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「大人の童話」
15th moon(やま)

15th moon ⑪

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三人に与えられた試練は、あっという間に人々に知れ渡ります。

「あの声だもんねぇ、それくらいの宝物貢がないと!」

「いやいや、あれは体(てい)よく断られたんだろ?」

「でも、探し回ってるらしいよ?」

「見つけたら、本当にあの声が……。」

みんなは想像します。

絶世の美女が、自分の腕の中で身もだえ、アノ声を上げる姿……。

ゴクッと唾を飲みます。

逆に、口の中がカラカラに乾く者もいます。

腰を曲げ、こそこそする者、手あたり次第に女を口説く者、

それはそれは千差万別です。

智と翔は、三人の土産の品で手ごろな家を建てました。

前の小さな家とは違い、今度の家は庭が広かった為、智の声はうっすらとしか聞こえません。

智の声が聞こえないので、集まる男達が減っていきます。

「金持ちになったら、声も聞かせないのか。」

「本当はわざと聞かせていたんじゃないの?」

智の声が聞こえなくなった腹いせに、男達は好き勝手なことを言います。

外のそんな状態を知る術もない智は、わずかではありますが、外に届く声を響かせます。

智のその声は、翔の成長と共に、さらに磨きがかかり、

透き通るような透明さに、得も言われぬ深みが増しています。

全部聞こえていれば、そのバリエーションの多様性に、

想像力をさらに高めてくれたことでしょう。

「あぁ……そんな…とこぉっ!」

「ダメ…ダ…メ……や…ぁ……もっ、もっとぉっ!」

「ぃやぁ……、見ちゃ……。」

「……突いてぇ、おく……奥、突いてぇ!」

「ぁあっ……いぃ……きも…ち……い……。」

三人に与えられた試練を聞いて、諦める者もいましたが、

それでも、微かな声を聞こうと、聴衆がいなくなることはありませんでした。

翔が止めることもありません。

手紙を送ってくる者もまだおりましたが、三人のような熱心な求婚者はいませんでした。



数日が経ち、右大臣安倍和也が智の家にやってきました。

「姫!火鼠の裘(かわごろも)、見つけました!!

 姫は私のものです!」

急いで翔を着替えさせます。

「突然おいでになるなんてひどい人だと姫が言っておられます。」

智はそう言いながら、和也を玄関で待たせます。

「ああ、早く姫にこれを……!」

翔が素早く用意を整えると、扇子で顔を隠し、和也の前に現れます。

和也の差し出す裘を見て、翔の眉間に皺がよります。

智の眉も下がります。

「これをどこで?」

智が聞くと、和也は得意満面に答えます。

「唐の商人から譲り受けました。

 いやぁ、大変でした。さすがのお宝!そう簡単には見つかりませんな?」

和也の高笑いが響きます。

翔は扇子の影から智に耳打ちします。

「燃やしてみて。」

「え?いいの?」

「きっと偽物だよ。」

「偽物?」

「そんなもの、あるわけないじゃん。」

翔がにっこり笑います。

そこで、智は台所から火を取って来ると、和也の前でその火に裘を翳します。

「ま、待ってください!せっかく見つけてきたものを燃やしてしまうのですか!?

 見つけるのが、どれほど大変だったか!」

「本物なら燃えることはありません。それとも、この裘は燃えてしまうと?」

智が怪訝そうに和也を見ます。

和也はしぶしぶ諦め、智の手の中の裘を見つめます。

智の手から放たれた裘が火の中へ落ちて行きます。

一瞬隠された火が、あっという間に裘に移って行きます。

「あ、あぁ……裘が……。」

燃えていく裘を見て、和也は肩を落として帰って行きました。

すぐに雅紀皇子もやってきました。

「これが蓬莱の珠の枝でございます。」

雅紀が差し出したのは、金銀に光る、見事な物でした。

真珠の実が白く大きな光を放っています。

「これで姫は私のものでございます。」

智と翔は顔を見合わせ言葉を無くします。

まさか、こんなものがこの世にあるなど、思いもしなかったのです。

すると、智の家の戸を叩く者があります。

行ってみますと、職人風の男が、雅紀に会いたいとせがみます。

「どうしたの~?」

智が気さくに聞くと、職人風の男も気さくに答えます。

「いやぁね、うちの母ちゃんが、あれだけじゃ、報酬として足りないって怒るんだよ。

 俺は十分じゃねぇかって言ったんだけどね?」

「報酬?何の報酬~?」

智がにっこり笑って聞きます。

「ああ、後で見せてもらえや。いいできだぞ。枝に真珠を付けるのが難しくってな。」

職人の声は雅紀と翔のいる部屋まで届くほど、大きな声でした。

最後に残った大納言大伴潤はなかなかやってきません。

どうしているのか心配になった智が、村の者に聞いてみますと、

龍の首の珠を探す為、潤の乗った船が遭難したと噂になっていると言うのです。

自分達の為に潤が遭難したと聞いて、智は走って家に戻ります。

「どうしたの?息せき切って。」

翔が優しく智を抱きしめます。

「大納言様が遭難されたって……。」

智が悲しそうにそう言うと、翔はにっこり笑います。

「大丈夫。きっと漂流した先の島で楽しくやってるよ。」

「楽しく?」

「そうそう、理想の女と二人っきりになったりして。」

翔が智の髪を撫でます。

「本当~?」

疑い深そうに翔の顔を見上げます。

「ほんと、ほんと。」

「本当にそうならいいけど……。」

智が心配そうに眉を八の字にすると、翔は智の首筋に手を這わせます。

「大丈夫……。智が心配することじゃない……。」

智の唇に唇を重ね、智の腰を抱きます。

「あ……ん……。」

智はすっかり抵抗しなくなりました。

いつでも翔を受け入れます。

何回でも、どんな体位でも……。

ですから、一日中、智のいい声が響き渡ります。

でも、一番驚くのは、翔の精力が天井知らずだと言うことです。










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