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「Love so sweet」
Love so sweet(やま)【81~ 】

Love so sweet №89

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茫然とする。

想像だにしない自分の行動を目の当りにすると、

時に人は、思考を失う……。

今の俺だ。

ポロッと突いて出た言葉。

まさか、あんなことを言っているとは……。

あまりに日常的すぎて、言ったことすら忘れてる。

それが目の前で再生され、なおかつ、当の本人と一緒に見ることになろうとは……。

本人に向かって言うのとはわけが違う。

本人に向かって言う時は、そこに冗談やおふざけが入る。

しかし、他人に向かって言う時に冗談やおふざけはない。

ただただ、心がそう感じ、言葉として漏れ、ポロッと……。

案の定、茫然とする俺以上に、口を開けたまま動けない俺の隣の……。

「さ、智君?」

ハッとした智君がリモコンの巻き戻しボタンを押す。

再生されたのは、やはりあのシーン。

モニターを指さす俺の手が映り、続いてあのセリフ……。

「……森の妖精みたい……。」

前後の様子はよくわからない。

だが、台詞は、耳をすませばはっきり聞こえる。

……森の妖精……。

「ねぇ、翔君?」

「はい?」

「確認だけど……。」

「…………。」

「おいらを指さして、森の……妖精とか言わなかった?」

智君が本物の妖精みたいに小首を傾げる。

しょうがないじゃん。

そう思っちゃったんだから。

小さく細かくうなずくと、智君の低い声が響く。

「お前はばかか?」

智君の指がリモコンを押し、テレビ画面が止まる。

あ、怒ってる?

怒ってる?智君!

「バ、バカって、真実を述べたまでで~。」

ごまかすように笑ってみる。

「し、真実だと~?アラフォー男を捕まえて、森の、よ、よ、妖精が真実かぁ?」

いやいや、そうやってドモってる姿も森の妖精♪

「真実も真実!俺には妖精に見えたんだもんっ!」

クッションを抱え、智君の攻撃に備えるっ。

予想通り、智君のグーパンチが飛ぶ。

ドスッとクッションに埋まる智君の握りこぶし。

でも、その顔は、真っ赤になって口をギュッと結んでて……。

うう~っ。

可愛い~~~っ!!

「森の妖精さんはご機嫌斜め?」

ほら、また口を突いて出る。

そんな顔するから!

「ま、まだ言うか?」

智君の目が、キッと俺を睨む。

「翔君、わかってる?これが全国何万と言う家で流れるんだぞ!

 もうすぐ37になる男を、妖精だとか言うおバカな翔君が!」

俺は一向に構わないけど、文句があるなら編集したスタッフへ。

俺だって知らなかったんだから!

「わかってるよ~。いいじゃん。ほんとのことだし……。」

智君は赤い顔のまま、溜め息を零す。

「翔君はさぁ、キャスターもやってて、頭も良くて、言葉もいっぱい知ってて……。

 なのに、なんでそんなこと言っちゃうかなぁ。」

俺の語彙力、舐めてもらっちゃ困ります!

智君に対する形容詞なら、いくらでも!

「じゃ、森の狩人にする?」

智君の腕を取る。

「俺、迷子のバンビ。」

俺の首に掛け、腰に腕を回す。

抵抗せず、されるままの智君。

目だけ睨んでるけど。

「狩人さん、俺を捕まえてみて。」

智君がパチパチと目を瞬かせる。

「すぐ掴まる小鹿なんか狙うか。」

ちょっと口を尖らせて、視線だけソッポを向く。

この距離の俺の顔、大好きなの、知ってるよ?

「狙ってくれたから、今こうしてここにいるんでしょ?」

智君の腰を抱き、顔を近づける。

「自分からよってくるか?小鹿が。」

「寄って来ちゃったんだよね~。森の妖精だから……。」

智君の唇に唇を重ねる。

軽く開くその唇の間から、桃色の果実を奪い取る。

「んっ……。」

「妖精の蜜は美味しいのかなぁ?」

絡む舌先から、クチュクチュと音がする。

歯裏をなぞり、上顎をくすぐる。

「ぁんっ……。」

智君の弱いとこなんか、全部知ってる。

どれくらいの付き合いだと思ってるの?

その俺が言うんだから……。

首に回した智君の両腕が、俺の頭を包む。

俺の手は、腰からじわじわと下がって行く。

止めることなく送り込む唾液が、智君から声を奪う。

ゴクッと喉が鳴って、溢れる唾液が、口の端からツツーッと垂れる。

「はぁ……んっ…んんっ……。」

息苦しそうに喘ぐから、少し唇を離してあげる。

途端、大きく息を吸いこみ、俺の後頭部を掴んで、おでことおでこをくっつける。

「今日は……おいらが狩人なんだよね?」

ニヤッと笑った智君は、妖精というより、意地悪な悪魔のよう。

「……智君?」

ドキッとして、智君の腕を離そうとすると、強引に唇を塞がれる。

「おいらが本当に妖精かどうか……確認してみ。」

勢いよくソファーに押し倒され、その拍子にテレビ画面が再生される。

画面に映る俺の手。

俺の目に映る智君の指が、首筋から鎖骨を撫でる。

……森の妖精みたい……。

テレビから流れる俺の声。

そう。きっと誰もアラフォー男を妖精だなんて思わない。

当の智君ですら思ってない。

でも、俺は知ってる。

智君が本当の妖精だって。

もちろん……誰にも見せてあげないけどね?










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