果てない空 -22-

「…あんな風にイチャイチャしてるの、見てられない。」

「好きなのは翔君なんだよ？」

「それでも…。他の人に触れて欲しくない。」

「翔君…。」

大野は撫でていた手を止め、翔の頬へ両手を添える。

「翔君は、心と体、どっちが欲しい？」

「…え？」

「どちらかしか手に入らないとしたら、どっちが欲しい？」

「…そんなの……、選べないよ。」

「それでも、どっちか選ばなきゃいけなかったら？」

「……そりゃ…心だよ…。」

大野はにこっと笑って翔を見つめる。

「おいらの心は翔君だけのものだよ。」

「……。」

「翔君だけがおいらの心を満たしてる。」

大野は瞬きもせず、翔を見つめる。

翔はちょっと照れくさそうに下を向く。

「でも、体も欲しいよ？」

「んふふ。スケベ。」

大野は悪戯っ子みたいに笑うと翔の唇に唇を重ねる。

軽く重ねてすぐに離す。

「松潤は満たしてくれるものを探してる…。」

「……。」

「松潤をこのままほっとけない…。」

「…俺だって…。」

大野は笑って翔の額に唇を当てる。

「翔君は…ダメ…。」

「どうして？」

「……すぐ、頭に血が上っちゃうから。」

大野がクスクス笑うと翔も釣られる。

「そんなことないよ。」

「ほんとに？今日だって…。」

「今日は……、大野君が絡まなきゃ平気…。」

「翔君はトニー、頑張って。初めての舞台だもん。」

「…うん。」

大野はにっこり笑うと翔の頬に唇を落とす。

頬から唇へゆっくり移動させると、翔は両手を大野の背中に回す。

唇を付かず離れずで、何度も合わせる。

鼻がぶつかり、クスクス笑う。

大野の唇が翔の下唇を軽く食むと、翔の手は大野の両頬を捕らえ、

二人はより深く唇を合わせていく。

口内を貪るように侵入すると、

気持ちを確かめるように、舌先がすべてを解かしていく。

大野がその舌先で翔の唇を舐めると、翔は大野の体を離す。

「……どうしたの？」

「…これ以上は……ダメ…したくなる…。」

翔は誘うように大野を見る。

「…もうすぐ、撮影…始まるよ。」

「だから、止めた。」

「顔は止めてないよ？」

大野は翔の顎を摘んで笑う。

「そんな顔で止めたって…反則。」

翔は大野の頭を強引に引き寄せ、また唇を重ねる。

「……したく…な…ちゃう……よ…。」

途切れ途切れに大野が訴えても、翔は離してくれない。

「……しょ……く…。」

翔は大野をテーブルの上に押し倒す。

「ちょ……ダ…メ……。」

翔の右手は大野のＴシャツの下の肌をまさぐる。

「…しょ……ダ…メ…。」

大野は必死で翔を押し戻そうとするが、

翔は左手で大野の肩を抑え、大野の耳たぶを甘噛みする。

「…はぁん……ずる…い……。」

翔が大野の胸の蕾を摘むと、大野は腕に力が入らない。

翔の唇はゆっくり首筋を這って行く。

「……んっ……あ…っ…。」

「声……外に漏れるよ…。」

翔が意地悪く笑う。

「翔君…性格悪っ！」

廊下がバタバタと慌しくなった。

「大野さ～ん、翔さ～ん！」

遠くで二宮の呼ぶ声が聞こえる。

「そろそろ行かなきゃ。」

大野が翔を見つめてふにゃりと笑う。

「……ちぇっ、…もうちょっと……。」

翔がおもしろくなさそうに大野を見る。

「んふふ。仕事、仕事！」

大野は勢いよく起き上がり、控え室のドアを開ける。

「翔君、行こ。」

大野が翔に手を差し出す。

翔が大野の手を取ると、二人は控え室を後にした。