FC2ブログ

「テ・アゲロ」
テ・アゲロ the twins (5人)

テ・アゲロ  the twins ⑧ -47-

 ←ふたりのカタチ (193) →ふたりのカタチ (194)


大人の祭りの幕開けも左右対称の踊りからだった。

踊り手は大人に変わり、赤と青の袖はしなやかさが増す。

男女二人ずつ、4人の体が狭い舞台を舞い踊る。

重なり合い、絡まり合い、縺れるような振りは、いったいどこから来たものなのか。

「これ、子供の頃に見たんですよね……。

 神を表す踊りなんですけど……。」

有岡が視線を舞いに向けたまま言う。

「なぜかエロくて……見てて恥ずかしくなったのを思い出します……。」

頬をほんのり染め、懐かしそうに目を細める。

「この舞いも、継承者がいなくなったら見れなくなっちゃうのかな……。」

有岡がポツリと零す。

「だったらお前が踊ればいい。」

大野が有岡に視線を送る。

「お前が戻って神主やりながら、踊りも覚えればいいだろ?」

「俺が……。」

思ってもいなかったことに、有岡が言葉を飲む。

「残したいんだったらな。」

大野が片目をつぶって見せると、櫻井がクスッと笑う。

「どうなの?好きになった男はここに来てくれそうな奴?」

櫻井に聞かれ、有岡は眉間に皺を寄せる。

「……無理……な気がします……。歌手の夢、きっと捨てられない……。」

「それを説得できるだけの魅力がお前にあれば、できんじゃね?」

「魅力……。」

有岡がさらに眉間に皺を寄せる。

「俺に……あると思います?」

上目使いに大野と櫻井を見る有岡に、二人は顔を見合わせ苦笑いする。

「お前にはお前の良さがあんじゃねぇの?」

大野がポンと有岡の頭を叩く。

続いて櫻井も有岡の肩を叩く。

「やるだけやってみれば?

 ゲイだってカミングアウトはできてるんだから、

 相手がちょっと変わったって、大した騒動にはならないよ?」

「そりゃそうかもしれないけど……。」

自信なさげな有岡は、視線を舞いに戻す。

舞いはクライマックスを迎える。

篝火の火がチラつく中、男女が入り乱れて四肢を重ね合わせる。

手や足の影が妖艶で、和楽器の音が臨場感を増す。

「神様はエロティックだね。」

櫻井が顎を撫で、ニヤリと笑う。

腰と腰がいろんな組み合わせで重なり合う。

男と男、女と女、男女の組みはパートナーを変え、絡まり合う。

「神様は、男女の別も、相手も関係ないと言ってるみたいだよ?」

櫻井が、ふふっと笑って、有岡を見る。

「そういう意味もあるんですかねぇ。

 伝承なので、舞いの意味も、村人は大くくりでしか教えてもらってなくて……。」

絡まり合った肢体が、一斉に天を仰ぐ。

エクスタシーの表現か、はたまた神の啓示か。

そこで曲調が変わり、人数が増え、群舞に変わる。

フォークダンスのように相手を次々変え、連なって踊る踊り手たち。

「これは……乱交パーティだね?」

「本当にそうだったみたいです。昔は。」

そう言ってやってきたのは誠と菊代だ。

「この祭りで子作りに励んでたみたいですね。」

誠は櫻井の隣に並んで舞いを見上げる。

「子作り?」

大野が聞き返すと、大野の隣に並んだ菊代が、笑って顔の前で手を振る。

「昔の話ですよ。戦いがあったりすると、男が少なくなるから、

 一夫一婦ってわけにもいかなくて。

 みんなで平等に分け合いましょうってことなんでしょうね……。

 だからって、女はどの時代だって男を独占したいもの。

 好いた人が他の誰かを抱くなんて、考えたくもない。

 女達が争わないよう、祭りの日って決めたのかしらねぇ。

 それも村の存続の為、みんなが生き残る為の知恵だったのかもしれませんね。」

「それはまた……。」

櫻井が困ったように大野を見る。

大野はうなずいて櫻井を見返す。

「じゃ、生贄は?」

「ああ、聞いたんですか?」

誠と菊代は顔を見合わせ、困った顔をする。

「もう、昔の話ですよ。村人が仲良くしてるとこを神様が見ると、

 ヤキモチを焼いて災いが起こるって言い伝えがあって。」

誠が菊代を見る。

「災いが起きないよう、神様に花嫁を捧げたみたいですね。

 昔は日照りや天災が起こると、みんな神様のせいだったから。」

「裸で踊るってのは……。」

大野が聞くと、菊代が笑う。

「他の人を煽る効果も狙ってたのかしらね。

 生贄を捧げた共犯めいた連帯感も、村にとっては必要だったのかも……。

 だから、より一層この村は他の村から孤立していったんでしょうね。」

生き抜く為。

その為の花。

その為の御神酒。

その為の……祭り。

それが人を殺す為の薬を作り出すとは、きっと誰も想像していなかったはず……。

「ささ、お神酒をどうぞ。」

菊代が大野と櫻井にお神酒を渡す。

「昔はもっと濃い目で飲んでたみたいなんですけど、今は飲みやすくなってます。

 酔わないと、やってられない人もいたんでしょうねぇ。」

菊代が笑って、自分のお神酒を口に運ぶ。

「うん。美味しい。」

菊代がポゥっとした顔で大野を見上げる。

「これ飲むと、周りの男がよりかっこよく見えるの。

 不思議ねぇ。」

菊代の目が心なしがトロンとしだし、櫻井が大野を自分に寄せる。

「お~のさぁ~ん。」

グラスを半分ほど空けた有岡が、大野の脇にしなだれかかる。

「ほんと、おーのさん、いい筋肉……。」

有岡の手が、さわさわと大野の二の腕を撫でる。

櫻井がサッと有岡と大野の間に手を入れる。

誠と菊代は飲みながら、舞いに見入っていて気づかない。

「この後は何がある?」

櫻井が睨みを利かせて有岡を見る。

「……一緒に踊って、飲むのかな。

 俺も初めてだからわかんないけど~。」

「じゃ、もういいか?ここにいたら、honeyが危ない。」

そう言って櫻井は大野の腕を掴む。

「な、なんだよ。」

「いいから。」

「大野さん!」

大野が引きづられていくのを、有岡は2、3歩追って、見送る。

舞いはさらに大きく影を揺らし、音を響かせる。

静かな村が激しさを増す祭りの夜。










関連記事
スポンサーサイト






 関連もくじ一覧 ▼ 
総もくじ 3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ 3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ 3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ 3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ 3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ 3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ 3kaku_s_L.png season
総もくじ 3kaku_s_L.png Sunshine(やま)
総もくじ 3kaku_s_L.png 五里霧中
総もくじ 3kaku_s_L.png 夏の名前
総もくじ 3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ 3kaku_s_L.png Deepな冒険
総もくじ 3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ 3kaku_s_L.png 時計じかけのアンブレラ
総もくじ 3kaku_s_L.png 大人の童話
総もくじ 3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
総もくじ  3kaku_s_L.png a Day in Our Life
総もくじ  3kaku_s_L.png Kissからはじめよう
総もくじ  3kaku_s_L.png Step and Go
総もくじ  3kaku_s_L.png 果てない空
総もくじ  3kaku_s_L.png タイムカプセル
総もくじ  3kaku_s_L.png Hello Goodbye
総もくじ  3kaku_s_L.png season
総もくじ  3kaku_s_L.png Sunshine(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 五里霧中
総もくじ  3kaku_s_L.png 夏の名前
もくじ  3kaku_s_L.png Troublemaker(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png Crazy Moon(5人)
総もくじ  3kaku_s_L.png Welcome to our party
総もくじ  3kaku_s_L.png Deepな冒険
もくじ  3kaku_s_L.png 花火(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png miyabi-night(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png ZERO-G
もくじ  3kaku_s_L.png 復活LOVE(やま)
総もくじ  3kaku_s_L.png 三日月
総もくじ  3kaku_s_L.png 時計じかけのアンブレラ
もくじ  3kaku_s_L.png つなぐ(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 白が舞う
総もくじ  3kaku_s_L.png 大人の童話
もくじ  3kaku_s_L.png Happiness(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png 智君BD
もくじ  3kaku_s_L.png ティータイム
もくじ  3kaku_s_L.png ブログ
総もくじ  3kaku_s_L.png みんなと作ったお話
もくじ  3kaku_s_L.png コスモス(5人)
もくじ  3kaku_s_L.png 夏疾風(やま)
もくじ  3kaku_s_L.png STORY
【ふたりのカタチ (193)】へ  【ふたりのカタチ (194)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit
  • 【ふたりのカタチ (193)】へ
  • 【ふたりのカタチ (194)】へ