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「テ・アゲロ」
テ・アゲロ 番外編

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「小春ちゃ~ん!これ、持ってって~。」

エプロンをした相葉が、振り返り、カウンターの上に小皿を重ねて置く。

「はい!」

小春は元気に返事をし、背伸びしてカウンターの小皿に手を伸ばす。

ふと、小皿の隣の大皿に目がいく。

「これも持って行くの?」

煮物の入った、小春の顔より大きな大皿を見つめ、相葉を見上げる。

「ああ、それはいいよ。熱いし重いから。」

相葉が頬に皺を刻み、優しく笑うと、反比例するように小春の頬が膨らんでいく。

「小春、それくらい持てるよ!もう2年生だもん!」

小春に睨まれ、タジタジしながら相葉が言う。

「で、でも、ひっくり返したら怪我とか、やけどとかしちゃうかもしれないし……。」

「大丈夫!それくらい持って行ける!」

小春は小皿を手前に置き、大皿に手を伸ばす。

つま先の一番高い所で背伸びし、大皿に手をかける。

心配そうに見ていた相葉が、大皿に手を伸ばそうとした時、

カラン、と喫茶マイガールのドアが開く。

「よっ。」

顔を出したのは大野だ。

「おっ、小春、お手伝いか?」

大野はそう言って、小春が持とうとしていた大皿を攫う。

「あ、大野さん、それ、小春が持って行く!」

「これか?小春にできんのか?」

大野は笑いながら小春に大皿を渡す。

「できるよ!大野さんは、小皿持ってきて。」

小春は慎重に大皿を両手で持ち、店の一番奥に持って行く。

「あ、あ、小春ちゃん……。」

見えなくなる小春を心配して、相葉が首を伸ばす。

「大丈夫だろ?そんなに重くなかったぞ。」

「で、でも、小春ちゃん小さいし、腕なんか、まだ全然細いし……。」

「はっはっは。相葉ちゃんは親ばかだな?」

「なんて言われてもいいから、ほら、見てきて!」

相葉は水蒸気の噴き出す鍋を気にしながら、大野を手で促す。

「仕方ねぇなぁ。」

大野がめんどくさそうに振り返り、小春の後について行く。

すると、またドアが開く。

「ちわーっす」

彫りの深い顔が、顔だけで店内を見回す。

「あ、いらっしゃい。松本さん、早かったね。」

「うん、もう仕事休みで暇してたから……ふあぁ~。」

松本が大きな欠伸を噛み殺し、片目をつぶると、

腰を低くした大野の背中を見つける。

「何?どうしたの?ゴキブリ?」

松本がカウンターに腰かけ、親指で大野を指さす。

「違う違う。小春ちゃんがお皿を運ぶの、見てくれてるの。」

小春がなんとかテーブルまで皿を運ぶと、自慢げに振り返り、大野を見上げる。

大野もにっこり笑って小春の頭を撫でる。

「よく持てたな。」

「これくらいできるんだって。雅紀君も大野さんも過保護なんだもん。」

「過保護って……そんな言葉、よく知ってるな?」

それくらい、みんな知ってると言わんばかりに顎を上げ、

小春がキョロキョロと大野の両手を見比べる。

「あれ?大野さん、小皿は?」

「あ、忘れた!」

「小春の心配するより、自分の心配してね?大野さん!」

小春が背伸びして大野の肩を叩き、カウンターに戻って行く。

そのおませな仕草に、大野は肩を竦め後に続く。

またドアが開く。

今度は二宮が太郎と一緒に、スーパーのビニール袋を抱えて入って来る。

「お菓子だよ~。」

太郎が元気な声で小春の隣に並ぶ。

「小春ちゃんの好きなチョコも買って来た!」

「ありがとう!あ、ちゃんと小春の好きなイチゴのだ!」

太郎の袋の中を覗いてニコッと笑う。

「さすが太郎君。」

小春の笑顔に、照れ臭そうに太郎が頬を掻く。

「はいはい、太郎君は男の子なんだから、これくらい持てるよね?」

間に入るように相葉が太郎にグラスを渡す。

「雅紀君!小春だって持てるよ!」

「小春ちゃんはいいの。落として割れて顔に傷でも作ったらどうするの!?」

また小春が頬を膨らませる。

コートを脱いだ二宮が、困ったように笑う。

「相葉さん、過保護もほどほどにね?」

「え?俺、過保護?」

「超が付くくらい過保護ですよ。」

「そうかな……。」

「それに気づかないって、相当の……ばか。」

二宮が残りのグラスを持ってテーブルに向かうと、

ドアが開いて冷たい風が吹き込んでくる。

「寒っ。」

「お邪魔するよ。」

姿を現したのは楓だ。

もちろんボディガードもついている。

「お招きいただいたのでね、これは手土産。」

そう言って、ボディガードが発泡スチロールの箱を相葉に手渡す。

「うわっ、なになに?」

キッチンに置くと、すぐに蓋を開ける。

中には大きな鯛と数種の貝が入っている。

「すげぇ。大野さ~ん!」

相葉がすぐさま大野を呼ぶ。

「ん?どした?」

大野がカウンター越しにキッチンを覗き込む。

「うぉっ、すげぇなぁ。」

大野の目がキラキラと輝く。

「何?買って来た?」

大野が楓の方に振り返ると、楓がほっほっほと笑う。

「まさか。魚は朝、西野が釣って来たんだよ。

 貝は帰りに馴染みの仲買に分けてもらったのさ。」

「さすがケチケチ婆さん!」

「当たり前だろ。海に行けば魚はいるんだよ。」

楓は笑いながら奥の席に向かう。

「てか、西野さん、すげぇな。釣りもできんだ?」

「まぁ、少々。」

「でも、釣れるかどうかわかんないだろ?」

「ええ、ですから、帰りに市場に寄ったんですよ。

 今回はこれ一匹しか釣れなかったので。」

「そうだよな?でもすげぇな。婆さんのボディガードは何でもできなきゃダメなんだな。」

感心したように西野を見る大野が、ポツリとつぶやく。

「松本の修行、釣りも入れようかな。」

「え?」

西野が首を傾げるのと同時に、またドアが開く。

「こんにちは。……こんばんはかな?」










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