FC2ブログ

「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the twins (5人)

テ・アゲロ  the twins ⑧ -50-

 ←ふたりのカタチ (196) →ふたりのカタチ (197)

「と言うわけで……。」

居間の座卓に、有岡と藪が並んで座り、向いの菊代と誠を見つめる。

大野がその間の側面に胡坐を掻き、

少し離れた後ろから、二宮と櫻井が四人の様子を見守る。

「つまり、大野さんとは何でもなくて、その……藪さん?」

「はい。藪浩太です。」

藪は丁寧に頭を下げる。

「と、大貴なのね?」

「うん……。母さん、嘘ついてごめん。」

菊代は、ふぅと溜め息をつき、隣の誠を見つめる。

誠は複雑な面持ちで菊代を見返し、菊代は一瞬目を伏せ、顔を上げる。

「まぁ、しょうがないわね。実はゲイって言うのは嘘でしたっていうの、

 ちょっと期待したけど……。」

有岡が申し訳なさそうに下を向く。

「ごめん……。」

誠が訴えるように菊代を見つめる。

「いいわよ。もう、驚くのは大野さんの時に味わってるし。

 好きな気持ちは簡単には変えられないんでしょ?」

「母さん……。」

有岡は真剣な表情で菊代を見つめ、大きくうなずく。

菊代はゆっくり首を振り、藪、有岡、誠を見比べる。

「ほんと、こういうのも遺伝ってあるのかしらね?」

菊代が微かに笑い、大野に同意を求める。

「それだけ魅力的だってことですよ。藪さんが。」

大野がにっこり笑って、視線で藪を示す。

「でも、それならなんで藪さんを連れてこなかったの?

 わざわざ大野さんにお願いしたりして……。」

「それは……。」

有岡がチラッと二宮を見る。

二宮は、言ってしまいなさいと言う様に、顎を前につきだす。

「宏太は……歌手を目指してて、ほとんど働いてなくて……。

 俺、不安だったんだよ。本当に愛されてるのか。

 ただ都合がいいだけなんじゃないかって……。

 そこへ母さんから電話があって、

 誠叔父さんを探すのを大野さん達に手伝ってもらって……。

 こっちに来ることになって、

 少し離れて自分の気持ちを考えてみるのもいいかもと思って……。

 離れてれば、宏太だって俺のこと、少しは考えてくれるだろうし……。

 第一、働いてない宏太を連れて来て、母さんがなんて思うか……それも不安で。

 ただでさえ、男同士なのに……。」

有岡はテーブルの木目を見つめながら、ポツポツと話す。

「大貴……。」

藪が有岡を見つめる。

「ごめん……不安にさせて……。

 でも、俺も自信なくて……大貴に言える言葉が何もなくて……。」

「宏太……。」

二人を見ていた誠が口を開く。

「菊ちゃん……俺からもお願いするよ。

 二人を認めて……藪君をここに置いてやってもらえないかな?」

「誠さん……。」

菊代が誠の方を向く。

「ああ、もしそれがダメなら……俺のとこに置いてやるのを許して欲しい。」

「え?」

菊代の目が見開かれる。

「村長さんにお願いして、村はずれの一軒家に住まわせてもらうことになった。」

「誠さん、ここに住んでくれないの?

 ここは誠さんの育った家だし、実家なんだから……。」

誠はゆっくり部屋の中を見回す。

「ここは、瑠加の思い出が多すぎる……。」

「叔父さん……。」

有岡が切なそうに誠を見つめる。

菊代も昔を思い出すように、天井に沿って視線を動かす。

「そうね……ここにはあの人の思い出がいっぱい……。」

「そう……ここは菊ちゃんと大貴と瑠加の家だから。」

「誠さん……。」

菊代は最後に誠に視線を移す。

誠はにっこり笑って答える。

「なに、毎日ここに来るんだから、一緒に住んでなくても変わらないよ。

 俺の仕事場になるわけだし。」

菊代は小さくうなずいて、有岡と藪を見る。

「二人の気持ちは……変わらないのね?」

有岡と藪は顔を見合わせうなずく。

「大貴も……不安だったんでしょ?もうその不安は拭い去れたの?」

有岡はゆっくり噛みしめるように口を開く。

「全部なくなったって言ったら嘘になるけど……。

 宏太が迎えに来てくれた……。

 その宏太の顔を見て、やっぱり嬉しかったんだ。

 迎えに来てくれるなんて思ってなかったから。

 それが答えだと思う。

 俺、これからも宏太とずっと一緒にいたい。

 ケンカもするだろうし、上手くかみ合わない時もあるだろうけど……、

 宏太と……離れたくない。」

最後にきっぱり言い切る有岡に、菊代が大きくうなずく。

「藪さんも……いいんですね?」

藪も力強くうなずく。

「はい。俺も……大貴さんと……一緒にいたいと思ってます。」

藪を、嬉しそうに見上げる有岡を見て、菊代が息を漏らす。

「わかりました。藪さんはここで、大貴と一緒に神社の仕事を手伝ってもらいます。」

有岡が藪の手を握り締める。

「これから村おこしを始めるって言うし、若い人手は多い方がいいわ。

 ただ、贅沢はできないし、時間があれば、村の手伝いもしてもらいます。

 畑の手伝いや重い物運んだり……楽はできないわよ?いい?」

「はい!」

二人が同時に返事をし、見つめ合って抱き合う。

「よかった、よかった。ここまで来たかいがありましたよ。」

二宮が、大げさに手を叩くと、大野と櫻井も手を叩く。

「さ、これで俺らはけぇるか?」

大野が隣の櫻井に向かって片目をつぶる。

「ゆっくり東京まで連れて帰ってあげますよ?」

櫻井もお返しに片目をつぶって見せる。

「じゃ、帰り賃はタダですね?」

二宮がニッと笑う。

「二人っきりになりたかったら……。」

親指と人差し指で丸を作る。

「帰りの交通費。誰が払ってくれるんです?」

「あ、俺が……。」

藪が財布を出すと千円しか入っていない。

仕方なく、有岡も財布を広げる。

「ダメだ。俺も2千円しかない……。」

二人が顔を見合わせる。

「いいよ、いいよ。ニノもこいつの車に乗って帰ればいいだろ?

 こいつと東京まで二人っきりなんて、ゾッとするね!」

「honey、その演技はイマイチだね。感情が籠り過ぎてて嘘っぽく見えるよ?

 もうちょっとナチュラルに……。」

「ふざけんな。俺は本気だ!」

「ふふふ。honeyの照れ屋さん!そんなとこも可愛いけど、

 たまには本当の本気の言葉も聞きたいな。」

櫻井が隣の大野の肩に腕を回し、もう片方の手で顎を掬う。

「本気の言葉なんかねぇよ。」

「この唇はすぐ嘘をつく。」

櫻井の指が顎の窪みを引っ張る。

引っ張られた下唇が開き、そこへ自分の唇を重ねる。

「んっ!」

嫌がる大野を無理やり抱きしめ、吸い付く。

きゃっと顔を両手で隠した菊代は指の間から覗き、

顔を赤くした誠が顔を背け、有岡と藪はじっと見つめる。

二宮はスックと立ち上がり、二人の後ろに立つと、パシパシと二人の頭を叩く。

「何やってるんですか。家に帰るまでが仕事です。

 プライベートじゃないんだから!」

「なんで俺まで叩くんだよ!俺は何も悪くねぇ!」

大野が怒って二宮にたてつくと、二宮はふふんと鼻を鳴らす。

「何言ってるんですか。あなたのその気持ち良さそうな顔が悪い。

 キスを誘う唇が悪い。押し倒したくなる匂いが……。」

「もう、いいっ!」

大野が両手を組んで、ふんっとそっぽを向く。

そんな大野を見て、二宮と櫻井が顔を見合わせて笑った。










関連記事
スポンサーサイト






 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png Sunshine(やま)
総もくじ 3kaku_s_L.png 五里霧中
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png 時計じかけのアンブレラ
総もくじ 3kaku_s_L.png 大人の童話
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
総もくじ  3kaku_s_L.png Sunshine(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png 時計じかけのアンブレラ
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 白が舞う
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png Happiness(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png 夏疾風(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png STORY
【ふたりのカタチ (196)】へ  【ふたりのカタチ (197)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【ふたりのカタチ (196)】へ
  • 【ふたりのカタチ (197)】へ