞いてはいけない。」

「はい。マスター。」

「ドクター、いいですね。しっかり反応してます!」

マツモト君は興奮したまま、Ver.9.2を写真に収める。

おいらはうなずき、Ver.9.2に手を伸ばす。

「さぁ、立ってごらん?」

Ver.9.2がおいらの手を取り、椅子から立ち上がる。

日本人の平均身長を元に作られた体は均整がとれている。

改めてみると恥ずかしくなるくらいだ。

「ドクター、服を着せなくては。」

「そうだね。このままと言うわけにはいかんな。」

Ver.9.2の体を頭の先から順に見て行き、体の中心で止める。

「ここまで精巧に作る必要があったのか?」

おいらは眉間に皺を寄せる。

マツモト君は細部にまで拘った。

本物志向が強いのだろう。

「当然です。どんな役割でもこなせるように、全てを人間になぞらえなくては。」

マツモト君が自信満々に答える。

もしかすると、マツモト君のその拘りがVer.9.2を男性体にしたのかもしれない。

おいら達じゃ、女性体を完全に作り上げるのは難しいだろう。

「では、下着も用意してくれ。服はカジュアルな物と、スーツと両方必要だな。」

「もう、用意してあります。まずは服の着方から教えましょうか。」

マツモト君が、部屋の隅の段ボールから、適当に選別した服を持って来る。

「さ、これを着てごらん。これがパンツだよ。」

おいらはパンツをVer.9.2に渡し、ニコッと笑う。

「パンツ……?」

「そうだ。まず最初に着るものだよ。」

Ver.9.2はパンツをあらゆる角度から観察し、突然両手を突っ込んだ。










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