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手解きはディナーの後で……(やま)

手解きはディナーの後で…… for零治様 番外編 ①

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鮫島社長はパソコンのモニターを見ながら、難しい顔で思案している。

ソファーに座り、前かがみで画面を見つめる。

画面に映っているのは、『愛しい』という文字と意味。

 「形」「文」いと・し 「いとおしい」から

 ①かわいく思うさま。恋しく慕わしい。

 ②かわいそうだ。不憫だ。

鮫島社長は影山から「愛しい」と言われたことがある。

だが、この辞書からすると、「愛しい」は可愛く思うか、恋しく慕わしいか、

可哀そうだのどれかとなる。

「俺は可愛いか?」

鮫島社長は窓に薄っすら映る自分の姿に視線を移す。

ポロシャツの襟を開け、チノパン姿の男が、自分を見ている。

チノパンを引っ張る膝が意外にゴツく見える。

シャツの襟は開け過ぎではないか?

そう思わせる、どこか色気の出て来た自分……。

だが、可愛いとはとても思えない。

鮫島社長は自分のことを可愛いと思ったことは一度もない。

鮫島社長にとっての「可愛い」はメダカであり、きのこである。

自分はどちらにも似ていない。

では、「恋しく慕わしい」はどうか。

「恋しく」を調べてみる。

「離れている人や場所、事物などに強く心を引かれるさま。」とある。

自分と影山は離れてはいない。

ゆえにこれは当てはまらない。

「慕わしい」はどうか。

「心を引かれ、好ましく、または、懐かしく思うさま。」

心を引かれ、好ましい……。

鮫島社長の顔が明るくなる。

懐かしく思うさま……これは違うだろう。

懐かしく思うには、まだ時間が短かすぎる。

鮫島社長は一人、うんうんとうなずく。

つまり、影山の言う「愛しい」は「心引かれ、好ましい」と言うことになる。

鮫島社長は機嫌良く、モニターを消そうとする。

しかし、消そうとする手が止まる。

②の「かわいそうだ」が目に飛び込んできたのだ。

「かわいそう……。」

まさか、これはないよな?

鮫島社長は自問自答する。

かわいそうで不憫だから、影山は自分の近くにいるのだろうか?

女にモテなくて可哀そうだと思ったのか?

「いや、そんなことはないだろう。

 ちゃんと彼女もできたわけだし……。」

何度も見合いを断られ、今度もダメだろうと思われたのかもしれない。

確かに結婚に興味はない。

和田の結婚式を見ても、羨ましくなど思わなかった。

それどころか、ふふんと鼻を鳴らして、

影山を見せびらかしてやりたい気持ちの方が大きかった。

いやいや、お客様にそんなことなどできはしない。

まして、影山とのことは極秘プロジェクトだ。

人に話すわけにはいかない。

だが、影山ほど痒い所に手の届く、できた相手がいるだろうか?

少々言葉尻りに難はあるが、顔も男前、知識教養は申し分ない。

あっちの方も……。

鮫島社長はカッと顔を赤くし、下を向く。

「あれほどの×××はないだろう……。

 加えてテクニックも持久力も……。」

自分の股間に目が行き、ハッと顔を上げる。

「何を昼間っから言っているんだ。」

ブンブンと大きく首を振り、再度モニターに目を向ける。

「だが、本当に不憫だと思われていたら……。」

顎を撫で、パソコンにじっと見入る。

「……いや、そんなことはない……。」

そう言いながら、声はか細い。

鮫島社長は恋愛に関して、全く自信がない。

影山に伝授してもらったテクニックは、ほぼ他の相手に使っていないのだから、

自信のつきようもない。

教えたのも影山で、実践しているのもまた、影山だけなのだ。

これは憂える事態ではないか?

レッスンと言うものは、いくつかのシチュエーションで練習し、

その成果を本番に向けるものではないか。

仕事だってそうだ。

ターゲットを決め、フルスピードで2ヶ月以内に決める。

その為には、綿密な計算と、デメリットを一つ一つ消していく作業が重要だ。

鮫島社長はソファーから立ち上がり、庭に面した窓に向かう。

そうだ。

自分は影山に甘え過ぎているのだ。

影山が満足できているか、それすらもわからないじゃないか。

綿密な計算では、影山に勝てない。

なら、デメリットを一つ一つ消していく。

それだ。

鮫島社長はパチンと指を鳴らす。

では何がデメリットなのだ?

レッスンの成果が身に着いているかどうかもわからない。

それではデメリットを見つけることすらできないではないか。

そこだ!

鮫島社長は、クルッとターンして窓に向かう。

レッスンの成果もわからないのに、いつでも本番と言うのがいけない。

レッスンも影山、本番も影山では、自分の成長などわかるはずもない。

まずは、レッスンの成果を見つめ直さなければならない……。

鮫島社長は庭に向かって、大きくうなずく。

そこで、携帯が鳴る。

画面を見ると、和田とある。

鮫島社長は一度咳払いして携帯をタップする。

「もしもし。」

「どう?暇してる?」

和田の声は相変わらず楽し気で、なぜか鮫島社長がムッとする。

「まさか。毎日忙しくて大変ですよ。」

「それはかわいそうに……。」

かわいそうと言う言葉にビクッとする。

「そ、そんなことありません。」

「たまにはさ、遊んだ方がいいんじゃない?零ちゃん。」

「れ、零ちゃん?」

「と言うことで、明後日、合コン設定してあるから。」

「ご、合コン?」

「そうだよ~。わざわざ零ちゃんの為に設定したんだから。」

「そんなこと頼んだ覚えは……。」

言い掛けて、鮫島社長は言葉を飲み込む。

これは、もしや、これで成果がわかるのでは?

「わ、わかりました。行きます。」

「そうこなくっちゃ。じゃ、詳しいことはまた連絡するね~。」

和田が電話を切るのと同時に、鮫島社長も携帯を耳から離す。

はぁと溜め息をつき、振り返ると、

大きな虫メガネを持った影山がじっと鮫島社長を見ている。

「うぇっ!」

びっくりした鮫島社長が身を引くと、顔から虫眼鏡を外した影山がスッと背筋を伸ばす。

「どんなお話でございましたか?」

「た、大した話じゃない。」

「その割には動揺しているご様子……。」

影山が、鮫島社長の腰に手を当て、ソファーに促す。

「そんなことはない!」

明らかに動揺する鮫島社長に、影山がにっこり笑い掛ける。

「まずはお茶で落ち着かれるのがよろしいかと……。」

恭(うやうや)しく礼をし、お茶の用意を始める影山に、

鮫島社長はドキドキして仕方ない。

いったいどこから聞かれていたのか。

まさか……。

鮫島社長が恐る恐る影山を見上げると、影山がニッと笑う。

これは……全部、聞かれていたのか?










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